収益事業の定義
公益法人の非課税制度を理解するうえで、まずは「収益事業」の定義を確認しておく必要があります。
法人税法第2条第13号では、収益事業を次のように定めています。
「収益事業 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。」
この規定を受けて、具体的にどのような事業が収益事業に当たるかは、法人税法施行令第5条第1項に列挙された34種類の業種(物品販売業、飲食店業、旅館業、出版業など)で定められています。通常の法人であれば、これらの事業による所得は法人税の課税対象となります。
公益目的事業にあたる場合の特例
公益社団法人や公益財団法人の場合には、ここに特例があります。法人税法施行令第5条第2項により、34業種に当たる事業であっても、公益認定法第2条第4号に定める「公益目的事業」に該当する場合には、収益事業に含めないとされています。
このため、公益法人が行う活動のうち公益目的事業に当たる部分は、法人税法第6条に基づき法人税の課税対象外となります。
非課税となる事業の例
公益目的事業として認められれば、従来は収益事業にあたる活動も非課税の対象となります。例として以下が挙げられます。
- 教育関連:研修や資格試験の実施(従来は私塾業や技術サービス業に分類)
- 医療・福祉関連:介護サービスや障害者支援(従来は医療保健業や福祉事業に分類)
- 文化・芸術関連:博物館・美術館の運営、公演の開催(従来は興行業に分類)
- 学術研究関連:学術研究や技術開発(従来は技術サービス業に分類)
- 情報提供関連:出版事業や情報発信、宿泊研修施設の運営(従来は出版業や旅館業に分類)
こうした仕組みにより、公益法人は事業活動から得られた資金をそのまま公益活動に使うことができます。
公益目的事業の認定
公益目的事業とは、公益認定法第2条第4号に基づき、別表に掲げられた23分野に属し、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」事業を指します。
認定は、第3条により内閣総理大臣または都道府県知事が行い、審査過程では公益認定等委員会(第32条以下)や都道府県の合議制機関(第50条以下)が関与します。税務上の課税判断は法人税法に基づき別途行われますが、公益法人が「公益目的事業」として認定されることは、税制上の取扱いに直結する重要な前提となります。
制度改正との関係
2025年4月の法改正では、公益法人の収益事業に対する「非課税の仕組み」自体に変更はありません。ただし、公益法人がより安定的に運営できるよう、財務管理に関する制度が見直されました。
- 中期的収支均衡(第14条):単年度ごとではなく、5年間を通じて収支の均衡を判断
- 使途不特定財産(第16条):旧「遊休財産」を見直し、災害時などに備える予備財産は制限から除外
- 公益充実資金:将来の公益活動のための新しい積立制度を創設
これらの改正により、公益法人は非課税の仕組みを活かしながら、より柔軟に財務運営を行えるようになりました。
まとめ
公益法人にとって最大の特徴は、収益事業に分類される活動であっても、公益目的事業に該当する部分は法人税が課されないという点です。この特例によって、公益法人は活動資金を効率的に公益のために活用できる仕組みが整っています。
2025年改正による財務規律の見直しも加わり、公益法人は非課税制度を基盤に、持続的かつ計画的に公益活動を展開できるようになっています。
監修者Profile

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桑波田直人(くわはた・なおと)
(株)全国非営利法人協会専務取締役・(一財)全国公益支援財団専務理事。 『公益・一般法人』創刊編集長等を経て現職。公益社団法人非営利法人研究学会では常任理事・事務局長として公益認定取得に従事。編著に『非営利用語辞典』、他担当編集書籍多数。





