一般財団法人の評議員会の運営|評議員の選任・決議要件・議事録の実務

一般財団法人の評議員会の運営|評議員の選任・決議要件・議事録の実務

一般財団法人の評議員会は、理事・監事の選任や計算書類の承認、定款変更といった法人の重要事項を決定する極めて重要な機関です。その適正な運営には、評議員の選任から招集、決議、議事録作成に至るまで、法令に準拠した厳格な実務対応が求められます。

所有者なき法人を支えるガバナンスの要

一般社団法人には社員という法人の構成員が存在し、最高意思決定機関である社員総会を通じて法人の意思を決定します。これに対して、一般財団法人には構成員が存在しません。財団とは、一定の目的のために捧げられた財産の集まりそのものだからです。

所有者が存在しない一般財団法人において、理事・監事の選任や解任、計算書類の承認、定款変更などの重要事項を決議することを通じて、設立者の意図に沿った法人運営を確保するのが評議員会です。評議員会は、法律に規定する事項および定款で定めた事項に限って決議を行う機関であり(一般法人法第178条第2項)、一般財団法人にとって設置が義務付けられた必須の機関です(同法第170条)。なお、理事の職務執行の監督は理事会が、その監査は監事が担う役割であり、評議員会そのものが日常的な業務執行を監督する機関ではない点に注意が必要です。

いわば、株主のいない会社において、株主総会に代わって法人運営の基本的な意思決定を担う存在です。評議員会がその決議権限を適切に行使して初めて、一般財団法人の財産は目的どおりに適正に運用されることになります。

具体例:設立者亡き後も意思を守るノーベル財団

この仕組みをイメージしやすい例が、ノーベル賞を運営するノーベル財団です。発明家アルフレッド・ノーベルは、1896年に死去する際、遺言によって自らの遺産の大半を基金とし、その運用益をもって「人類に最大の貢献をもたらした人々」を毎年顕彰するよう定めました。この遺志を実現するために1900年に設立されたのがノーベル財団であり、1901年の第1回授与以降、ノーベル本人がこの世を去った後も、その意思は120年以上にわたって受け継がれています。

ここで問題となるのは、設立者がすでに存在せず、株主のような所有者もいない財産を、誰が設立者の意思どおりに管理し、運営者の暴走を防ぐのかという点です。設立者亡き後、もし運営者が財産を食いつぶしたり、当初の目的から外れた使い方をしたりすれば、その財産に託された意思は失われてしまいます。日本の一般財団法人において、まさにこの「所有者に代わって設立者の意思を守る」役割を担うのが評議員会です。評議員会が理事・監事の選解任、計算書類の承認、定款変更といった重要事項を握ることで、設立者亡き後も、その意図に反した財産の費消や目的外の運営を防ぎ、財団の目的を永続的に守るのです。

なお、ノーベル財団はスウェーデン法に基づく財団であり、その機関設計が日本の一般財団法人と同一というわけではありません。しかし、「所有者なき財産が、設立者の意思を永続的に実現していく」という財団の本質は、国を問わず共通しています。

評議員に求められる強い独立性と資格要件

評議員会が理事・監事の選任・解任などの権限を適正に行使し、理事会に対する実効的な牽制機能を果たすためには、評議員自身に強い独立性が求められます。そのため、法律上、厳格な兼任禁止と欠格事由のルールが設けられています。一方で、理事に課されるような親族等の3分の1制限が評議員にも及ぶと誤解されがちですが、後述のとおり評議員はこの制限の対象ではありません。

法律上の兼任禁止と欠格事由

まず、一般財団法人の評議員は3名以上でなければなりません(一般法人法第173条第3項)。

そして、評議員は、当該一般財団法人またはその子法人の理事、監事、使用人を兼ねることができないと定められています(一般法人法第173条第2項)。評議員会による選任・解任の対象となる理事や、監査を行う監事、法人の指示に従う使用人が評議員を兼ねることは、評議員会の客観性を著しく損なうため認められません。

また、一般法人法第173条において準用する第65条第1項に定める欠格事由(法人であること、一定の法律に違反して刑に処せられその執行を終えるまでの者など)に該当する者は、評議員になることができません。なお、成年被後見人や被保佐人であることは、それ自体が当然に欠格事由となるわけではなく、就任の承諾に関して別途の手続きが法律上定められています(一般法人法第65条の2)。

