一般社団法人の理事会非設置法人の運営|業務執行・代表・社員総会の権限

一般社団法人の理事会非設置法人の運営|業務執行・代表・社員総会の権限

一般社団法人を設立・運営する際、機関設計として「理事会」を置くか置かないかは、その後の法人運営のあり方を大きく左右する分岐点となります。

法律上、一般社団法人は理事会を設置しない「理事会非設置法人」として運営することが可能です。理事会非設置法人には、意思決定のスピード感や運営コストの低さといった特有の強みがある一方で、業務執行の決定ルールや代表権の所在、最高意思決定機関である社員総会の権限範囲など、理事会設置法人とは異なる独自の法的な仕組みを正しく理解しておく必要があります。

業務執行の決め方、代表権の所在、社員総会の権限は、いずれも理事会設置法人とは異なる仕組みで動きます。実務担当者がつまずきやすいのは、この違いが登記手続きに直結する場面です。ここでは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)に即して、その要点を確認します。

理事会非設置法人の機関設計と意思決定ルート

理事会非設置法人における業務執行の決定原則

理事会を置かない一般社団法人において、日々の業務執行や重要事項の決定がどのように行われるのか、その基本原則を整理します。

理事の過半数による業務執行決定

理事が2人以上いる一般社団法人において、法人の業務執行をどのように決定するかは、一般法人法第76条第2項に規定されています。

同条項に基づき、定款に別段の定めがない限り、法人の業務執行は「理事の過半数」をもって決定します(一般法人法第76条第2項)。これは、理事が複数いる場合に、特定の理事が独断で重要な業務を決定して執行することを防ぐための基本的なルールです。

意思決定プロセスの柔軟性

理事会設置法人の場合、原則として実際に理事が一堂に会する「理事会」という会議体を開催して決議を行う必要があります。しかし、理事会非設置法人にはこのような厳格な会議開催の義務はありません。

理事の過半数の同意を得るプロセスは非常に柔軟です。対面での話し合いはもちろん、電話や電子メール、チャットツール、あるいは書面を回覧する「持ち回り」による合意形成も認められます。日常の細かな業務判断であれば、メールやチャット上で理事全員に意見を求め、過半数の賛成(同意)を確認できれば、法的な要件を満たした意思決定として成立します。

実務で必須となる「理事決定書」の作成と保管

意思決定のプロセスが柔軟であるからこそ、実務上は「いつ、誰が、何を決定したか」を客観的に証明できるようにしておくと、後日の登記申請や社員からの説明要求に確実に応えられます。

法人の主たる事務所の移転や、重要な契約の締結、社員総会の招集決定などを行う際には、理事の過半数の一致があったことを証する「理事決定書(または理事の過半数の一致を証する書面)」を作成します。

理事決定書には、以下の項目を記載するのが一般的です。

  • 決定事項(例:主たる事務所を〇〇に移転する、〇月〇日に定時社員総会を招集するなど)
  • 決定した日付
  • 同意した理事の署名または記名押印

この書面は、事務所移転登記などの申請時に法務局へ提出する添付書類となるだけでなく(一般法人法第317条第1項)、法人のガバナンスを証明する重要な内部証跡となります。主たる事務所を移転したときは、移転した日から2週間以内に変更登記を申請しなければなりません。

作成した理事決定書は、法人の意思決定の履歴として主たる事務所に大切に保管してください。社員から閲覧の請求があった場合にも、適切に対応できるように整理しておく必要があります。


法人を代表する者(代表理事)の選定と登記実務

理事が複数いる場合、誰が対外的に法人を代表するのか、また代表理事をどのように定めるのかは実務上、最も混乱しやすいポイントの一つです。

原則は「各自代表」

一般法人法第77条第1項本文により、理事会非設置法人では、原則として各理事が法人を代表することとされています。理事が2人以上いる場合は、各理事がそれぞれ単独で法人を代表する権限(代表権)を持ちます(一般法人法第77条第2項)。

ここで見落とされやすいのが登記への影響です。一般法人法は法人を代表する理事を「代表理事」と呼ぶため(一般法人法第21条第1項)、各自代表の場合は理事全員が代表理事に当たり、理事の氏名に加えて全員の氏名および住所が登記事項になります(一般法人法第301条第2項第6号)。理事全員の住所が登記記録として公開されるうえ、誰かが転居するたびに変更登記が必要になるため、事務負担の面から見ても代表理事を定めておく実益は小さくありません。なお、理事が1人の場合や各自代表の場合は、理事への就任承諾に法人を代表することについての承諾も含まれると解されるため、代表理事としての就任承諾書は別途必要ありません。

