一般社団法人の計算書類|作成・監査・承認・備置きの実務

一般社団法人の計算書類|作成・監査・承認・備置きの実務

一般社団法人は、各事業年度ごとに計算書類と事業報告を作成し、機関設計に応じて監査や理事会承認を経たうえで、定時社員総会に提出または提供しなければなりません。計算書類は、税務申告のためだけの資料ではなく、社員、債権者、理事、監事が法人運営を確認するための基礎資料です。

決算作業というと、会計ソフトから出力した貸借対照表と損益計算書(活動計算書)を整える作業に目が向きがちです。しかし、一般社団法人の実務では、機関設計に応じた監査や理事会承認、社員総会への提出または提供、備置き、閲覧対応、公告までが一続きの手続きになります。どこか一箇所が抜けると、決算そのものは終わっていても、法人法上の決算手続は完了していない状態になります。

なお、一般法人法上、一般社団法人の計算書類は「貸借対照表及び損益計算書」とされています。一方、一般社団法人に一律に適用される特定の会計基準が定められているわけではなく、その行う事業に応じて、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従って会計処理を行います。公益認定を受けた公益社団法人が令和6年公益法人会計基準を適用する場合には、損益計算書に相当する計算書類を「活動計算書」と呼びます。本稿では、この関係を示すため「損益計算書(活動計算書)」と表記します。

また、法人税法上の非営利型法人が収益事業を行う場合には、収益事業に係る経理と、それ以外の事業に係る経理を区分する必要があります。このような非営利活動の実態を適切に表示するため、法人の目的、事業内容、将来の公益認定の予定などに応じて、公益法人会計基準などの非営利法人向け会計基準を採用または参考にすることが考えられます。

計算書類とは何か

貸借対照表・損益計算書(活動計算書)・事業報告の役割の違い

一般社団法人は、各事業年度に係る計算書類および事業報告、ならびにこれらの附属明細書を作成しなければなりません(一般法人法第123条第2項)。このうち計算書類とは、貸借対照表および損益計算書(活動計算書)をいいます。

貸借対照表は、事業年度末時点の資産、負債、純資産の状態を示す書類です。損益計算書(活動計算書)は、事業年度中の収益と費用を示し、活動の結果を明らかにします。事業報告は、会計数値だけでは表しきれない事業活動や法人運営の状況を説明する書類です。

計算書類および事業報告ならびに附属明細書は、電磁的記録で作成することもできます(一般法人法第123条第3項)。電子化自体は認められていますが、後述する備置きや閲覧請求に対応できる状態で保存する必要があります。単に担当者のパソコンに保存してあるだけでは、法人として管理しているとは言いにくいでしょう。

保存期間と作成直後の管理

計算書類等の保存と備置きの要点チェックリスト

一般社団法人は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類およびその附属明細書を保存しなければなりません(一般法人法第123条第4項)。

この10年保存の対象は、一般法人法第123条第4項上は計算書類およびその附属明細書です。会計帳簿は別途、閉鎖時から10年間保存する義務があります(一般法人法第120条第2項)。また、社員総会議事録にも保存義務があります(一般法人法第57条第2項)。根拠条文と対象は分けて理解しつつ、実務上は決算関係資料を年度ごとにまとめておくと、後日閲覧請求や金融機関対応があった際に、全体像をすぐに示せます。

実務では、法定保存義務の対象を区別したうえで、事業年度ごとにフォルダを分け、次の資料を一括管理しておくと便利です。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書(活動計算書)
  • 附属明細書
  • 事業報告
  • 監査報告(該当する場合)
  • 会計監査報告がある場合はその報告書
  • 理事会議事録(理事会設置法人の場合)
  • 定時社員総会議事録
  • 決算公告または公告に代わる措置の記録

この一式が揃っていれば、翌年度の比較、役員交代時の引継ぎ、金融機関への提出、社員からの確認依頼にも対応しやすくなります。

監事設置法人・会計監査人設置法人での監査

一般社団法人の決算手続の流れ(作成・監査・承認・備置き・公告)

監事設置一般社団法人では、計算書類、事業報告、附属明細書について監事の監査を受けなければなりません(一般法人法第124条第1項)。

会計監査人設置一般社団法人では、計算書類およびその附属明細書について監事と会計監査人の監査を受け、事業報告およびその附属明細書について監事の監査を受けます(一般法人法第124条第2項)。会計監査人は会計の専門的監査を担いますが、監事の役割がなくなるわけではありません。