親族等の3分の1制限は評議員には及ばない

非営利型の一般財団法人(法人税法上、収益事業から生じた所得にのみ法人税が課され、会費や寄附金などそれ以外の所得には課税されない類型をいいます)では、各理事について、その理事と配偶者または3親等内の親族その他特別の関係がある理事の合計数が、理事総数の3分の1以下でなければならないという要件があります(法人税法施行令第3条)。ここで注意が必要なのは、この制限が対象とするのはあくまで「各理事」であり、評議員は対象ではないという点です。一般法人法第173条が評議員について定めているのも、前述の兼任禁止(第2項)・欠格事由(第1項)・3名以上(第3項)であって、親族等の構成に関する制限は置かれていません。したがって、評議員の親族関係を理由に選任が制限される、という法令上の一律のルールは存在しません。

もっとも、評議員会に期待される独立性・中立性の観点からは、特定の一族や一団体に偏った評議員構成が運営の適正性への疑義を招くことは避けられません。法令上の3分の1制限がないからといって構成を軽視してよいわけではなく、実務上はガバナンスの健全性の観点から評議員の構成にも配慮することが望ましいといえます。

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理事会による支配を防ぐ評議員の選任プロセス

評議員の独立性を担保するための最も重要な仕組みが、その選任方法です。

理事会による直接選任の禁止

一般財団法人において、理事または理事会が評議員を選任または解任する旨を定款で定めても、その定めは効力を有しません(一般法人法第153条第3項第1号)。評議員の選任および解任の方法は定款で定めるべき事項ですが(同法第153条第1項第8号)、その方法として理事・理事会による選任・解任を定めることだけは認められない、ということです。もし理事が、自分たちの選任・解任を左右する評議員を自由に選べるのであれば、評議員会による牽制機能は形骸化し、理事会の独走を許すことになってしまうからです。

このため、一般財団法人の定款には、理事または理事会以外の主体が評議員を選任・解任する旨を定める必要があります。裏を返せば、効力が否定されるのは理事・理事会による選任・解任だけであり、それ以外であれば選任・解任の主体は定款で比較的自由に設計できます。

評議員会の決議による選任という簡素な方法

理事・理事会以外であればよいため、法的にもっとも簡素なのは、評議員の選任・解任を評議員会自身の決議に委ねる方法です。既存の評議員が後任を選ぶことになるため互選とも呼ばれます。「評議員の選任及び解任は評議員会の決議による」と定款に定めれば足り、専用の機関や規程を別途整える必要がありません。特に、これから設立する一般財団法人では、手続きの簡便さからこの方式を採用するケースが多いといえます。

もっとも、現任の評議員が後任を選ぶ形となるため、構成が固定化して閉鎖的になりやすいという指摘もあります。人選の客観性・第三者性をより強く担保したい場合には、次に述べる評議員選定委員会を用いることになります。

評議員選定委員会の設置と運営

評議員会による互選よりも人選の客観性を高めたい場合に採られるのが、定款に評議員選定委員会という任意の機関を設け、この委員会に評議員の選任・解任権限を委ねる方法です。とりわけ公益財団法人では、評議員の選任が特定の団体や勢力に偏らないよう行政庁(内閣府・都道府県)が選任方法の公正性を求めており、その要請を満たしやすいことから、この方式が広く用いられています。

評議員選定委員会は、法人の意思決定から独立した客観的な人選を行うための仕組みです。委員会の構成メンバーは、例えば評議員1名、監事1名、事務局員1名、そして外部の有識者2名の計5名程度で組織するケースが見られます。

このとき、委員の過半数を外部委員(法人の理事、監事、評議員、使用人以外の者)とすることで、人選の公正性と客観性を高めることができます。

実務においては、あらかじめ評議員選定委員会設置及び運営規程を整備し、委員の選定方法、任期、招集手続き、決議要件などを明確に定めておくことが推奨されます。一般的な選定プロセスとしては、理事会が候補者を推薦し、評議員選定委員会がその適格性を審査して決議し、本人の就任承諾を得るという流れをとります。

評議員会の招集手続と期間計算の実務

評議員会を開催するためには、法令に定められた招集手続きを厳格に履行しなければなりません。招集手続きが法令に違反した場合、その決議は取消しの訴えの対象となり(一般法人法第266条第1項第1号)、瑕疵が特に重大なときは決議が不存在または無効と判断されることもあります(一般法人法第265条)。