全員が代表権を持っている状態は、対外的な取引において相手方に混乱を与えたり、法人の管理が煩雑になったりする懸念もあります。そこで、同条第3項に基づき、定款の定め、定款の定めに基づく理事の互選、または社員総会の決議により、理事の中から代表理事を選ぶことができます(一般法人法第77条第3項)。代表理事を定めた場合、ほかの理事は代表権を持たず、定められた代表理事だけが法人を代表することになります(同条第1項ただし書)。

代表理事を定める方法には、主に次の3つのパターンがあります。

代表理事を選定する3つの方法

パターン1:定款で直接代表理事を規定する

定款の中に「この法人の代表理事は〇〇とする」と個人名を直接記載するか、「理事の数が1人のときはその理事が、2人以上のときは〇〇を代表理事とする」といった規定を設ける方法です。 この場合、代表理事を変更するたびに定款変更(社員総会の特別決議)が必要となるため、実務上の機動性にはやや欠ける面があります。

  • 登記申請時の主な添付書類 代表理事を定める定款変更に係る社員総会の議事録(一般法人法第317条第2項)、変更後の定款など
  • 押印ルール 当該社員総会議事録に議長および出席した理事全員が押印した印鑑について、市区町村長が作成した印鑑証明書を添付します(一般社団法人等登記規則第3条により準用される商業登記規則第61条第6項第1号)。ただし、その議事録に変更前の代表理事が登記所に提出している印鑑(いわゆる法人の代表者印)を押印している場合は、印鑑証明書の添付は不要です(同項ただし書)
  • 就任承諾書 定款で代表理事を定める場合は理事の地位と代表理事の地位が一体になっていると解されるため、理事として就任を承諾していれば、代表理事としての就任承諾書は不要です

パターン2:定款の定めに従い「理事の互選」で選定する

定款に「代表理事は、理事の互選によって定める」と規定しておき、理事が複数選任された後に、理事同士の話し合い(互選)によって代表理事を決定する方法です。実務上、最も多く採用されているパターンです。

  • 登記申請時の主な添付書類 定款、理事の互選書(互選を証する書面)、理事の就任承諾書、代表理事の就任承諾書など
  • 押印ルール(互選書) 互選書には、原則として出席した理事全員が市区町村に登録している個人の実印を押し、それぞれの印鑑証明書を添付します(商業登記規則第61条第6項第2号の準用)。ただし、互選書に変更前の代表理事が登記所に提出している印鑑(法人の代表者印)を押印している場合は印鑑証明書の添付が不要となり、結果としてほかの理事は認印の押印や署名でも差し支えありません(同項ただし書)
  • 押印ルール(就任承諾書) 理事会非設置法人では、再任の場合を除き、理事の就任承諾書に市区町村に登録した実印を押し、その印鑑証明書を添付します(商業登記規則第61条第4項の準用)。この印鑑証明書を添付する場合、当該理事について別途本人確認証明書を添付する必要はありません。一方、互選で選定された代表理事の就任承諾書は、押印した印鑑につき印鑑証明書の添付を求める規定がないため、認印で差し支えありません

パターン3:「社員総会決議」によって選定する

定款に「代表理事は、社員総会の決議によって理事の中から選定する」と規定する方法です。最高意思決定機関である社員総会が、直接代表者を選び出す形をとります。

  • 登記申請時の主な添付書類 定款、代表理事を選定した社員総会の議事録(一般法人法第317条第2項)、理事の就任承諾書など
  • 押印ルール 社員総会議事録には議長および出席した理事全員が押印し、その印鑑について印鑑証明書を添付します(商業登記規則第61条第6項第1号の準用)。定款で議事録署名人を別に定めている場合でも、この結論は変わりません。ただし、議事録に変更前の代表理事が登記所に提出している印鑑を押印している場合は、印鑑証明書の添付は不要です(同項ただし書)
  • 就任承諾書 社員総会の決議で代表理事を定める場合も理事の地位と代表理事の地位が一体と解されるため、代表理事としての就任承諾書は不要です。新任理事の就任承諾書には、再任の場合を除き実印を押し印鑑証明書を添付します

代表理事の変更が生じた場合は、変更があった日から「2週間以内」に、主たる事務所の所在地において変更登記を申請しなければなりません(登録免許税は役員変更として1万円)。就任を承諾したことを証する書面の扱い、代表理事の住所のみが変わった場合の登記、代表理事が欠けたときの権利義務代表理事など、選定パターンを問わず共通する変更登記の実務は一般社団法人の代表理事|選定方法・権限・変更登記の実務で詳しく解説しています。どのパターンで代表理事を選定しているかを現行定款で必ず確認し、必要書類を事前に揃えておきましょう。


