一般社団法人で給料・役員報酬は受け取れるか|非営利型と普通型の違い・社会保険まで

一般社団法人で給料・役員報酬は受け取れるか|非営利型と普通型の違い・社会保険まで

一般社団法人における役員報酬や従業員給料の支給は、非営利法人であっても法的に認められています。ただし、法人の区分(普通型・非営利型)や役員の構成によって、税務上の損金算入ルールや非営利型要件の維持基準が大きく異なります。本記事では、適正な報酬・給料の決定手続きから、社会保険の適用実務まで、法人が遵守すべきポイントを解説します。

「非営利」という言葉の響きから、一般社団法人では役員報酬や給料を受け取ってはいけないのではないか、という疑問を抱く実務担当者は少なくありません。ボランティア活動のように無償で奉仕する必要があるというイメージが先行しがちですが、これは明らかな誤解です。

一つの比喩で考えてみたいと思います。非営利の公共図書館を建設するからといって、そこで働く大工や設計士が無償で働く必要はありません。それと同様に、一般社団法人が掲げる目的が非営利であっても、その運営や実務を担う人々に対して、労働や職務の正当な対価を支払うことは当然の権利であり、法人の存続にとっても不可欠な要素です。

明治29年の民法制定以来、我が国の公益法人制度は主務官庁の許可制という厳しい統制下にありました。しかし、平成20年の公益法人制度改革により、法人格の取得と公益性の判断が分離され、登記のみで簡便に設立できる一般社団法人制度が創設されました。この改革の根底には、民間非営利部門の活動を促進し、多様な社会ニーズに柔軟に対応するという狙いがあります。正当な対価としての報酬や給料の支給は、この民間活動を支える基盤そのものと言えます。

「非営利」の誤解と役員報酬・給料の法的根拠

ippan-shadan-yakuin-houshu 解説図

一般社団法人における「非営利」とは、利益を上げてはならないという意味ではなく、上げた利益を「剰余金の分配(配当)」として出資者や社員に分け合ってはならないという意味です。

株式会社であれば、事業で得た利益を株主へ配当という形で還元できます。これに対して一般社団法人は、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めを置いても、その定めは効力を有しません(一般法人法第11条第2項)。法人内部でどう用いるか(事業費・人件費・積立など)は経営判断に委ねられますが、剰余金として社員に配当する形での外部流出は制度上できない仕組みです。

一方で、役員報酬や従業員給料は、剰余金の分配ではなく、法人の業務を執行したこと、あるいは労働を提供したことに対する職務・労働の対価です。したがって、これらを支払うことは法的に何ら問題ありません。

一般社団法人の役員(理事及び監事)に報酬を支払う場合の法的根拠は、一般法人法第89条に定められています。同条では、役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として法人から受ける財産上の利益について、定款にその額を定めていないときは、社員総会の決議によって定めることとされています。これは、役員が自らの報酬を自由に決める「お手盛り」を防止し、法人のガバナンスを維持するための重要な規定です。

また、従業員(職員)に対する給料は、労働契約に基づく労働の対価であり、労働基準法などの労働法規に従って適正に支払われます。役員報酬のような定款や社員総会による個別決議は法律上義務付けられていませんが、法人の予算管理やガバナンスの観点から、給料を支給するための給与規程を整備することが一般的です。

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普通型と非営利型における役員報酬の税務上の違い

一般社団法人には、税法上の区分として「普通型(課税対象が全所得)」と「非営利型(非収益事業は非課税)」の2種類が存在します。この区分により、役員報酬の税務上の取り扱いは大きく異なります。

普通型一般社団法人の場合、税制上は株式会社などの営利法人とほぼ同様に扱われます。そのため、役員報酬を法人の経費(税法上の損金)に算入するためには、法人税法に定める役員給与のルールを厳格に遵守しなければなりません。

具体的には、毎月同じ額を支給する「定期同額給与」や、事前に支給時期と支給額を税務署に届け出てその通りに支給する「事前確定届出給与」の要件を満たす必要があります。これらの要件から外れた役員報酬(例えば、期中に不規則に増減させた報酬や、事前の届出なしに支給した役員賞与)は、損金不算入となり、法人税の課税対象となってしまいます。

一方、非営利型一般社団法人の場合は、法人税法上で定められた34の業種(収益事業)から生じた所得にのみ課税され、会費や寄付金、補助金などを財源とする「非収益事業(本来事業)」から生じた所得には課税されません。

