一般社団法人の役員の欠格事由|理事・監事になれない人と実務上の確認ポイント

一般社団法人の役員の欠格事由|理事・監事になれない人と実務上の確認ポイント

一般社団法人を安定して運営していくためには、法人の意思決定や業務執行を担う役員(理事・監事)の選任が重要なプロセスとなります。しかし、どれほど優秀で信頼できる候補者であっても、法律が定める「欠格事由」に該当する人物は役員に就任することができません。万一、欠格事由に該当する人物を選任してしまった場合、その選任決議の効力や登記手続きにおいて重大な支障をきたすことになります。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、一般法人法)が定める欠格事由の具体的な基準と、法改正に伴う実務上の変更点、そして選任時に法人の事務局が確認すべきポイントを整理します。


法律が定める役員の欠格事由(一般法人法第65条)

一般社団法人の理事および監事(役員)の資格については、一般法人法第65条第1項において「次に掲げる者は、役員となることができない」として、絶対的な欠格事由が明確に定められています。候補者がこれらに1つでも該当する場合、社員総会で選任決議を行っても就任することはできません。

役員の欠格事由の全体像

1. 法人(一般法人法第65条第1項第1号)

一般社団法人の役員は、自然人(個人)でなければなりません。株式会社や他の一般社団法人、NPO法人などの「法人」そのものが理事や監事に就任することは禁止されています。法人が役員を出す場合は、その法人の代表者や従業員などの個人を候補者として選任する必要があります。

2. 特定の法律違反による刑罰(一般法人法第65条第1項第3号)

一般法人法もしくは会社法の規定に違反して刑に処せられた者は、役員になることができません。また、民事再生法・会社更生法・破産法などの倒産関連法については、あらゆる違反が対象となるのではなく、詐欺再生罪(民事再生法第255条)や詐欺破産罪(破産法第265条)など、各法律に列挙された特定の罪を犯して刑に処せられた場合に限り欠格事由に該当します。いずれの場合も、この制限は刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過するまで適用されます。

3. その他の法令違反による拘禁刑以上の刑(一般法人法第65条第1項第4号)

上記以外のすべての法令(刑法や道路交通法などを含む)に違反し、拘禁刑以上の刑に処せられた者も欠格事由に該当します。この制限は、刑の執行を終えるまで、または執行を受けることがなくなるまでの間継続します。ただし、刑の執行猶予中の者については、この欠格事由から除外されているため、執行猶予期間中であっても役員に就任することは法律上可能です。


令和3年施行の改正と成年被後見人等の就任手続き

かつては、成年被後見人および被保佐人を一律に役員から排除する規定が存在していましたが、人権配慮やノーマライゼーションの観点から法改正が行われました。

欠格条項の削除と新設された就任手続き

令和元年に成立した改正法(2021年〈令和3年〉3月1日施行)により、一般法人法第65条第1項第2号に掲げられていた「成年被後見人又は被保佐人」を役員から一律に排除する規定が削除されました。これに伴い、成年被後見人や被保佐人であっても、適切な手続きを経ることで理事や監事に就任できるよう、一般法人法第65条の2が新設されました。

実務上求められる同意と代理プロセス

成年被後見人または被保佐人が役員に就任する際は、以下の手続きを経る必要があります(一般法人法第65条の2)。

  • 成年被後見人の場合:成年後見人が、成年被後見人本人の同意(後見監督人がある場合は、本人および後見監督人の同意)を得た上で、本人に代わって就任の承諾を行います(一般法人法第65条の2第1項)。
  • 被保佐人の場合:保佐人の同意を得た上で、本人が就任の承諾を行います(一般法人法第65条の2第2項)。

就任中の役員が「後見開始の審判」を受けた場合

一般社団法人と役員との関係は、委任に関する規定に従います(一般法人法第64条)。そのため、役員として現に在任している人物が就任後に「後見開始の審判」を受けた場合、これは委任の終了事由に当たり(民法第653条第3号)、その役員はいったん退任することになります。