社員総会への権限集中と理事会設置法人との違い

理事会を置かない一般社団法人における最大の特徴は、すべての重要事項の決定権限が「社員総会」に集中する点にあります。

社員総会の権限範囲(一般法人法第35条)

一般法人法第35条第1項に基づき、理事会非設置法人における社員総会は、「この法律に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項」について決議をすることができます(一般法人法第35条第1項)。ただし例外として、社員に剰余金を分配する旨の決議はできません(同条第3項)。

これに対し、理事会を設置している法人の場合、社員総会は「一般法人法に規定する事項及び定款で定めた事項」に限り決議できると制限されています(一般法人法第35条第2項)。

両者の違いを比較すると、以下のようになります。

項目 理事会非設置法人 理事会設置法人
社員総会の権限 法人に関する一切の事項を決議可能(一般法人法第35条第1項) 法律に規定する事項および定款で定めた事項に限定(一般法人法第35条第2項)
業務執行の決定機関 理事の過半数(一般法人法第76条第2項) 理事会(一般法人法第90条第2項第1号)
最低限必要な役員数 理事1名以上(監事は任意設置) 理事3名以上、監事1名以上(必置)
招集通知の発送期限 原則として開催日の1週間前まで。定款で1週間を下回る期間に短縮できる(一般法人法第39条第1項) 原則として開催日の1週間前まで。定款による短縮はできない(同項)
招集通知の方法 書面によることを要しない(口頭や電子メールでも可) 書面によることが必要(一般法人法第39条第2項第2号)

理事会非設置法人では、日常の細かな業務執行は理事の過半数で決定しますが、社員総会が一切の事項を決議できるため、社員総会の決議によって理事の決定を覆すことも法理上可能です。

招集手続の簡素化と定款自治による短縮

理事会非設置法人では、社員総会の招集にかかる日数と手間を、定款の設計しだいで大きく減らせます。

社員総会を招集するには、原則として社員総会の日の1週間前までに通知を発しなければなりませんが、理事会非設置法人の場合は、定款に定めることでこの期間を「1週間」を下回る期間(例えば3日前や前日など)に短縮できます(一般法人法第39条第1項)。理事会設置法人にはこの短縮が認められていません。また、通知を書面で行わなければならないとされているのは理事会設置法人の場合であるため(同条第2項第2号)、理事会非設置法人では電子メールや口頭による通知でも足ります。

ただし、書面または電磁的方法による議決権行使を認める旨を定めた場合は、理事会設置・非設置を問わず社員総会の日の2週間前までに書面で通知を発しなければなりません(同条第1項ただし書・第2項第1号)。この場合は短縮のメリットが働かないため、招集の決定時点でどちらの設計を採るかを見極めておく必要があります。

社員全員の同意があれば、招集手続そのものを省略して社員総会を開くこともできます(一般法人法第40条)。ただし書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合は、この省略もできません(同条ただし書)。招集通知の記載事項や通知方法、普通決議・特別決議の要件など、社員総会に共通する手続の全体像は一般社団法人の社員総会の開き方|招集通知・決議要件・議事録の実務で解説しています。

議事録作成の負担軽減

社員総会を開催したときは、法務省令で定めるところにより議事録を作成し、主たる事務所に10年間備え置く義務があります(一般法人法第57条第1項・第2項)。

理事会設置法人の場合は、社員総会議事録に加えて「理事会議事録」も毎回作成し、出席した理事や監事の署名・押印をもらって10年間保管しなければなりません(招集手続・決議要件・議事録の詳細は一般社団法人の理事会運営|招集手続・決議要件・議事録の実務を参照)。理事会非設置法人であれば、そもそも理事会が存在しないため、理事会議事録の作成・管理にかかる事務負担やコストを省けます。


理事会非設置・設置の判断目安と移行手続き

これから法人を運営していくにあたり、理事会を置かないままでよいのか、あるいは理事会を設置すべきなのか、判断の目安と移行実務を解説します。

理事会を置くべきかどうかの判断目安

理事会非設置法人が向いているのは、以下のようなケースです。

  • 社員数が数名〜十数名程度と少なく、関係者の顔が見える規模である
  • 意思決定のスピードを最優先し、事務負担や役員報酬などのコストを最小限に抑えたい
  • 役員のなり手(特に理事3名、監事1名以上)を確保することが難しい