この非営利型における役員報酬の税務処理では、まず「区分経理」が前提となります。役員が収益事業と非収益事業の両方に関わっている場合、その役員報酬はそれぞれの事業に合理的な基準で按分(配賦)しなければなりません。

実務上、この按分基準としては、各事業への「従事割合(勤務時間や業務量の比率)」などが用いられます。収益事業に按分された役員報酬については、普通型と同様に定期同額給与などの損金算入要件を満たす必要があります。これに対し、非収益事業に按分された役員報酬については、そもそも非収益事業自体が非課税であるため、税法上の「損金」という概念自体が適用されません。

ただし、非収益事業から支払うからといって、定期同額給与のルールを無視してよいわけではありません。期中に報酬額を頻繁に変更するような処理は、法人のガバナンスを疑われる原因となり、後述する「特別の利益供与」とみなされるリスクを高めます。非収益事業であっても、定期同額給与に準じた一貫性のある支給を行うことが実務上極めて重要です。

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非営利型要件の喪失を防ぐ「親族等3分の1以下」と特別の利益供与制限

非営利型一般社団法人のステータスを維持するためには、税法上の厳しい要件をクリアし続けなければなりません。特に役員報酬や給料の支払いにおいて、最も注意すべきなのが「理事の親族制限」と「特別の利益供与の禁止」です。

非営利型一般社団法人(特に非営利性が高い「非営利徹底型」や、会員への利益還元を目的としない「共益的活動型」)では、各理事について、理事自身と配偶者、および3親等以内の親族などの合計数が、理事総数の3分の1以下でなければならないという要件があります(法人税法施行令第3条)。

この「3分の1以下」というルールは、特定のファミリーや身内だけで法人を私物化することを防ぐためのものです。例えば、理事が3人の場合、その中に親族が2人以上含まれていると、この要件を満たさなくなります。親族を理事に就任させて報酬を支払うこと自体は不可能ではありませんが、全体の人数構成を常に監視し、3分の1以下に抑える必要があります。

さらに、親族を理事や従業員として雇用して給料を支払う際、実務上の大原則となるのが「特定の個人に対して特別の利益を与えないこと」という要件です。

税務調査において、以下のような支給実態があると「特別の利益供与」と判定される可能性が極めて高くなります。

  • 業務実態がほとんどない「名ばかり役員」や「名ばかり職員」である親族に対して、継続的に報酬や給料を支払っている場合
  • 同規模・同業種の一般的な法人水準や、本人の職務内容と比較して、不当に高額な役員報酬や給料を設定している場合

もし税務署から「特別の利益供与」があったと認定された場合、その法人は非営利型の要件を喪失し、普通一般法人(特定普通法人)へと移行させられます。このペナルティによる税負担は甚大です。それまで非課税だった会費や寄付金、補助金を含む「すべての所得」に対して、過去に遡って法人税が課されることになります。

このような事態を防ぐためには、親族へ報酬や給料を支払う場合、単に人数合わせの要件をクリアするだけでなく、本人がどのような業務に従事しているかを示す「業務実態の証拠」を確実に残しておく必要があります。勤務実態を記録したタイムカードや業務日報、理事会への出席を示す議事録、作成した成果物などを適切に保管し、いつでも説明できる体制を整えておかなければなりません。

役員報酬・給料を決定する実務手続きとガバナンス

一般社団法人で役員報酬や従業員給料を支給するにあたっては、客観的な算定基準と、法的な決定手続きを経ていることを証明するガバナンス体制が不可欠です。

先述の通り、一般社団法人の役員報酬は、一般法人法第89条に基づき、定款または社員総会の決議によって決定します。実務上は、定款に具体的な金額を書き込むと、報酬額を変更するたびに定款変更の手続き(社員総会の特別決議)が必要になり煩雑なため、社員総会で「役員報酬の総額(上限額)」を決議し、その範囲内での各役員への具体的な配分については理事会(理事会非設置法人の場合は理事の過半数の一致)に一任する、という方法が広く採用されています。

この手続きを進める際、社員総会の議事録には以下のような内容を明確に記録しておく必要があります。

  • 役員報酬の総額(例:理事全員の報酬総額は年額3,000万円以内、監事全員の報酬総額は年額500万円以内とする)
  • 個別配分の決定方法(例:各理事への具体的な配分額については、理事会に一任する)

