設立チャートイメージ

一般社団法人や一般財団法人の設立方法を知りたいと考えている人も少なくないでしょう。

実は一般社団法人や一般財団法人の設立方法は、ほとんど株式会社と同じです。とはいえ、株式会社の設立方法と異なる点もありますし、そもそも株式会社をどのように設立するかを知っている人もあまり多くはいません。

そこで本記事では、一般社団法人や一般財団法人の設立方法をわかりやすく紹介します。

ひと目で全体像を把握できる設立チャートも準備していますので、ぜひ設立を検討している人はお役立てください。

※なおこの記事では、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」のことを「一般法人法」と略して称します。

一般社団法人・一般財団法人の設立チャート

まず、一般社団法人や一般財団法人の設立の全体像を把握できるよう、設立チャートを準備しました。

一般社団法人の設立チャート

  1. 設立時社員を2人以上集める
  2. 設立時社員が共同で定款を作成する
  3. 公証役場で定款の事前チェックを受ける
  4. 公証人と認証面談日を決める
  5. 必要書類や手数料を準備して認証面談をする
  6. 設立登記申請に必要な書面を準備する
  7. 設立登記申請をする

一般社団法人の設立チャート

一般社団法人・一般財団法人の設立フロー

一般社団法人や一般財団法人の設立フローは、大まかに示すと定款を作成して公証人の認証を受け、設立時理事等を選任し、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立登記申請を行うという流れです。

具体的には次の流れですので、それぞれ解説していきます。
なお、以後紹介する流れは一般社団法人を基本とし、一般財団法人固有の手続については都度注記する形とします。

  1. 設立時社員を2人以上集める
  2. 設立時社員が共同で定款を作成する
  3. 公証役場で定款の事前チェックを受ける
  4. 公証人と認証面談日を決める
  5. 必要書類や手数料を準備して認証面談をする
  6. 設立登記申請に必要な書面を準備する
  7. 設立登記申請をする

設立時社員を2人以上集める

一般社団法人を設立するためには、2人以上の設立時社員が必要とされています。

自然人(個人)か法人で構成しますので、例えば個人2人であっても、法人2人であっても一般社団法人の設立が可能です。

なお一般財団法人の設立自体は1人で足りますが、登記申請が認められるためには下記のとおり選任している必要があるため、結果として7人必要となります。

  • 設立時評議員:3人以上
  • 設立時理事:3人以上
  • 設立時監事:1人以上

設立時社員が共同で定款を作成する

次に、2人以上の設立時社員が共同で定款を作成します。

定款とは法人の目的や組織、活動に関する根本規則のことで、一般法人法では、設立のためには定款を作成しなければならないことが定められています(一般法人法第10条・第152条)。

そしてこの定款には、法令で定められた記載事項(絶対的記載事項)を記載する必要があり、記載しなければ一般財団法人の定款として認められません(一般法人法第11条・第153条)。

一般社団法人
一般財団法人
  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立時社員の氏名又は名称及び住所
  • 社員の資格の得喪に関する規定
  • 公告方法
  • 事業年度
  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立者の氏名又は名称及び住所
  • 設立者が拠出する財産とその価額
  • 設立時評議員、設立時理事、設立時理事の選任に関する事項
  • 評議員の選任及び解任の方法
  • 公告方法
  • 事業年度

なお、会計監査人を設置する場合は設立時会計監査人の選任に関する事項も絶対的記載事項です。

絶対的記載事項の反面、記載してはいけない事項もあります。
それは有害的記載事項と呼ばれており、代表的なもので言えば、社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与えることなどが該当します。

つまり一般社団法人や一般財団法人を「営利法人」にすることはできません。

定款については日本公証人連合会や法務局のホームページで記載例を見ることができますが、事前に専門家と相談しながら作成することがおすすめです。

ちなみに、一般社団法人や一般財団法人の定款は、紙定款(書面)であっても印紙税はかかりません。

公証役場で定款の事前チェックを受ける

定款を作成できたら、定款の認証に先立ち、公証役場で定款の事前チェックを受けます。

このとき、定款に記載した主たる事務所を管轄する法務局に所属している公証人に担当してもらわなければなりません(公証人法第62条の2)。
そのため、主たる事務所がある都道府県内の公証役場に連絡を取って、事前チェックを依頼します。