一方で、法人の規模が拡大し、会員(社員)数が数百人、数千人規模になると、すべての重要事項を社員総会で決議するのは現実的に不可能になります。また、対外的な信用力や、融資の獲得、行政からの委託事業への応募、民間財団からの助成金申請などの場面では、監事や理事会による相互牽制機能(ガバナンス体制)が整っている「理事会設置法人」であることが有利に働くケースが少なくありません。

ガバナンスに不安があるものの、役員数の確保が難しい場合は、理事会は置かずに「監事」のみを任意で設置し、理事の職務の執行を監査してもらう(一般法人法第99条第1項)という中間的な設計も有効な選択肢となります。監事の監査は、理事の業務執行の適法性のほか、計算書類・事業報告とこれらの附属明細書にも及びます(同法第124条第1項)。

後から理事会を設置する場合の実務フロー

事業の成長に伴い、理事会非設置法人から理事会設置法人へ移行する(またはその逆を行う)場合は、以下の手順に沿って定款変更と登記手続きを進めます。

理事会設置法人への移行実務フロー

1. 役員要件の充足

理事会を設置するには、理事が「3名以上」、監事が「1名以上」必要です。現在この人数に達していない場合は、新たに役員候補者を選定する必要があります。

2. 社員総会での特別決議

定款を変更し、「この法人に理事会を置く」旨の規定を追加します。また、必要に応じて監事の設置規定なども追加します。この定款変更は、社員総会の特別決議によって行います。特別決議の要件は「総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上に当たる多数」(一般法人法第49条第2項第4号、第146条)です。出席者数の要件ではなく、賛成する社員の頭数と議決権の両方を満たす必要がある点に注意してください。同時に、不足している理事や監事の選任決議も行います。

3. 理事会による代表理事の選定

理事会設置法人の代表理事は、理事会の決議によって選定しなければなりません(一般法人法第90条第3項)。新しく構成された理事会を開催し、代表理事を選定します。

4. 移行登記の申請

定款変更の効力発生日から「2週間以内」に、主たる事務所の所在地において以下の登記を申請します(一般法人法第303条)。

  • 理事会設置法人の定めの設定登記
  • 監事設置法人の定めの設定登記(監事を新たに置く場合)
  • 理事が3人未満だった場合は追加した理事の就任登記、および監事の就任登記
  • 理事会で選定した代表理事の就任登記
  • 各自代表でなくなった理事についての代表理事の退任登記

最後の「代表理事の退任」は忘れやすい項目です。各自代表だった理事は理事会設置に伴って代表理事としての地位を失うため、定めの設定登記と併せて、登記原因を「代表理事の退任」とする変更登記を申請しなければなりません。ただし、在任中に理事会設置の定めが設けられ、その理事会で引き続き代表理事に選定された理事については、登記事項に変更が生じないものとして扱われるため、代表理事の変更登記は不要です。

登録免許税は、理事会設置法人の定めの設定に3万円(登録免許税法別表第一第二四号(一)ワ)、監事設置法人の定めの設定に3万円(同号(一)ツ)、これらと同時に理事・代表理事・監事の就任または退任の登記をする場合はさらに1万円(同号(一)カ)です。したがって、監事も新たに置く場合は合計7万円、監事がすでに置かれている場合は合計4万円となります。

なお、逆に理事会設置法人から非設置法人へ戻す場合は、理事会設置法人の定めの廃止によって従前代表権を持たなかった理事が法律上当然に代表権を持つことになるため、登記原因を「代表権付与」とする代表理事の変更登記を併せて申請します。この場合は代表理事の選定行為も就任承諾もないため、選定に係る議事録や就任承諾書、それらに押印した印鑑に係る印鑑証明書は添付書面になりません。


まとめ

理事会を置かない一般社団法人の運営は、機動性と簡素な事務手続きが最大の魅力です。一般法人法第35条第1項が社員総会に幅広い決議権限を認めていることや、同法第76条第2項が理事の過半数による意思決定を可能にしていることを正しく活かせば、少人数での効率的な法人運営を実現できます。

一方で、各自代表の原則(一般法人法第77条第2項)による対外的な代表権のリスクや、理事決定書の作成・保管といった最低限のガバナンス手続きを怠ると、思わぬトラブルや登記手続きの遅延を招く原因になります。

自法人の現在の規模や将来の見通しに照らし、いまの機関設計が実情に合っているかを、定期的な定款や実務フローの点検を通じて確かめておきたいところです。機関設計の変更や、複雑な登記手続きの進め方について判断に迷う場合は、全国公益法人協会にご相談ください。法人の状況に応じて、適切な機関設計と登記実務をサポートいたします。


参考文献

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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