ただし、これは欠格事由に該当して二度と就任できなくなった、という意味ではありません。退任後、改めて上記の一般法人法第65条の2第1項に基づく適切な就任手続き(成年後見人による代理承諾など)を経ることで、同じ人物を再選して役員に復帰させることは法律上可能です。


監事の兼任禁止と「子法人」の範囲

役員の選任にあたっては、個人の欠格事由だけでなく、組織の健全性を保つための「兼任禁止」のルールにも注意を払う必要があります。

監事の兼任禁止の構造

監事の兼任禁止(一般法人法第65条第2項)

監事は、法人の業務執行や会計を監査する独立した立場です。そのため、一般法人法第65条第2項により、監事は、その一般社団法人またはその子法人の理事や使用人を兼ねることができないと定められています。

自分で業務を執行しながら、それを自分で監査するという「自己監査」を防ぎ、監査の客観性と独立性を担保するための厳格なルールです。

「子法人」の具体的な定義

ここでいう「子法人」とは、一般社団法人がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものを指します(一般法人法第2条第4号)。具体的には、一般社団法人が、社員総会その他の団体の財務および事業の方針を決定する機関における議決権の100分の50を超える議決権を有する他の法人などがこれに当たります(一般法人法施行規則第3条)。

グループ法人を形成している場合、子法人の職員や理事が、親法人の監事に就任してしまう「うっかり違反」が実務上発生しやすいため、選任時には候補者の現在の役職や勤務先を慎重に確認する必要があります。


一般財団法人の理事・監事にも同じ欠格事由が適用される

ここまでは一般社団法人を前提に整理してきましたが、一般財団法人の理事・監事についても、欠格事由の内容は一般社団法人とまったく同じです。

一般社団法人と一般財団法人の欠格事由・兼任制限の違い

第65条は一般財団法人にも準用される

一般法人法第177条により、役員の欠格事由を定めた第65条および成年被後見人等の就任手続きを定めた第65条の2は、一般財団法人にも準用されます。したがって、法人であること、一般法人法や会社法などに違反して刑に処せられ2年を経過しないこと、その他の法令に違反して拘禁刑以上の刑の執行が終わっていないこと、という第65条第1項の基準は、一般財団法人の理事・監事にもそのまま当てはまります。監事が当該法人またはその子法人の理事・使用人を兼ねることができないという兼任禁止(一般法人法第65条第2項)についても同様です。

なお、在任中の理事や監事に欠格事由が発生した場合(有罪判決の確定など)は、その時点で役員としての資格を喪失します。この場合の変更登記では、退任を証する書面として有罪の判決書の正本または謄本(確定証明書付き)を添付することになります。

評議員には役員より広い兼任制限がある

一方、一般財団法人に特有の機関である評議員については、上記の欠格事由が準用される(一般法人法第173条第1項)ことに加えて、その一般財団法人またはその子法人の理事・監事・使用人を兼ねることができないという、役員よりも広い兼任制限が課されています(一般法人法第173条第2項)。評議員は理事・監事を選任・解任する立場にあるため、監督する側と監督される側が混同することを防ぐ趣旨です。評議員の資格要件や選任方法の詳細は、一般財団法人の評議員会の運営|評議員の選任・決議要件・議事録の実務で解説しています。


定款による独自の資格制限は可能か

法律が定める絶対的な欠格事由のほかに、法人が定款によって独自に役員の資格を制限することは原則として有効とされています。

定款による役員の資格制限と定年制の設計

「理事は正会員に限る」とする規定の有効性とリスク

定款に「理事は、正会員の中から選任する」といった資格制限を設けることは、一般社団法人の自治の範囲内として認められています。

しかし、この運用にはガバナンス上のリスクも伴います。役員を会員に限定してしまうと、外部の専門的な知見を持つ人材(税理士や公認会計士、学識経験者など)を理事に招き入れることが難しくなり、組織の視野が狭まる懸念が生じます。

