公益信託に関する法律(公益信託法)とは|本則49条・別表・附則の構成と読み方

公益信託に関する法律(公益信託法)とは|本則49条・別表・附則の構成と読み方

公益信託に関する法律(公益信託法・令和6年法律第30号)は、本則49条と別表、そして附則からなります。実質は第二章に集まり、信託法へは第33条を経由してつながり、基準の中身は政令と内閣府令に委任され、既存の公益信託の手続は附則が抱えています。条文を引くための地図として、どこに何があるのかを整理します。

公益信託法は2026年(令和8年)4月1日に施行されたばかりの法律であり、解説記事の蓄積も実務の慣行もまだ薄い状態です。だからこそ、条文そのものにあたる力が効いてきます。

もっとも、この法律は最初から通読するのに向いていません。第33条には信託法の膨大な読替表が置かれ、随所に「内閣府令で定める」という委任が挟まり、附則には本則と対をなす別の手続が丸ごと収められています。順番どおりに読み進めると、どこが幹でどこが枝なのかがつかめないまま終わります。

公益信託法の基本情報

まず法律そのものの素性を確認しておきます。

項目 内容
正式名称 公益信託に関する法律
略称 公益信託法
法令番号 令和6年法律第30号
施行日 2026年(令和8年)4月1日
構成 本則49条(5章)+別表+附則

条文を検索するときに引っかかりやすいのが名称の揺れです。「公益信託に関する法律」が正式名称「公益信託法」が略称です。これに対し、改正前の法律は「公益信託ニ関スル法律」(大正11年法律第62号)で、カタカナの「ニ関スル」でした。検索の際は、いま自分が新旧どちらを見ているのかを法令番号で確かめるのが確実です。

もう一点、制度上の性質として重要なのは、公益信託法が旧「公益信託ニ関スル法律」の全部改正であるという事実です。旧法を廃止して新法を制定したのではありません。附則の文言も「この法律による改正前の公益信託ニ関スル法律」(公益信託法附則第2条第2項)となっており、同一の法律が中身を全面的に入れ替えたという建て方です。法令番号が令和6年法律第30号に改まっているのは、全部改正に伴う扱いによるものです。

なお、施行期日そのものは本則ではなく附則に置かれています。公益信託法附則第1条は「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と定め、これを受けた政令によって2026年4月1日と定められました。ただし、附則第22条(準備行為)と附則第23条(政令への委任)だけは、同条ただし書によって公布の日から施行されています。施行前に政令・内閣府令の立案について委員会へ諮問できるようにしておくための建て方です。

全体の地図――5章と別表

本則49条は5つの章に分かれています。まず全体像を押さえます。

内容
第一章 総則 第1条〜第5条 目的、定義、行政庁、公益信託の要件、名称等
第二章 公益信託の認可等 第6条〜第33条 効力、認可、事務処理、併合等、監督、信託法の適用関係
第三章 公益認定等委員会等への諮問等 第34条〜第39条 委員会への諮問、答申の公表、委員会による勧告
第四章 雑則 第40条〜第44条 協力依頼、情報提供、権限の委任、是正要求、命令への委任
第五章 罰則 第45条〜第49条 罰金・拘禁刑、両罰規定、過料
別表(第2条関係) 第1号〜第23号 公益事務の種類

条数の分布を見ればわかるとおり、49条のうち28条が第二章に集まっています。公益信託法の実質は第二章であると考えて差し支えありません。

第一章 総則(第1条〜第5条)――定義がここで決まる

第1条は目的規定です。「公益を目的とする信託による事務の実施が公益の増進のために重要となっていることに鑑み」という認識を示し、公益信託を認可する制度を設けることと、受託者による信託事務の適正な処理を確保するための措置を定めることを、この法律の役割として掲げています。

実務で最も参照するのは第2条の定義です。第1項第1号は公益信託を、この法律の定めるところによりする受益者の定めのない信託であって、公益事務を行うことのみを目的とするものと定めます。第1項第2号は公益事務を、学術の振興、福祉の向上その他の不特定かつ多数の者の利益の増進を目的とする事務として別表各号に掲げる事務と定めます。第2項では「信託」「信託行為」「信託財産」「委託者」「受託者」「受益者」といった用語を信託法第2条から借用する旨が置かれています。公益信託法は用語の土台を信託法に置いているわけで、定義を追うときは信託法まで遡る必要があります。