また、役員が退任する際に支払う「役員退職慰労金」についても、同様に社員総会の決議が必要です。実務上は、あらかじめ「役員退職慰労金規程」を整備して社員総会で承認を得ておき、実際の支給時にはその規程に基づいて算定された額を、社員総会の決議を経て支給する流れをとることで、透明性と根拠を担保できます。

従業員の給料については、労働基準法に基づき、賃金台帳や出勤簿を整備し、就業規則や給与規程に則って客観的に算定・支給します。特に、役員の親族を従業員として雇用する場合は、他の一般従業員と同等の基準(勤務時間、職務内容、能力など)で給料が決定されていることを、給与規程や人事評価制度などを通じて客観的に説明できるようにしておくことが、特別の利益供与と疑われないための最大の防衛策となります。

役員と従業員の社会保険・労働保険の適用実務

一般社団法人であっても、人を雇って運営する以上、社会保険や労働保険の加入義務が発生します。これは営利法人と全く同じルールが適用されます。

まず、健康保険と厚生年金保険(社会保険)についてです。一般社団法人は、役員や従業員の人数にかかわらず、設立と同時に「常時1人以上の被用者を使用する事業所」として社会保険の強制適用事業所となります。

代表理事や常勤理事などの役員は、法人から役員報酬を受け取っており、かつ「常勤性」があると判断される場合、社会保険への加入義務が生じます。非常勤の理事であっても、法人の運営実務に深く関与し、定期的に一定以上の報酬を得ている場合は、年金事務所による総合的な判断(勤務実態や報酬額など)に基づき、加入を求められるケースがあります。

次に、雇用保険と労災保険(労働保険)についてです。労働保険は、原則として「労働者(従業員)」を対象とする制度です。そのため、法人の役員である理事や監事は、原則として労働保険の対象外となります。

ただし、実務上よく見られる「理事兼職員(兼務役員)」の場合は取り扱いが異なります。理事としての職務だけでなく、一従業員(職員)としての業務(例えば、事務局長としての実務など)を兼務しており、以下の要件を満たす場合は、雇用保険の被保険者となることができます。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること
  • 役員報酬(職務執行の対価)よりも、労働対価(従業員としての給料)の比率が高いなど、労働者としての実態が上回っていること

兼務役員を雇用保険に加入させる場合、ハローワークに対して「兼務役員雇用実態証明書」などの書類を提出し、労働者としての実態(就業規則の適用、タイムカードによる勤怠管理、給料の支払実績など)を証明する必要があります。

なお、労災保険についても原則として役員は対象外ですが、労働者としての実態がある兼務役員については、労働者としての業務中に発生した事故に限り、労災保険の適用を受けられる場合があります。また、一般社団法人の規模がサービス業で常時使用する労働者数が100人以下などの要件を満たす場合は、中小事業主等の特別加入制度を利用して、役員自身も労災保険に加入することが可能です。

一般社団法人における役員報酬や給料の支給は、適正な手続きと実態の証明が伴って初めて、法的に、そして税務上も健全に認められます。「非営利だから」と委縮する必要はありませんが、普通型と非営利型それぞれのルールを正しく理解し、ガバナンスを効かせた運営を行うことが、法人の社会的信用を守ることに繋がります。

特に、非営利型要件の維持や、親族への報酬支給に伴う「特別の利益供与」の判定、収益事業と非収益事業における役員報酬の按分計算などは、実務上極めて判断が難しい領域です。手続きや税務処理に少しでも不安がある場合は、法人の健全なガバナンス体制を維持するためにも、全国公益法人協会にご相談ください。豊富な実務ノウハウをもとに、貴法人の状況に合わせた最適な運営を支援いたします。

監修者Profile
監修者イラスト
桑波田直人(くわはた・なおと)
(一財)全国公益支援財団専務理事、(株)全国非営利法人協会(全国公益法人協会)専務取締役、(公社)非営利法人研究学会常任理事。 『公益・一般法人』編集長、非営利法人研究学会事務局長等を経て現職。AIチャット「全国公益AIナビ」開発者、全国公益法人協会AI駆動自動化委員会委員長。編著に『新訂版 公益法人・一般法人の機関と運営』、『非営利用語辞典』。

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