役員の定年制(年齢制限)の導入

役員の高齢化や在任期間の長期化を防ぐ目的で、定款に「役員の選任時における年齢は満70歳までとする」といった定年制を導入することも可能です。

定年制を新たに導入する際は、既存の高齢役員が急に退任せざるを得なくなる混乱を避けるため、定款の変更決議を行うと同時に、附則において「施行日時点で在任中の役員については、その任期満了まで適用しない」といった経過措置を設ける実務が一般的です。


役員選任時の実務上の確認手順と対応策

法人の事務局が役員の選任手続きを適正に進めるためには、単に候補者の承諾を得るだけでなく、客観的な確認プロセスを構築しておく必要があります。

役員選任時の実務フロー

1. 社員総会での選任決議(一般法人法第63条)

役員は、社員総会の決議によって選任します(一般法人法第63条第1項)。決議の方法について法令上の特別な定めはありませんが、登記実務上は「理事○名選任の件」が議題であり、「○○を理事に選任すること」が候補者ごとの議案であると解されています。つまり、候補者が複数いれば、議案も候補者の数だけ存在することになります。

実務では複数の候補者をまとめて諮る「一括決議」も行われていますが、この方法では候補者ごとに決議要件(出席社員の議決権の過半数)を満たしたかどうかが記録上判別できません。特定の候補者にのみ異議を持つ社員の意思も反映されにくくなります。議案は候補者ごとに賛否を諮ったうえで、議事録にも「候補者ごとに個別に賛否を議場に諮ったところ、それぞれ出席社員の議決権の過半数の賛成により承認可決した」といった形で、誰をどの決議で選任したのかを明確に記載しておくことが望ましいでしょう。選任決議の後に必要となる役員変更登記の手続き(重任・必要書類・2週間以内の登記期限)は、一般社団法人の役員変更登記|理事・監事の任期、重任、必要書類を整理で詳しく解説しています。

2. 誓約書(確認書)の徴求

法人が役員候補者の欠格事由非該当を直接調査して証明することは困難です。そのため、選任前または就任時に、候補者本人から「一般法人法第65条第1項に定める欠格事由に該当しないこと」および「反社会的勢力に該当しないこと」を表明・保証する誓約書(確認書)を提出してもらう実務が一般的です。

この誓約書などの確認資料について、法令上の保存義務や保存期間の定めはありません。もっとも、選任決議を記録した社員総会議事録には社員総会の日から10年間主たる事務所に備え置く義務があるため(一般法人法第57条第2項)、誓約書も議事録とあわせて長期間保存しておく運用が望ましいでしょう。また、再任(重任)の場合であっても手続きを省略せず、選任の都度、最新の誓約書を回収して確認を行うべきとされています。

3. 万一、欠格者が就任してしまった場合の効力と対応

もし選任時に欠格事由に該当していた人物を誤って選任してしまった場合、その選任決議は法律上「無効」となります。就任登記がすでに完了している場合は、その登記を抹消する手続きが必要となります。

なお、役員が欠けた場合に退任者がなお役員としての権利義務を有する「権利義務役員」の規定(一般法人法第75条第1項)は、任期の満了または辞任により退任した役員に適用されるものです。したがって、欠格事由に該当して選任が無効となった本人が、この規定によって役員の権利義務を持つことはありません(一方、その前任者が任期満了または辞任により退任していた場合には、前任者に権利義務が残る余地があります)。役員の員数が不足する場合は、速やかに臨時社員総会を開催するなどして、後任の役員を適正に選任し直す必要があります。

実務上の判断に迷う複雑なケースや、定款変更の具体的な文案設計などでお悩みの場合は、全国公益法人協会にご相談ください。


まとめ

一般社団法人の役員選任における欠格事由の確認は、法人の社会的信用と健全なガバナンスを維持するための土台となります。

令和3年施行の法改正による成年被後見人等の就任手続きの整備や、監事の兼任禁止規定、定款による独自の資格制限など、実務担当者が押さえておくべきルールは多岐にわたります。選任の都度、誓約書の徴求と議事録への正確な記録を欠かさないことが、手続きの不備を防ぐ確実な備えになります。

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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