第3条は行政庁の振り分けです。公益事務を2以上の都道府県の区域内で行う旨を信託行為で定めるもの、および国の事務・事業と密接な関連を有する公益事務であって政令で定めるものを行うものは内閣総理大臣が、それ以外はその公益事務を行う区域を管轄する都道府県知事が行政庁となります。もっとも、後者の「政令で定めるもの」は、公益信託認可等ガイドラインによれば、施行令の制定時点で該当する公益事務がないため定められていません。当面は、公益事務を行う区域が2以上の都道府県にまたがるかどうかで窓口が決まると考えて差し支えありません。

第4条は公益信託の要件です。設定方法を信託法第3条第1号(信託契約)または第2号(遺言)に限定し、信託行為に定めるべき事項を列挙し、受益者の定めを設けられない旨を定めます。第5条は名称等の規律で、公益信託でないものが公益信託と誤認されるおそれのある文字を名称や商号に用いることを禁じています。

第二章 公益信託の認可等(第6条〜第33条)――6つの節に分かれる

第二章はさらに6つの節に区切られています。この節の切れ目が、そのまま公益信託のライフサイクルに対応しています。

内容
第一節 公益信託の効力 第6条 認可を受けなければ効力を生じない
第二節 公益信託の認可 第7条〜第15条 認可の申請・基準・欠格事由・意見聴取・公示、変更の認可と届出
第三節 公益信託事務の処理等 第16条〜第21条 収支均衡、使途不特定財産額、寄附募集の禁止行為、報酬、財産目録の備置きと提出
第四節 公益信託の併合等 第22条〜第27条 併合・分割の認可、終了事由、継続、終了・清算の届出、残余財産の帰属
第五節 公益信託の監督 第28条〜第32条 報告徴収・立入検査、勧告・命令、認可の取消し
第六節 信託法の適用関係 第33条 適用除外と読替え

第一節はわずか1条ですが、この法律の要石です。第6条は「公益信託は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない」とだけ定めています。1条を割いて独立した節を立てているのは、認可が効力要件そのものだという位置づけを示すためだと読めます。

第二節では、認可の申請(第7条)、認可の基準13号(第8条)、欠格事由6号(第9条)、意見聴取(第10条)、認可の公示(第11条)が並びます。第12条から第15条までは、公益信託が動き出したあとの変更を扱います。変更は原則として認可が必要です(第12条第1項)。新受託者・新信託管理人の選任もこの認可の対象に含まれており、後任を決める場面は届出では済みません。

届出で足りるのは、第12条第1項ただし書が認可の対象から外した場合です。内閣府令で定める軽微な信託の変更、裁判所の命令による信託の変更、裁判所等による新受託者・新信託管理人の選任がこれに当たり、遅滞なく届け出ることになります(第14条)。これとは別に、受託者または信託管理人が辞任し、もしくは解任されたときも届出が必要です(第15条)。ただし、第15条の届出は辞任・解任という事実の報告であって、後任を選任するために必要な認可の代わりにはなりません。

第三節が運営中の規律です。第16条の収支均衡と公益事務割合、第17条の使途不特定財産額の保有制限が財務規律の中心で、これに第18条の寄附募集に関する禁止行為、第19条の公益信託報酬、第20条の財産目録の備置き及び閲覧、第21条の財産目録等の提出が続きます。認可後の遵守事項を探すときは第16条から第21条までを見る、と覚えておけば足ります。

第四節は再編と終わり方です。併合・分割の認可(第22条)、終了事由(第23条)、継続(第24条)、終了・清算の届出(第25条、第26条)、残余財産の帰属(第27条)。第24条の継続は、信託の目的を達成したことなどにより終了した公益信託について、委託者・受託者・信託管理人の合意で目的を変更し、公益信託を継続できるという規定です(委託者が現に存しない場合は受託者と信託管理人の合意によります)。財産を残したまま目的だけを引き継がせる場面で使いますが、合意だけで完結するわけではありません。受託者は、終了の届出の日から3か月以内に、その目的の変更について第12条第1項の認可を受ける必要があります(第24条第2項)。

第五節が監督です。報告徴収及び立入検査(第28条)、勧告・命令等(第29条)、認可の取消し(第30条)と段階が上がっていきます。第31条は認可が取り消された場合の新受託者の選任、第32条は行政庁への意見です。

第六節の第33条は独立した扱いが必要なので、後述します。

公益信託法の章立てと条文の地図

第三章 公益認定等委員会等への諮問等(第34条〜第39条)

