一般財団法人を設立・運営するにあたり、機関設計の根幹となるのが「理事会」の存在です。一般社団法人では理事会の設置が任意であるのに対し、一般財団法人においては法律上、理事会を必ず置かなければなりません。
社員のいない財団法人で、理事会の判断や暴走を誰がどう抑えるのか。一般財団法人の理事会は、この問いに制度として答えるため、一般社団法人にはない厳格な仕組みの中に置かれています。
一般財団法人における理事会の位置付け
一般財団法人は、個人や企業から拠出された「財産」に法人格が与えられた組織です。そのため、人の集まりである一般社団法人のような「社員」や「社員総会」が存在しません。
この所有者にあたる社員が存在しないという財団法人特有の性質から、一般財団法人では、業務執行を担う理事会を監視・監督する仕組みとして評議員および評議員会の設置が義務付けられています。根拠となるのは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)第170条第1項です。
必置機関としての理事会
一般法人法第170条第1項は、一般財団法人に「評議員、評議員会、理事、理事会及び監事」を置かなければならないと定めています。
つまり、一般財団法人においては、理事会は選択の余地のない「必置機関」です。理事会を設置しないという機関設計は認められません。
執行と監督の分離
一般財団法人では、財産の私物化を防ぎ、適正なガバナンスを維持するために「執行と監督の分離」が厳格に図られています。
- 評議員会は、理事や監事の選任・解任や定款変更といった基本的事項を決定する監督・意思決定機関です
- 理事会は、評議員会から委任された範囲で具体的な業務執行を決定する執行機関です
一つの比喩で考えてみたいと思います。
創業者が遺したレシピで続く老舗の料理店を思い浮かべてください。その日の仕入れ、仕込み、献立をどうするかは、厨房を預かる料理長とスタッフが決めます。誰をどの持ち場に付けるかも厨房の裁量です。これが理事会にあたります。
一方、そのレシピを書き換えてよいか、そして誰を料理長に据えるかを決めるのは、厨房の外にいる人たちです。彼らは味付けの一つひとつに口を出しません。しかし創業者の味から外れたと判断すれば、料理長を替えることができる。これが評議員会です。
評議員会は日常を見張る上司ではありません。決議できる事項は法律と定款が定めたものに限られており(一般法人法第178条第2項)、日々の業務執行の監督はあくまで理事会の職務です。それでも理事を選び、解任し、定款を変える権限を握っているからこそ、理事会は設立者の意思から逸れられない。厨房に入らないからこそ効く牽制と言えます。
この牽制機能を実効性あるものにするため、評議員が理事や監事、法人の使用人を兼ねることは法律上禁止されています(一般法人法第173条第2項)。
理事会の権限と一般社団法人規定の準用
一般財団法人の理事会が持つ権限や運営ルールは、基本的には一般社団法人の理事会に関する規定がそのまま準用されます。
理事会の3大権限
一般法人法第197条において、一般社団法人の理事会権限を定めた第90条の規定が一般財団法人にも準用されます。これにより、一般財団法人の理事会は次の3つの職務を行います(一般法人法第197条、第90条第2項)。
- 業務執行の決定
- 理事の職務の執行の監督
- 代表理事の選定及び解職
理事会はすべての理事で組織され(一般法人法第90条第1項)、理事の中から代表理事を選定しなければなりません(一般法人法第90条第3項)。
理事会から理事への委任禁止事項
理事会は、法人の重要な意思決定機関であるため、すべての業務決定を個々の理事に丸投げすることはできません。次に掲げる重要な事項については、理事会自身が決議する必要があり、理事への委任が禁止されています(一般法人法第90条第4項)。
- 重要な財産の処分および譲受け
- 多額の借財
- 重要な使用人の選任および解任
- 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更および廃止
- 業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)の整備
一般社団法人と一般財団法人の理事会の違い
同じ「一般法人」であっても、社団と財団では理事会の設置義務や必要人員、ガバナンスの構造において大きな違いがあります。
1. 設置が任意か必須か
一般社団法人の場合、理事会を置くかどうかは任意です。理事会を置かない「理事会非設置法人」を選択すれば、理事は1名だけでも法人を設立・運営できます。
一方、一般財団法人の場合は前述の通り理事会が必置機関であるため、理事会を置かないという選択肢はありません。
2. 必要となる最低人員の差
理事会を設置する場合、法律上、理事は「3名以上」必要となります。また、監事も「1名以上」置かなければなりません。
一般財団法人では、これに加えて「評議員3名以上」が必須となるため、最低でも以下の7名の人材を確保する必要があります。
- 評議員:3名以上
- 理事:3名以上(理事会を構成)
- 監事:1名以上
一般社団法人であれば、社員2名と理事1名の計3名(理事会非設置の場合)でスタートできるのに対し、一般財団法人は設立時に確保すべき人員が多く、その負担は大きいと言えます。