招集通知の発送期限と中7日の計算

評議員会は原則として理事が招集しますが(一般法人法第179条第3項)、評議員が理事に招集を請求し、一定の場合には裁判所の許可を得て自ら招集することもできます(同法第180条)。評議員会を招集する者は、評議員会の日の1週間前までに評議員に対して通知を発しなければなりません(同法第182条第1項)。この通知は書面で行うのが原則ですが、通知を受ける評議員の承諾を得た場合には、電磁的方法によって発することもできます(同条第2項)。なお、定款で1週間を下回る期間を定めている場合は、その期間に短縮することができます。

この1週間前という期間の計算においては、いわゆる中7日(なかなのか)を確保する必要がある点に注意が必要です。発送日と開催日当日を期間に算入しないため、例えば5月15日に評議員会を開催する場合、招集通知は5月7日までに発送しなければなりません。

招集手続の省略(全員の同意)

急を要する事態が発生した場合など、招集期間を十分に確保できないときには、招集手続きを省略することができます。

評議員の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ずに評議員会を開催することができます(一般法人法第183条)。実務上は、後日の証拠とするために全員の同意を書面等で記録しておくことが望ましいものの、同意書の作成・回収そのものが法律上の要件とされているわけではありません。なお、これは集まって会議を開くこと自体への同意であり、決議を省略すること(みなし決議)とは異なる点に留意してください。

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評議員会の決議要件と特別利害関係

評議員会における議案の決議には、普通決議と特別決議の2種類があります。

普通決議と特別決議の要件

普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数をもって行います(一般法人法第189条第1項)。定款によって、この定足数や決議要件を上回る割合を定めることはできますが、下回る割合を定めることはできません。

特別決議は、監事の解任、定款の変更、事業の全部の譲渡、解散、合併など、法人の組織や運営の根本に関わる重要事項を決議する場合に適用されます(一般法人法第189条第2項各号)。評議員会による役員の解任のうち特別決議が必要とされるのは監事の解任であり、理事の解任は当然に特別決議事項とされているわけではありません。これらの特別決議を可決するには、議決に加わることのできる評議員の3分の2以上の賛成を得なければなりません(一般法人法第189条第2項)。こちらも定款によって3分の2を上回る割合に加重することはできますが、下回る割合を定めることは認められません。

特別利害関係人の除外

決議において特定の議案に特別の利害関係を有する評議員は、その議案の議決に加わることができません(一般法人法第189条第3項)。

例えば、特定の評議員を解任する議案や、特定の評議員に対する損害賠償責任の免除に関する議案などがこれに該当します。特別利害関係を有する評議員は、定足数の計算の基礎となる評議員の数からも除外されます。

書面決議(みなし決議)の活用と実務上のメリット

評議員が実際に一堂に会することなく、書面または電磁的記録のやり取りによって決議を成立させる方法を決議の省略(みなし決議)と呼びます(一般法人法第194条第1項)。

みなし決議の成立要件

理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合において、その提案について、議決に加わることができる評議員の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する評議員会の決議があったものとみなされます。

1名でも反対する評議員がいる場合や、回答を保留する評議員がいる場合は、みなし決議は成立しません。全員の同意が絶対条件となります。

決算承認で書面決議を使う利点と留意点

定時評議員会での決算承認は、みなし決議(書面決議)で行うことができ、実務でもよく用いられます。

その利点を「決算が早く確定すること」だと捉えると、事務局の実感とはずれます。決算が数日早く固まること自体に大きな意味はありません。実務で効いてくるのは、評議員が一堂に会する会議を開かずに承認を得られる点です。評議員の日程を擦り合わせ、会場を用意し、当日の議事を運営するという一連の手間が不要になり、評議員が遠隔地にいても決算を確定できます。

日程面での作用もあります。理事会で承認された計算書類等は、原則として定時評議員会の日の2週間前の日から主たる事務所に備え置かなければなりません(一般法人法第199条において準用する第129条第1項)。この2週間は決算理事会より後に始める必要があるため、対面開催では決算理事会から評議員会まで2週間以上空きます。みなし決議による場合は、備置きの起算日が「提案があった日」に前倒しされ(同項の「第58条第1項」は財団では第194条第1項と読み替えます)、評議員全員の同意が揃った時点で決議が成立します。監査の終了が遅れて決算日程がタイトになったときに、法人税の申告期限などに間に合わせる余地が生まれるのは、この仕組みによるものです。