公証人と認証面談日を決める

定款の事前チェックが終わったら、実際に認証面談を行う日を決めます。
事前チェックを受けた公証人と連絡を取り合って決めましょう。

必要書類や手数料を準備して認証面談をする

認証面談日までに、必要書類や手数料を準備する必要があります。
定款の認証に必要な書類は次のとおりです。

  • 定款3通(公証役場保存用、法人保存用、設立登記申請用謄本)
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
  • 設立者全員の実印
  • 設立者全員の印鑑証明書(発行3か月以内)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

認証に必要な手数料は5万円です。
5万円に加えて、定款謄本手数料等が数千円かかります。

なお2022年1月1日に会社定款の認証手数料が引下げられましたが、一般社団法人は5万円のままです。
認証当日は、10~20分程度で手続が終了します。

設立登記申請に必要な書面を準備する

定款の認証を受けたら、設立登記申請に必要な書面を準備していきます。
設立登記申請に必要な書面とは、おおむね次のとおりです。

一般社団法人
一般財団法人
  • 一般社団法人設立登記申請書
  • 登記すべき事項
  • 認証済み定款1通
  • 設立時社員の決議書1通
  • 設立時代表理事の互選に関する書面1通
  • 設立時理事及び設立時代表理事の就任承諾書
  • 設立時理事の印鑑証明書
  • 委任状(申請を委任した場合)
  • 一般財団法人設立登記申請書
  • 登記すべき事項
  • 認証済み定款1通
  • 財産の拠出の履行があったことを証する書面1通
  • 設立者全員の決議書1通
  • 設立時理事、設立時監事及び設立時評議員の就任承諾書
  • 設立時理事、設立時監事及び設立時評議員の本人確認証明書
  • 設立時代表理事の選定に関する書面
  • 設立時代表理事の就任承諾書
  • 設立時代表理事の印鑑証明書
  • 委任状(申請を委任した場合)

定款の記載状況などにより必要な書面は変わってきますので、詳しくは法務局や専門家に確認してみてください。

設立登記申請をする

必要な書面が揃ったら、法務局にて設立登記申請をします。
ちなみに法務局ホームページでは次のとおり申請方法を案内していますので、ぜひ申請方法に迷った際の参考にしてみてください。

  • 申請用総合ソフトを利用できて電子証明書を持っている:オンライン申請
  • 申請用総合ソフトを利用できるが電子証明書を持っていない:QRコード付き書面申請
  • 申請用総合ソフトを利用できない:通常の書面申請

なお電子証明書とは、オンライン上の印鑑証明書に相当するものです。
申請用総合ソフトの申請者情報に利用できる電子証明書のなかでは、公的個人認証サービス、つまりマイナンバーカードに組み込まれた電子証明書が唯一無料で利用できます。

なお、登記申請時に納付する義務のある登録免許税については、書面申請の場合は収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼り付けて、登記申請書と共に提出する方法が一般的です。

オンライン申請の場合は電子納付(Pay-easy)も可能で、申請用総合ソフトの処理状況表示画面の「納付」ボタンから金融機関を選択後、インターネットバンキングにログインして納付するか、各種番号を控えて自分でインターネットバンキングにログインして納付します。

一般社団法人・一般財団法人の設立にかかる費用

最後に、一般社団法人と一般財団法人の設立にかかる費用をまとめました。
当然、一般財団法人は300万円以上の財産を拠出して設立することは把握しておきましょう。

費用項目
金額
  • 定款認証手数料
  • 定款にかかる印紙税(収入印紙)
  • 定款謄本手数料等
  • 登録免許税
  • 5万円
  • 課税対象外
  • 約2,000円
  • 6万円

上記に挙げた法定費用(手数料・税金)のほか、次のような実費がかかることがあります。

  • 専門家に代理を依頼した場合の専門家報酬
  • 公証役場や法務局への交通費
  • 会社実印の作成費用
  • 個人印鑑の登録と印鑑証明書発行手数料
  • 登記事項証明書発行手数料