公益法人制度と同じく、公益信託の認可や監督処分にも第三者機関の関与が組み込まれています。

第34条は、内閣総理大臣が公益認定等委員会に諮問しなければならない場面を定めます。3つの項に分かれており、対象は次のとおりです。

  • 第1項 認可の申請に対する処分をしようとする場合(第1号)と、勧告・命令・認可の取消しといった監督処分等をしようとする場合(第2号)
  • 第2項 政令の制定・改廃の立案をしようとする場合および内閣府令の制定・改廃をしようとする場合(第1号)と、第43条による是正の要求を行おうとする場合(第2号)
  • 第3項 認可の申請に対する処分、命令、認可の取消しについての審査請求に対する裁決をしようとする場合

いずれの項にも「委員会が諮問を要しないものと認めたものについては、この限りでない」というただし書が付いています。加えて第1項と第3項には、諮問を要しない場合が括弧書きや号で細かく並んでいます。実際に諮問が必要かどうかを判断するときは、この除外まで読む必要があります。

第35条は答申の公表等、第36条は内閣総理大臣による送付等です。第37条では、委員会が自ら内閣総理大臣に対して勧告・命令・認可の取消しなどの措置をとるよう勧告できる旨が定められ、その勧告内容は公表しなければならないとされています。

第二節(第38条、第39条)は、行政庁が都道府県知事である場合の準用と、都道府県知事による通知等です。都道府県では公益認定等委員会に代わって、都道府県に置かれる合議制の機関が同様の役割を担います。章のタイトルが「公益認定等委員会への諮問等」となっているのは、この都道府県側の機関を含むためです。

第四章 雑則(第40条〜第44条)

第40条は協力依頼、第41条は情報の提供、第42条は権限の委任等です。第42条では、報告徴収及び立入検査の権限のうち、答申や勧告のため必要なものについて、内閣総理大臣が委員会に委任する旨が定められています。委員会が自ら調査に入れる根拠がここにあります。

第43条は是正の要求の方式、第44条は命令への委任です。第44条の「この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他必要な事項は、命令で定める」という包括的な委任が、後述する内閣府令や合同命令の受け皿になっています。

第五章 罰則(第45条〜第49条)

罰則は5条ですが、刑罰(拘禁刑・罰金)を定める規定(公益信託法第45条から第47条まで)と、行政上の秩序罰である過料を定める規定(公益信託法第49条)が分かれているため、混同しないよう注意が必要です。

内容 法定刑
第45条 偽りその他不正の手段により公益信託認可等を受けたとき 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
第46条 公益信託と誤認されるおそれのある名称・商号の使用(第5条違反) 50万円以下の罰金
第47条 申請書・添付書類への虚偽記載、財産目録等の備置き義務違反(第20条違反) 30万円以下の罰金
第48条 両罰規定(行為者のほか法人・人にも罰金刑)
第49条 届出義務違反(第14条、第15条、第25条、第26条)、財産目録等の提出義務違反(第21条)、報告・検査の拒否等(第28条) 50万円以下の過料

第49条の過料は、受託者に加えて、信託財産管理者、受託者の職務代行者、信託財産法人管理人、清算受託者、破産管財人も対象になります。届出や提出を落とすと過料の対象になるという点は、公益法人の登記懈怠に対する過料と同じ感覚で押さえておきたいところです。

別表(第2条関係)――公益事務の23分野

別表は第2条第1項第2号を受けて、公益事務の種類を第1号から第23号まで列挙しています。学術及び科学技術の振興、文化及び芸術の振興、障害者や生活困窮者・被害者の支援、高齢者の福祉の増進、公衆衛生の向上、児童又は青少年の健全な育成、地球環境の保全、国土の利用・整備・保全、地域社会の健全な発展、一般消費者の利益の擁護又は増進などが並び、第23号が「前各号に掲げるもののほか、公益に関する事務として政令で定めるもの」という受け皿になっています。

公益認定法の別表が公益目的事業の種類を同じく23号にわたって列挙していることと対応しており、公益法人制度と公益信託制度を整合させるという制度設計の考え方が現れた部分です。

読み方のコツ1――信託法は第33条を経由して読む

公益信託法だけを読んでも、公益信託の姿は半分しか見えません。公益信託は信託の一類型であり、信託法の規定が原則として適用されるためです。その接続部分が第33条です。

第33条は3つの項からなり、それぞれ性質が違います。

第1項は適用除外です。信託法第29条第2項ただし書、第31条第2項第3号関係、第35条第4項、第58条第2項、第59条第1項ただし書、第60条第1項ただし書などを列挙し、これらは公益信託には適用しないと定めています。除かれているのは、信託行為の定めや受益者の承認によって受託者の義務・責任を緩められる仕組みです。たとえば信託法第29条第2項ただし書が外れる結果、受託者の善管注意義務は信託行為で軽減することができません。公益信託には自分の利益を主張する受益者がいないぶん、受託者を縛る規律のほうを動かせなくしている、と読むと位置づけがつかみやすくなります。