もっとも、みなし決議は評議員全員の書面または電磁的記録による同意が絶対条件です。1名でも同意が得られなければ成立せず、改めて評議員会を招集し直すことになります。郵送で同意書をやり取りする場合は提案書と同意書の往復に数日を要するため、日程を詰める効果は限定的です。電子メールなどの電磁的方法で同意を得られれば、この往復は大きく短縮できます。

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評議員会議事録の作成と備置き・登記実務の注意点

評議員会を開催した、あるいはみなし決議が成立した後は、速やかに議事録を作成し、適切に保管しなければなりません。

議事録の作成と10年間の備置き義務

評議員会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければなりません(一般法人法第193条第1項)。

作成した議事録は、評議員会の日(みなし決議の場合は決議があったとみなされた日)から10年間、主たる事務所に備え置く義務があります(一般法人法第193条第2項)。また、従たる事務所がある場合には、原則として議事録の写しを評議員会の日から5年間、その従たる事務所にも備え置かなければなりません(一般法人法第193条第3項)。なお、みなし決議による場合は、評議員全員の同意の意思表示に係る書面または電磁的記録を、決議があったものとみなされた日から10年間、主たる事務所に備え置く義務が別途定められています(一般法人法第194条第2項)。

記名押印に関する法令と定款の規定

一般財団法人の理事会議事録については、原則として出席した理事・監事が署名または記名押印しなければならず(一般法人法第197条において準用する第95条第3項)、定款で、出席した代表理事が署名または記名押印する旨を定めることもできます。ただし、その場合でも、出席した監事がいるときは、その監事の署名または記名押印まで不要となるわけではありません。これに対し、一般財団法人の評議員会議事録については、法令上、出席した評議員や理事の署名または記名押印の義務は定められていません。この点は一般社団法人の社員総会議事録も同様であり、法令上は署名・記名押印が義務付けられているわけではありません。

しかし、実務上は、議事録の改ざん防止や証跡としての信頼性を担保するため、定款で記名押印すべき者をあらかじめ定めておくのが通例です。もっとも、その定め方は一様ではありません。内閣府が公表している公益法人向けの定款例(公益認定のための定款の例)は、評議員会議事録について「出席した評議員及び理事」が記名押印すると定めています。他方、「議長および出席した評議員のうちから選出された議事録署名人2名」が記名押印すると定める法人もあります。一般財団法人向けの公式なひな形はないものの、この定款例を参照して定める法人も多く、記名押印者の定め方には複数のパターンがあると理解しておくべきです。いずれにせよ、自法人の定款に定めがある場合は、その規定に従って記名押印を完了させる必要があります。

定款に記名押印に関する定めがない場合であっても、議事録の作成責任者(議事録作成者)が記名押印を行うのが一般的な実務です。

登記における評議員会議事録の扱い

評議員が理事を選任したときは、その評議員会議事録を理事の変更登記の添付書面として法務局に提出します。ここで誤解されがちなのが印鑑証明書の扱いです。代表理事の変更登記で市区町村長発行の印鑑証明書が必要になるのは、代表理事を選定した理事会議事録に押印した出席理事・監事の印鑑についてであり(変更前の代表理事が登記所への届出印を押した場合を除く。商業登記規則第61条、一般社団法人等登記規則第3条)、評議員会議事録に出席評議員の印鑑証明書までが求められるわけではありません。なお、この理事会議事録側の負担は、定款で記名押印すべき者を「出席した代表理事」と定めることで軽減できます(一般法人法第197条において準用する第95条第3項)。

確実なガバナンス運営のために

一般財団法人の評議員会は、所有者のない財団において、その目的を永続的に守り抜くための生命線です。評議員の選任プロセスの透明性を確保し、招集から決議、議事録作成に至る一連の実務を法令に則って厳格に遂行することは、法人の社会的信用を維持するために欠かせません。

評議員会の運営や、評議員選定委員会の規程設計など、実務において判断に迷うことや、自法人の状況に合わせた最適な設計を行いたい場合は、全国公益法人協会にご相談ください。豊富な支援実績に基づき、貴法人の円滑な法人運営をトータルでサポートいたします。

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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