一般財団法人は、評議員会や理事会の決議だけで任意に解散することができません。2期連続で純資産額が300万円未満となった場合や、目的とする事業が成功不能となった場合など、法律または定款に定めた事由の発生が必要です(一般社団・財団法人法第202条)。
解散後は清算人が財産と債務を整理し、残余財産を引き渡して清算結了の登記を行います。解散前の純資産対策から清算結了までを一続きの手続として捉え、定款、決算見込み、債権者、残余財産の帰属先を早い段階で確かめておく必要があります。
一般財団法人が決議だけで解散できない理由
一般社団法人には社員総会の決議による解散がありますが、一般財団法人の解散事由に評議員会の決議は含まれていません(一般社団・財団法人法第202条)。財団は、設立者が一定の目的に充てた財産を基礎とするため、後に運営を担う理事や評議員の判断だけで、その財産を支える法人格を消滅させない仕組みになっています。
一般財団法人を解散するには、定款で定めた存続期間の満了や解散事由の発生、目的事業の成功不能など、同条に掲げる事由が必要です。事業を終えたいという意思だけでは足りない点が、一般社団法人との大きな違いです。
一般財団法人における特有の解散事由
一般財団法人の解散事由は、一般社団・財団法人法第202条に定められています。実務で見落とせないのは、2期連続で純資産額が300万円未満となる場合と、目的事業が成功不能となる場合です。
2期連続で純資産額が300万円未満となる場合
ある事業年度とその翌事業年度の貸借対照表で、純資産額がいずれも300万円未満となった一般財団法人は、翌事業年度の定時評議員会が終結した時に解散します(一般社団・財団法人法第202条第2項)。1期だけ300万円を下回った時点では解散しませんが、次の決算までに回復できるかを月次で追う必要があります。
判定に用いるのは現預金残高ではなく、貸借対照表上の純資産額です。資金繰りに余裕があっても、累積赤字や資産の評価減によって基準を下回ることがあります。1期目に300万円未満となった後は、次の期末までの損益と純資産の見込みを更新し、回復策の効果まで決算数値に織り込んで確認します。
基本財産の滅失などによる目的事業の成功不能
基本財産の滅失その他の事情により、目的とする事業を達成できなくなった場合も解散事由となります(一般社団・財団法人法第202条第1項第3号)。一時的な資金不足ではなく、事業を続けても目的を実現できない客観的な状態が問題になります。
たとえば、特定の美術館の運営だけを目的とする財団で、災害により建物と収蔵品を失い、代替施設や再建資金も確保できない場合です。法改正によって目的事業そのものを行えなくなった場合も考えられます。単なる業績不振と区別するため、代替手段、資金調達の可能性、事業計画の変更余地を調べた記録が欠かせません。
実務では、理事会が成功不能に至った事情と検討した代替策を整理し、その事実を議事録に残します。評議員会にも経緯を報告しておくと、清算人の選任やその後の清算手続へ移りやすくなります。ただし、理事会や評議員会の決議が解散の効力を生じさせるのではありません。客観的に成功不能となったこと自体が解散事由です。
解散登記の申請では、代表清算人が成功不能の事実を具体的に記した「解散事由の発生を証する書面」を作成し、登記所届出印を押して添付します。原因となった事実と、それによって目的事業を続けられない理由を対応させて記載します。
その他の解散事由
このほか、一般財団法人は次の事由によって解散します(一般社団・財団法人法第202条第1項)。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 合併による消滅
- 破産手続開始の決定
- 解散を命ずる裁判
最後の登記から5年を経過した休眠一般財団法人は、法務大臣の公告後、所定の期間内に事業を廃止していない旨を届け出ず、登記もしなかった場合に解散したものとみなされます(一般社団・財団法人法第203条)。
純資産額300万円未満による解散を避けるための対応
1期目に純資産額が300万円未満となった場合、次の期末までに300万円以上へ戻せるかを検討します。支出の先送りだけでは純資産の回復につながらないことがあるため、損益と貸借対照表の双方で効果を確かめます。
筆者が相談を受けた法人にも、不足分を関係者から借り入れればよいと考えていた例がありました。しかし、借入れでは現預金(資産)と借入金(負債)が同額増えるため、純資産額は変わりません。300万円基準への対応にはならず、寄附や債務免除など、純資産そのものを増やす方法が必要です。
1. 関係者からの追加寄附
設立者、理事、関係企業などから追加の寄附を受ける方法があります。設立後に受け入れる財産は、設立時の拠出ではなく寄附として扱います。
金銭寄附は資産と純資産を増やしますが、受入れを決めただけでは足りません。期末までに入金を受け、寄附申込書、受領書、理事会議事録などの証拠をそろえます。現物寄附では、受入価額の算定、名義変更、維持費、寄附者側の税務も確認が必要になるため、純資産対策だけを理由に選ぶべきではありません。
2. 借入金などの債務免除
理事や関係者からの借入金がある場合は、債権者から債務免除を受ける方法もあります。