第2項は独自の規律です。「公益信託においては、委託者の相続人は、委託者の地位を相続により承継しない」という一文が置かれています。条数のうえでは目立たない位置にありますが、実務上の影響は大きい規定です。

第3項が読替表です。信託法の条文中の字句を、公益信託向けに置き換える対応表が延々と続きます。たとえば「受益者の利益を害しない」は「信託の目的の達成に支障とならない」に、「受益者の利益に反する」は「信託の目的の達成に支障となる」に読み替えられます。受益者がいない制度なので、受益者の利益を基準にしていた判断枠組みを、信託目的の達成という基準に置き換えているわけです。

この構造は、条文を引くときの手順に直結します。信託法の規定を公益信託に当てはめるときは、第33条第1項で除外されていないかを確認し、第3項の表で読替えがないかを確認してから、信託法の条文を読むという順序になります。第2条第3項も、この法律で信託法の規定を引用する場合には読替え後の規定を指すと明示しています。順序を逆にすると、除外された規定や読替え前の字句を前提に検討してしまうおそれがあります。

なお、信託法上の限定責任信託として設定された公益信託は「限定責任公益信託」と呼ばれ、財産状況開示資料の作成方法などが通常の公益信託と異なります。受託者の責任の範囲を信託財産に限る設計を検討するときは、この類型に該当することを踏まえて条文を追うことになります。

第33条を経由して信託法を読む手順

読み方のコツ2――法律・政令・内閣府令・命令の四層構造

公益信託法の条文には「政令で定める」「内閣府令で定める」という委任が頻出します。法律だけでは基準の中身が決まらない箇所が多いため、下位法令をセットで持っておく必要があります。

法令 法令番号 規模
法律 公益信託に関する法律 令和6年法律第30号 本則49条+別表+附則
政令 公益信託に関する法律施行令 令和7年政令第233号 5条+附則
内閣府令 公益信託に関する法律施行規則 令和7年内閣府令第63号 本則57条(7章)+様式
内閣府・法務省令 公益信託に関する法律第33条第3項の規定により読み替えて適用する信託法第34条第1項第3号の内閣府令・法務省令で定める事項等を定める命令 令和7年内閣府・法務省令第3号 本則38条(6章)

施行令は5条しかありませんが、認可基準の中身を決める重要な条文が入っています。特別の利益を与えてはならない公益信託の関係者(第1条)、特定の個人又は団体の利益を図る活動を行う者(第2条)、公益信託の社会的信用を維持する上でふさわしくない事業(第3条)、他の団体の意思決定に関与することができる株式等を保有できる場合(第4条)、信託行為において残余財産を帰属させることができる法人(第5条)です。いずれも第8条の認可基準を読むために必要になります。

施行規則は7章構成で、第一章が信託行為において定める事項、第二章が公益信託の認可等、第三章が公益信託事務の処理等、第四章が公益信託の併合等、第五章が報告及び検査、第六章が移行認可、第七章が公示及び公表です。法律の章立てとおおむね対応しているため、法律の条文から対応する施行規則の章へ移ることができます。申請書の様式もここに付いています。

合同命令は名称が長く扱いにくいのですが、内容は第33条第3項による読替え後の信託法の規定を受けた事項を定めるものです。内閣府と法務省の共同命令になっているのは、信託法が法務省の所管であることの反映です。第四章に限定責任公益信託の特例が置かれています。

このほか、内閣府は「公益信託認可等ガイドライン」を公表しており、認可基準の解釈や信託行為の記載方法について詳細な指針が示されています。認可申請の実務では、法律・政令・府令の三層に加えて、このガイドラインを併せて確認するのが基本になります。

読み方のコツ3――附則は移行認可の手続を丸ごと抱えている

附則を「施行日と経過措置が書いてあるだけ」と考えて読み飛ばすと、公益信託法では大きく取り落とします。附則の構成を見ると、その理由がわかります。

附則の条 内容
附則第1条 施行期日
附則第2条 公益信託に関する法律の適用等に関する経過措置(移行期間)
附則第3条 旧公益信託許可の申請に係る経過措置
附則第4条 旧公益信託の新法の規定による公益信託への移行
附則第5条 旧公益信託の清算に関する経過措置
附則第6条〜第12条 移行認可の申請、基準、欠格事由、信託の変更等、意見聴取、旧主務官庁への通知、公益信託への移行
附則第13条〜第16条 委員会への諮問、答申の公表等、内閣総理大臣による通知、都道府県知事である場合の準用
附則第17条 名称又は商号の使用制限に関する経過措置
附則第18条〜第21条 罰則、過料に関する経過措置
附則第22条 準備行為
附則第23条 政令への委任

