一般社団法人・一般財団法人とはどんな法人?メインビジュアル

はじめに

非営利法人のなかには、「一般社団法人」、「一般財団法人」という法人があり、日々様々な活動を行っています。
今回は、これから一般社団法人や一般財団法人の設立を検討している方に向けて、それぞれの特徴とその違いについて解説します。

I.一般社団法人・一般財団法人とは

一般社団法人・一般財団法人とは、どちらも営利を目的としない「非営利法人」です。「一般社団法人および一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいて設立されます。団体の公益性や活動目的の内容に関わらず、法律に定められた要件を満たせば法務局または地方法務局での設立登記により設立することができます。事業内容は自由で制約はなく、公益・共益・収益事業も行うことができます。
一般社団法人や一般財団法人として法人格を取得すると、法人名義での口座開設や各種契約を結ぶことができるようになります。

一方で、「持分」がないこと、出資者などに対して剰余金・残余財産の分配を行うことができないことに注意が必要です。

一般社団法人とは

一般社団法人は、人(社員)の集まりに、法人格を与えたもので、社員となる人が2名以上いれば法人格を得ることのできる非営利団体です。「人」を主体として活動する法人です。
具体的には例えば、資格認定機関や学術団体、福祉・医療系の学会や協会などがあります。ちなみに一般社団法人は人の集まりで設立される団体であるため、社員が0人となると解散することになります。

一般財団法人とは

一般財団法人は財産の集まりに対して法人格が与えられ、その財産を維持・運用して活動する非営利団体です。
具体的には例えば、スポーツ・文化の振興事業、奨学金事業などを行う団体、美術館を運営する組織などがあります。
一般財団法人の設立には、資金として300万円以上の財産を有していること、最低でも理事3名、評議員3名、監事1名の計7名が必要です。設立後は2期連続して純資産が300万円を下回ると強制的に解散となります。
また、財産を遺言で一般財団法人を設立する意志と記載するべき内容を定めると、亡くなった人も一般財団法人を設立することが可能となります。

一般社団法人と一般財団法人の違い

一般社団法人
一般財団法人
成り立ち 人の集合体 財産の集合体
設立時の拠出金 定めなし 300万円以上
機関
  • 社員総会(2名以上)
    ※最高意思決定機関
  • 理事会(3名以上)
    ※理事会を設置しないことも可能
  • 監事(1名以上)
  • 会計監査人
    ※条件を満たす場合には設置が必須
  • 評議員会(3名以上)
    ※理事会を監督する機関
  • 理事会(3名以上)
  • 理事(1名以上)
  • 会計監査人
    ※条件を満たす場合には設置が必須
主な財源
  • 会費収入
  • 運用益等
  • 事業収益 など
  • 運用益等
  • 事業収益 など

 

一般社団法人・一般財団法人の運営

一般社団法人・一般財団法人は、非営利型法人(法人税法上の非営利型法人の要件を満たすもの)と、非営利型法人以外の法人の2種類に分けられています。
非営利型法人以外の法人があるのは、一般社団法人および一般財団法人の設立要件として「公益性の有無」が定められていないためです。
つまり、一般社団法人、一般財団法人の運営では、公益事業、共益事業はもちろん、収益事業を行うことも許されています。

法人税の納税

一般社団法人・一般財団法人は非営利団体法人ですが、運営をするにあたって収益を得ることができます。そのため、法人税を納めなければいけません。
ただし、非営利型法人は公益法人等として取り扱われるため収益事業で生じた所得のみが課税対象となります。
税制上の優遇処置を受けられる「非営利型法人」に該当するには「※非営利性が徹底された法人」又は「※共益的活動を目的とする法人」に該当するためのすべての要件を満たす必要があります。

一方、一般社団法人・一般財団法人のなかでも非営利型法人以外の法人であれば、普通法人(企業)として取り扱われるため、すべての所得が課税対象となります。(出典:国税庁局「一般社団法人・一般財団法人と法人税」)

※「非営利性が徹底された法人」の要件とは

剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
解散したときは、残余財産を国や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1,2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)をしたことがないこと。
各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。

※「共益的活動を目的とする法人」の要件とは

会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。
定款等に会費の定めがあること。
主たる事業として収益事業を行っていないこと。
定款に特定の個人又は団体に余剰金の分配を行うことを定めていないこと。
解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。
上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えたことがないこと。
各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。

法人運営においての資金調達

一般社団法人は出資なく設立できる法人ですが、運営をしていく上では資金が必要となります。
一般社団法人では基金制度や会員制度を用いて法人運営をすることができます。

一般社団法人での基金制度とは、社員や社員以外からの「法人の財産」となる財産を拠出してもらい、法人の基本財産として活動資金として用いていく方法です。
ただし、これは出資ではなく、返還義務がありますので注意が必要です。

一般社団法人の会員制度とは、会員から入会金や会費を法人の活動資金として用いる方法です。
例えば、医療系の学会では会員に限定した活動を行っていることから、会員は共益的な活動のために会費と入会金を納入しています。
資格認定の協会では受験費用を用いて、資格認定の試験や活動を行っています。

美術館などの展示場を運営する一般財団法人では、個人や法人から寄贈された美術品の所蔵や公開を行っています。その入館料や販売品の売上によって、一般財団法人としての活動を行います。

IV.一般社団法人・一般財団法人設立のメリット・デメリット

一般社団法人・一般財団法人の設立は、事業に制限がなく、登記のみによって設立することができるなど多くのメリットがあります。一般法人以外の法人設立や権利能力なき社団でいることなどと比較し、主なメリット・デメリットに以下のものがあります。

一般社団法人・財団法人設立のメリット

  • 設立の簡単さ:一般法人は登記手続きのみで設立が可能であり、設立について許認可は不要です。
  • 設立コストが安い:株式会社設立の場合と比べ登録免許税が安く(6万円)、設立全体の費用も安くなります。
  • 税制上のメリット:非営利型法人として認定されると、税制上の優遇措置を受けることができます。
  • 法人名義での契約ができる:法人名義で銀行口座の開設や不動産の登記が可能です。
  • 事業内容に制約がない:NPO法人のように活動範囲に制限がなく、自由に事業が行えます。
  • 社会的な信用につながる:一般社団法人・一般財団法人には法人格が与えられ、個人や任意団体よりも社会的信用度が得られます。

一般社団法人・財団法人設立のデメリット

  • 利益の分配ができない:事業で得られた利益を社員や評議員への分配ができません。
  • 運営負担が増加する:理事会・社員総会・評議員会の対応、社会保険への加入など運営負担が増えます。
  • 会計処理の方法が複雑:非営利型の場合、収益事業とそれ以外の事業を分けて処理する必要があり、企業会計と比較して複雑です。
  • 理事や監事の登記が必要:理事や監事などの役員の改任や再任のタイミングで登記が必須となります。

 

著者情報

専門誌『公益・一般法人』編集部

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