債務免除を受けると負債が減り、債務免除益が計上されるため、純資産額は増加する方向に動きます。ただし、法人税などが生じれば効果はその分小さくなります。免除後の税額まで反映した決算見込みで、300万円以上となるかを確認します。
債務免除は、債権者から法人へ債務免除通知書を交付するなど、対象債務、免除額、効力発生日を客観的に確認できる形で行います。実際の効力発生日が期末後であるのに、書面だけを期末前の日付にすることはできません。
なお、2期連続で300万円未満となって解散した後でも、清算事務年度の貸借対照表上の純資産額が300万円以上となれば、清算結了前に評議員会の決議で法人を継続できます(一般社団・財団法人法第204条)。もっとも、解散登記や清算事務がいったん必要になるため、1期目から回復に取り組むほうが負担は小さくなります。
定款で定めた解散事由を変更する場合
定款に、特定の事業の終了や施設の完成など、独自の解散事由を定めている法人があります。法人を存続させる必要が生じたときは、その事由が発生する前に定款を確認します。
存続期間や解散事由は、評議員会の決議によって変更できます(一般社団・財団法人法第200条)。この決議には、議決に加わることができる評議員の3分の2以上の賛成が必要です。定款でこれを上回る割合を定めている場合は、その割合に従います(同法第189条第2項)。
変更できるのは、解散事由がまだ発生していない段階です。事由が発生して法人が解散した後に、定款変更を遡らせて解散をなかったことにはできません。存続期間または解散事由の定めを変更したときは、変更から2週間以内に主たる事務所の所在地で変更登記を行います(一般社団・財団法人法第303条)。
清算手続きの流れと清算法人の実務
清算とは、解散時に残っている権利と義務を整理し、法人を消滅させるための手続です。解散は通常の事業活動を終える出発点であり、その時点で法人格が直ちに消えるわけではありません。
解散した一般財団法人は、合併による消滅などを除き、清算が結了するまで清算法人として存続します(一般社団・財団法人法第206条、第207条)。清算人が現務を終え、債権を回収し、債務を弁済して残余財産を引き渡します。これらの処理を終えて清算結了の登記を行うと、法人登記が閉鎖されます。
実務は次の順に進みます。
1. 清算人の就任と登記
解散に伴い、清算人が法人を代表して清算事務を行います。定款で定めた者または評議員会で選任した者が清算人となり、そのような者がいなければ解散時の理事が就任します(一般社団・財団法人法第209条)。
解散事由が発生したときは2週間以内に解散の登記を行い、清算人の氏名や代表清算人の氏名・住所なども登記します。清算人を新たに選任した場合も、選任から2週間以内の登記が必要です(一般社団・財団法人法第308条、第310条)。
2. 現務の結了と財産目録の作成
清算人は就任後遅滞なく財産の状況を調査し、解散日時点の財産目録と貸借対照表を作成して評議員会の承認を受けます(一般社団・財団法人法第225条)。並行して、継続中の契約、未収金、借入金、未払金、預り金、税金などを一覧にし、終了または回収・弁済の日程を決めます。
3. 官報公告と知れている債権者への催告
清算法人は、解散後遅滞なく、債権者に一定期間内の債権申出を求める公告を官報に掲載し、把握している債権者には個別に催告しなければなりません(一般社団・財団法人法第233条)。
債権申出期間は2か月以上とします。期間中は原則として債務を弁済できませんが、少額の債権など、他の債権者を害するおそれがないものは、裁判所の許可を得て弁済できます(一般社団・財団法人法第234条)。
条件付きの債権や金額が確定していない債権は、裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済します(一般社団・財団法人法第235条)。
4. 債権の取立てと債務の弁済
清算人は法人が有する債権を回収し、債権申出期間の経過後に債務を弁済します。残余財産の引渡しへ進む前に、国税と地方税を含む未納額がないかも確認します。
5. 残余財産の引渡しと帰属先の決定
原則として、債務を弁済した後でなければ残余財産を引き渡せません(一般社団・財団法人法第237条)。
帰属先は、次の順序で決まります(一般社団・財団法人法第239条)。
- 定款に帰属先またはその決定方法があれば、その定めに従います。
- 定款で決まらない場合は、評議員会の決議で帰属先を定めます。
- それでも帰属先が決まらない残余財産は、国庫に帰属します。
一般社団法人では、定款で帰属先が定まらない場合、社員総会の決議によって社員を帰属先とすることがあります。一般財団法人には社員も社員総会もありません。ただし、非営利型法人に該当しない一般財団法人では、定款で帰属先が定まらないとき、評議員会の決議によって設立者を帰属先に定める余地があります。これは設立者への拠出財産の返還を認める制度ではなく、設立者が自らの意思だけで財産を取り戻せるという意味でもありません。
筆者が相談を受けた事例にも、企業オーナーが設立した財団について、解散時に残る財産をオーナー本人へ戻したいというものがありました。設立者が拠出した財産は法人に帰属しており、設立者だからという理由で当然に取り戻せるものではありません。設立者に残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めも無効です(一般社団・財団法人法第153条)。オーナー本人を帰属先とする場合は、一般法人法上の要件だけでなく、公益財団法人または非営利型法人に該当するか、共益型であれば会員の負担に応じた還付といえるかを区別して検討します。法人側と受領者側の課税関係も生じ得るため、手取額まで試算したうえで判断します。