第6条から第16条までの11条が、移行認可という一つの手続を構成しています。 申請、基準、欠格事由、意見聴取、委員会への諮問、答申の公表——本則の第7条から第11条、第34条から第39条までが担っている流れが、旧公益信託向けにもう一組そろえられているわけです。既存の公益信託の関係者にとっては、本則よりも附則のほうが先に読むべき条文になります。

移行期間の骨格は公益信託法附則第2条第2項と同法附則第4条にあります。旧法の許可を受けていた公益信託については、施行日から起算して2年を経過する日までの間はなお従前の例によることとされ(公益信託法附則第2条第2項)、その期間内に移行認可を受けなければ、移行期間が満了する日に終了します(公益信託法附則第4条第1項後段)。施行日が2026年4月1日ですので、期限は2028年3月31日です。

ただし、移行期間内に移行認可の申請をしていて、期間内にその申請に対する処分がされていない場合は、その旧公益信託の移行期間は処分がされる日までとなります(公益信託法附則第4条第2項)。期限までに求められているのは、「認可を受けること」ではなく「申請を済ませること」です。 審査が長引いても、申請さえしていれば審査中に終了することはありません。

公益信託法附則第17条も見落としやすい規定です。名称の使用制限(本則第5条)の猶予を2段構えで定めており、猶予の長さが相手によって違います。旧公益信託については移行期間中は第5条第1項・第2項を適用せず(同条第1項)、それ以外で施行の際に名称・商号中に「公益信託」の文字を用いていた者については、施行日から起算して6月間、つまり2026年9月30日まで第5条第1項を適用しない(同条第2項)という構造です。旧公益信託の関係者が「猶予は6か月」と読み違えないよう、どちらの項に当たるかを先に確かめてください。

e-Gov で読める附則は第23条までしかない

ここまでの表は附則第1条から第23条までですが、公布された法律の附則はここで終わりではありません。 第24条以降には他の法律の改正規定とその経過措置が続いており、少なくとも第28条まで存在します。

見えないのは、e-Gov法令検索が配信する条文データが「改正規定は改正先の法令に反映済みなので、改正元の附則は抄録にとどめる」という作りになっているためです。したがって第24条以降を読みたいときは、改正された側の法令の附則を開くことになります。

附則の条 内容 条文が読める場所
附則第24条 預金保険法・農水産業協同組合貯金保険法の一部改正 各法の附則(令和6年法律第30号)抄
附則第25条 同上の経過措置 同上
附則第27条 公益認定法の一部改正 公益認定法の附則(令和6年法律第30号)抄
附則第28条 同上の経過措置 同上

このうち附則第28条は公益法人にとって実務上の意味があります。公益認定法第5条第20号の定款の定め――公益認定が取り消されたときなどに公益目的取得財産残額に相当する額の財産を贈与する先――は、同法第30条第5項によって変更できないとされています。附則第28条は、その財産を公益信託の信託財産とする旨を定款に定める必要があるときに限り、1回だけこの定めを変更してよいという特例を置いたものです。定款に公益信託を加えるかどうかを検討している公益法人は、この1回をどう使うかという判断を抱えていることになります。公益認定法と整備法の改正で公益法人・移行法人に何が加わったのかは「公益法人・移行法人と公益信託|寄附先・贈与先・残余財産の帰属先に公益信託が追加」で条文ごとに整理しています。

公益信託法を改正した令和6年法律第30号は、このほかに内閣府設置法、総務省設置法、不動産登記法、整備法、信託法も改正しています。附則の条数を数えるときや、他の法律への波及を追うときは、本則と経過措置だけを見ていると足りない場合がある、と覚えておいてください。

条文の引き方で迷ったときは

公益信託法は、第二章に実質が集まり、第33条で信託法へつながり、下位法令とガイドラインで基準の中身が埋まり、附則に移行認可の手続がそろっているという構造の法律です。この地図を持っていれば、どの論点をどこから引けばよいかの見当はつきます。

もっとも、実際の認可申請や既存の公益信託の移行では、法律・政令・府令・合同命令・ガイドラインを行き来しながら個別の事情に当てはめる作業が避けられません。条文の解釈や申請実務の進め方でお困りのことがあれば、全国公益法人協会の支援サービス「シェアコモン200」でご相談いただけます。会計・税務・法務の各分野に約200名の専門家が対応しており、年間利用料の範囲で、条文の読み方から申請書類の組み立てまで何度でもお尋ねいただけます。

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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