さらに理事会設置一般社団法人では、監査を受けた計算書類、事業報告、附属明細書について理事会の承認を受けなければなりません(一般法人法第124条第3項)。決算スケジュールを組む際は、単に総会日だけを決めるのではなく、監事監査の日、会計監査人との調整日、理事会承認日、総会招集通知発送日を逆算する必要があります。

定時社員総会での承認と報告

計算書類を確認する理事・監事・社員・債権者の関係図

理事は、法人の機関設計に応じて、計算書類および事業報告を定時社員総会に提出または提供しなければなりません(一般法人法第126条第1項)。そして、提出または提供された計算書類は、原則として定時社員総会の承認を受ける必要があります(同条第2項)。事業報告の内容は、定時社員総会に報告します(同条第3項)。

会計監査人設置一般社団法人については、一定の要件を満たす場合、計算書類の社員総会承認を要せず、内容を報告すれば足りる特則があります(一般法人法第127条)。ただし、この特則は会計監査人がいるだけで自動的に使えるものではなく、法務省令上の要件に該当することが前提です。

多くの一般社団法人では、定時社員総会で「計算書類承認の件」として議案化し、事業報告は報告事項として扱う形が基本になります。総会議事録には、どの計算書類が提出され、どのような決議で承認されたかを明確に残しておくことが大切です。

社員への提供と招集通知

理事会設置一般社団法人では、理事は定時社員総会の招集通知に際して、社員に対し、理事会承認を受けた計算書類および事業報告、監査報告を提供しなければなりません。理事会設置一般社団法人が会計監査人設置法人でもある場合には、会計監査報告も含まれます(一般法人法第125条)。

このため、理事会設置法人では、招集通知を出す時点で決算書類と監査報告が揃っていなければなりません。総会当日に配布すれば足りるという感覚では、手続きの順序を誤ることになります。

決算資料は、数字の正確性だけでなく、社員が総会前に判断できる状態で提供されることに意味があります。資料が直前まで固まらない法人では、決算作業そのものよりも、監査・理事会承認・招集通知の締切管理を見直す必要があります。

備置きと閲覧請求への対応

一般社団法人は、計算書類等を、定時社員総会の日の1週間前の日から5年間、主たる事務所に備え置かなければなりません。理事会設置一般社団法人では、この期間は定時社員総会の日の2週間前の日からとなります(一般法人法第129条第1項)。

従たる事務所がある場合には、計算書類等の写しを、同じ起算日から3年間、従たる事務所に備え置く必要があります(一般法人法第129条第2項)。電磁的記録で作成し、従たる事務所で閲覧等に応じるための措置をとっている場合には、写しの備置きが不要となる場合もあります。

社員および債権者は、法人の業務時間内であれば、計算書類等の閲覧や謄本・抄本の交付等を請求できます(一般法人法第129条第3項)。この制度は、法人の透明性を確保するためのものです。閲覧請求があってから資料を探すのではなく、どの場所で、誰が、どの資料を、どの手順で閲覧に供するかを決めておく必要があります。

決算公告との関係

計算書類の手続きは、決算公告ともつながります。一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければなりません。大規模一般社団法人では、貸借対照表に加えて損益計算書(活動計算書)も公告対象になります(一般法人法第128条第1項)。

官報や日刊新聞紙への掲載は費用がかかるため、設立直後の一般社団法人には負担になりやすい方法です。定款で公告方法を定める際には、主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法を選ぶことが考えられます。この方法では掲載費用はかかりませんが、貸借対照表の全文を1年間継続して掲示し、公衆が実際に閲覧できる状態を確保する必要があります。

公告方法ごとの違いや具体的な手続きについては、一般社団法人の決算公告|貸借対照表の公告義務・方法・怠った場合の過料で詳しく解説しています。

一般社団法人の計算書類は、会計担当者だけが扱う資料ではありません。理事は作成と提出の責任を負い、監事は監査を行い、社員は承認や閲覧を通じて法人運営を確認します。決算書を作ること、監査を受けること、総会で承認を得ること、備置きと公告を行うこと。この一連の流れを毎年同じ品質で回すことが、法人の信用を支える基本になります。

計算書類の作成、会計基準の選択、監査や社員総会までの進め方などでお困りのことがあれば、全国公益法人協会にご相談ください。法人の状況に応じて、適切な決算実務と円滑な法人運営をサポートいたします。

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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