はじめに

 現行の公益法人会計基準(20年基準)の適用範囲は、公益認定法第2条第3号に定めのある公益法人や整備法第123条第1項に定めのある移行法人などとなっており、現在それら以外の一般社団・財団法人(以下、「一般法人」という。)に対する会計基準は存在していない。
 このような状況下、公益社団法人非営利法人研究学会は、2017年9月4日に新設の一般法人や公益目的支出計画を終了した一般法人が、公益法人会計基準を適用する場合に如何なる問題が存在するかを洗い出し、どのような改善策を講じることが可能かを調査・研究すべく、「一般法人への公益法人会計基準の適用に関する研究委員会」(以下、「本研究会」という。)を設置し、検討することとした。
 本研究会の成果物として、当初は2019年開催の第23回全国大会で「一般法人会計基準案」を公表することを目指し検討を始めたのであるが、途中、日本公認会計士協会から「非営利組織における財務報告の検討(財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案)」(以下、「モデル会計基準」という。)が公表されたこともあり、1年後の第24回全国大会に公表時期を延期して、当初なかったモデル会計基準を俎上に挙げて検討を続けることとなった。ところが検討が佳境となった時期に新型コロナウイルス感染症による行動制限がかかってしまい、集まっての検討会を開催することができなくなったことは想定外であった。
 特にモデル会計基準は、資産の部と純資産の部の取り扱いが公益法人会計基準と比較して大きく異なっており、この点につきどちらの考え方を一般法人会計基準に採用すべきかについては、本研究会でも意見が鋭く対立したところである。その一方で新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中で、報告書の取りまとめをメールにより行うことを余儀なくされたことから、本研究会の構成員の知見が十分に反映されていない可能性があり、もし新型コロナウイルス感染症がなかったならば、結論は同じであるが、より深く考察された報告書が出来たものと考えている。
 本研究会としては、一般法人会計基準案では、モデル会計基準と公益法人会計基準に差異がある場合には、可能な限りモデル会計基準を取り入れることを基本方針とし、例えば資産の部の特定資産についてはモデル会計基準と同様に注記による開示とした。しかしながら純資産の部については、寄附者の意思を尊重してそれのみを拘束純資産とする考え方を維持することが、一般法人会計基準がより現場で受け入れ可能となると判断し、現行の公益法人会計基準の取扱いと同じになるようにした。
 本報告書は、厳密な意味での会計基準の存在しない一般法人の関係者に広く利用され、今後一般に公正妥当と認められる「一般法人会計基準」となることを期待して公表するものである。
 公表に当たって、研究会の構成員の方々及び事務局の皆様のご尽力に心より感謝申し上げたい。

 令和2年9月4日

一般法人会計研究委員会委員長 髙山昌茂

 

⇨「一般社団・財団法人会計基準案」(略称「一般法人会計基準案」)の策定経緯
⇨一般法人会計基準(案)