| 項目 | 一般社団法人(理事会非設置) | 一般社団法人(理事会設置) | 一般財団法人(理事会必置) |
|---|---|---|---|
| 理事の人数 | 1名以上 | 3名以上 | 3名以上 |
| 監事の人数 | 任意(置かなくても可) | 1名以上 | 1名以上 |
| 評議員の人数 | なし | なし | 3名以上 |
| 最低必要人数 | 2名(社員2名、うち1名が理事兼任) | 4名(社員2名、理事3名、監事1名 ※兼任考慮) | 7名(評議員3名、理事3名、監事1名 ※兼任不可) |
3. 財産維持の義務と解散リスク
一般財団法人の設立には、300万円以上の財産の拠出が必要です(一般法人法第153条第2項)。さらに、運営開始後も純資産額が2期連続で300万円未満となった場合には、法人は法律上当然に解散することになります(一般法人法第202条第2項)。一般社団法人にはこのような純資産維持義務による解散規定はありません。
理事会の招集・決議と実務運営のルール
一般財団法人の理事会の招集手続き・決議要件・議事録は、いずれも一般社団法人の規定が準用されます(一般法人法第197条)。押さえるべき要点は次のとおりです。
- 招集通知は原則として理事会の日の1週間前までに各理事・各監事へ発しますが、定款で短縮でき、理事・監事全員の同意があれば招集手続き自体を省略できます(第197条で準用する第94条)
- 決議は議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数の賛成で成立します。自己取引・利益相反取引や自身の選任・解職など特別の利害関係を持つ理事は議決に加われず、定足数の計算からも除かれます(同じく準用する第95条)
- 議事録を作成し、出席した理事・監事が署名または記名押印のうえ、理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます(同じく準用する第97条)
招集権者の定め方、議事録の必須記載事項や閲覧請求の制限、後述するみなし決議(書面決議)の要件といった手続きの詳細は、これらの規定を本則とする一般社団法人の理事会運営|招集手続・決議要件・議事録の実務で解説しています。財団でも準用により同じ取扱いとなります。
実務運営における3つの留意点
日々の法人運営において、理事会の開催負担を軽減しつつ、適法に運営するための実務ポイントを解説します。
1. オンライン理事会(テレビ会議・電話会議)の活用
遠方に理事が点在している場合など、一堂に会することが難しいときは、ZoomやTeamsなどのオンライン会議システムを利用した理事会の開催が認められています。
ただし、単にメールやチャットで意見を交わすだけでは認められません。各理事の音声や映像が即時に他の出席者に伝わり、一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明や相互の議論ができる環境(双方向性と即時性)が確保されている必要があります。
オンラインで開催した場合、理事会議事録には「主たる開催場所(ホストが所在する物理的場所など)」および「オンライン会議システムを利用して開催した旨」を明記しておきます。
2. 理事会決議の省略(みなし決議)
理事が提案した事項について、理事全員が書面または電磁的記録(メール等)により同意の意思表示をした場合、理事会の決議があったものとみなすことができます(一般法人法第197条で準用する第96条)。
ただし、みなし決議には、定款に決議の省略を認める規定があることが前提で、定めがなければ行えないため、現行定款の記載を事前に確認してください。加えて、議決に加わることができる理事全員の同意と、監事が異議を述べないことが必要です。特別利害関係のある理事は、この同意手続きの分母から除外されます。
3. 決算期における評議員会とのタイムライン
一般財団法人では、毎事業年度の終了後に計算書類(決算書)および事業報告を作成し、以下のプロセスを経て確定させます。
- 監事による監査
- 理事会による承認(評議員会への提出・招集の決定)
- 主たる事務所への備置き(定時評議員会開催日の2週間前から14日間)
- 定時評議員会での承認または報告
理事会で承認した計算書類等は、定時評議員会開催日の2週間前(中14日間)から主たる事務所に備え置く必要があり、理事会はこの起点として、監事監査の完了と備置き開始日から逆算して開催日を組みます。中14日間の数え方や、決算承認を書面決議(みなし決議)で行う場合の実務など、評議員会側のタイムラインは一般財団法人の評議員会の運営|評議員の選任・決議要件・議事録の実務で詳しく解説しています。
万が一、スケジュールがタイトになり実務が回らないなどの課題が生じた場合は、手続きの進め方について全国公益法人協会にご相談ください。
まとめ
一般財団法人における理事会は、法人の業務執行を決定する必置機関です。
社員が存在しない財団法人だからこそ、評議員会との厳格な権限分配や相互牽制が求められ、評議員3名以上(一般法人法第173条第1項)・理事3名以上・監事1名以上という体制の維持など、一般社団法人に比べて手厚いガバナンス体制が法律上予定されています(一般法人法第170条第1項)。
適法かつ円滑な法人運営を維持するためにも、招集期間の特例やみなし決議の活用など、定款規定と実務フローを今一度整理し、計画的な理事会運営を心がけましょう。