6. 決算報告と清算結了の登記
清算事務が終了したら、清算人は遅滞なく決算報告を作成し、評議員会の承認を受けます(一般社団・財団法人法第240条)。
評議員会による承認の日から2週間以内に、主たる事務所の所在地で清算結了の登記を行います(一般社団・財団法人法第311条)。この登記によって法人登記は閉鎖されます。
非営利型法人の残余財産
非営利型法人には、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2類型があります。残余財産に関する要件は同じではありません。
非営利性が徹底された法人
法人税法上の非営利型法人とは、収益事業から生じた所得にのみ法人税が課され、会費や寄附金などそれ以外の所得には課税されない類型です。そのうち非営利性が徹底された法人に該当するには、残余財産が最終的に次のいずれかへ帰属する旨を定款で定めておく必要があります(法人税法施行令第3条第1項)。
- 国または地方公共団体
- 公益社団法人または公益財団法人
- 公益認定法第5条第20号イからトまでに掲げる法人
- 残余財産を公益信託の信託財産とする場合の公益信託受託者
設立者、親族、一般企業などへ残余財産を帰属させる定めがある法人は、この類型の要件を満たしません。これは残余財産の引渡し時だけの制限ではなく、非営利型法人であるための定款要件です。
共益的活動を目的とする法人
共益的活動を目的とする法人、いわゆる共益型では、残余財産を国や公益法人などへ帰属させる旨を定款に積極的に定めることまでは求められません。ただし、特定の個人または団体へ帰属させる旨を定款に定めていないことが要件です。国、地方公共団体、一定の公益的な法人のほか、目的が類似する他の一般社団法人または一般財団法人を帰属先とする定めは、この制限から除かれます(法人税法施行令第3条第2項)。
共益型では、会員間で各会員の負担に応じて残余財産を還付する場合は、非営利型法人の要件違反にならないとされています。一般財団法人でも、法人税法上の「会員」を設けて共益型の要件を満たすことは可能です。しかし、設立者が設立時に拠出した財産は、会員が共益活動のために負担した会費と当然に同じものではありません。前述の相談事例でオーナー本人への帰属を検討する場合も、設立者として拠出した財産を戻すのか、共益型の会員として負担した額に応じて還付するのかを区別する必要があります。前者であれば、特定の個人への特別の利益に当たらないかが問題になります。
特定の個人または団体へ特別の利益を与えることを決定し、または実際に与えた場合は、その要件を欠いた日に共益型から普通法人へ移ります。このとき大きなリスクとなるのが、累積所得金額への課税です。累積所得金額とは、非営利型法人だった過去の期間に、収益事業以外の事業から生じて法人内に蓄積され、これまで法人税が課されていなかった所得の累積額として計算される金額です。過去の申告をやり直すのではなく、この蓄積額を普通法人へ移った事業年度の益金にまとめて算入するため、その年度に多額の法人税が発生する可能性があります(法人税法第64条の4第1項、法人税法施行令第131条の4第1項)。法人の運営期間が長く、非課税の所得が多く蓄積されているほど影響は大きくなります。残余財産の引渡し額だけでなく、この法人税を納付した後に残る金額まで試算しなければなりません。
一般法人法第239条だけを見れば、定款または評議員会の決議で帰属先を定められます。しかし、非営利型法人としての税務上の取扱いを維持するには、法人税法施行令の要件も満たさなければなりません。清算に着手する前に、非営利型法人のどちらの類型に該当するか、定款の帰属条項、会員と会費の実態、実際の候補先を一体で確認します。
解散・清算実務におけるスケジュールと費用の目安
債権申出期間だけで2か月以上必要です。官報への掲載準備、債権回収、債務の確定、残余財産の引渡し、評議員会の開催、登記まで含めると、解散から清算結了まで3か月以上を見込むのが現実的です。債権・債務が多い法人や税務調査中の法人では、さらに長くなります。
登記にかかる登録免許税は、次のとおりです(登録免許税法別表第一第24号)。
- 解散の登記は30,000円
- 清算人または代表清算人の登記は9,000円
- 清算結了の登記は2,000円
これに官報公告料が加わります。公告料は掲載行数などによって変わるため、申込み時の見積りで確認します。登記書類の作成や税務申告を委託する場合は、その報酬も別に必要です。
解散事由がいつ発生するかによって、定款変更、純資産の回復、清算開始のいずれを選べるかが変わります。純資産額が初めて300万円未満となった年度、または定款上の解散事由が近づいた時点で、決算見込みと手続の日程を並べて判断することが肝要です。
純資産額の見通し、定款変更の要否、清算中の決算や残余財産の帰属について整理が必要な場合は、全国公益法人協会にご相談ください。法人の状況を確認し、必要な会計・税務手続を具体化します。