2025年(令和7年)4月1日に施行された改正公益認定法で、使途不特定財産額から差し引ける「控除対象財産」は1号財産から6号財産までの6区分に改めて整理されました。旧制度の遊休財産規制の時代から号番号で呼ばれてきた区分ですが、番号の並びと中身がともに変わっています。とりわけ質問が集まるのは6号財産の指定寄附資金で、寄附者が使途を定めた資金を1号財産と6号財産のどちらに置くのか、そこから生じた利息や配当をどう扱うのかが判断の分かれ目になります。6つの区分を戦国大名の領地に見立てると、それぞれの性格と、6号財産だけに付く掟が見えてきます。
筆者は大河ドラマファンで毎年欠かさず観ています。2026年放送の『豊臣兄弟!』は、兄の秀吉を支えた羽柴秀長が主人公です。秀長の死後、郡山城には多くの金銀が残されていたと伝えられます。その具体的な使途は、今回確認した資料からは分かりません。ただ、大きな蓄えの存在は、「財産をどれだけ持っているか」と「何のために持っているか」は別の問いだと考えるきっかけになります。
そこで本記事では、控除対象財産を戦国時代になぞらえて解説したいと思います。公益法人を1つの国と考えてみてください。国の財産のうち、使い道が定まっていて動かせない領地を6人の大名が治めている。どの大名の領地にも属さない蓄えが使途不特定財産で、これは1年分の公益目的事業費相当額までしか抱えられません。6人は、いずれもこのドラマの主な登場人物から選びました。寧々だけは大名ではありませんが、城を預かる者として1人に数えます。
「寄附者から『この事業に使ってほしい』と託された預金は、1号財産ですか、6号財産ですか」。収益事業等を行わず、公益法人の事務局から、こうした問いが繰り返し寄せられます。内閣府のFAQ自身が「いわゆる1号財産又は6号財産」という言い方をしているとおり(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤)、「1号財産」「6号財産」は法令上の用語ではなく、施行規則の号番号に由来する通称です。通称であるだけに、番号と中身のずれがそのまま誤解につながります。
使途不特定財産規制のなかでの控除対象財産の位置
控除対象財産は、公益法人の財務基準の1つである使途不特定財産額を計算するときに資産の額から差し引く財産です。まずこの位置づけだけを押さえます。
使途不特定財産とは、公益目的事業にも、公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務や活動にも現に使用されておらず、引き続き使用される見込みもない財産をいいます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益認定法」といいます)第16条第2項)。法人が使い道の定まらない財産を過大に抱え込まないよう、毎事業年度末の使途不特定財産額には上限が設けられています(公益認定法第16条第1項)。
使途不特定財産額は、資産の額から、負債の額と、控除対象財産の帳簿価額の合計額から対応負債の額を控除した額と、公益目的事業継続予備財産の額を差し引いて求めます(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下「公益認定法施行規則」といいます)第36条第2項)。負債の額には基金を含めます。公益目的事業継続予備財産は改正で新設された控除項目で、災害などの予見し難い事由に備えて保有する公益目的事業財産ですが、要件と公表義務を伴う別の論点なので、ここでは名称にとどめます。
上限は「1年分の公益目的事業費相当額」で、原則として当該事業年度の開始の日前5年以内に開始した各事業年度の平均額を基準にします(公益認定法施行規則第34条第1項)。改正前は判定年度そのものの事業費が基準でしたが、平均を取るようになっただけで、5年分に増えたわけではありません。郡山城の金銀にたとえた、どの領地にも属さない蓄えは、この上限までしか抱えられないということです。
収益事業等を行わず、区分経理の適用除外(公益認定法第19条第1項ただし書)を受けている法人でも、この計算が免除されるわけではありません。法人全体の貸借対照表の数値をそのまま算式に当てはめます。
控除対象財産の6区分の全体像
控除対象財産は、事業年度末に法人が有する財産のうち、次の6つのいずれかに当たるものです(公益認定法施行規則第36条第3項)。引当金に係る支出に充てるために保有する資金は除かれます。6つの区分に、それぞれ領地を預かる人物を1人ずつ当てはめます。
| 通称 | 名称 | 旧制度での通称と名称 | 一言でいえば | 見立てる人物 |
|---|---|---|---|---|
| 1号財産 | 公益目的保有財産 | 旧1号財産(公益目的保有財産)と旧5号財産(交付者の定めた使途に従って使用・保有する財産)の一部 | 公益目的事業に使い続ける財産 | 織田信長 |
| 2号財産 | 法人活動保有財産 | 旧2号財産(収益事業等その他の業務・活動の用に供する財産)と旧5号財産の一部 | 収益事業等や法人運営に使い続ける財産 | 寧々 |
| 3号財産 | 公益充実資金 | 旧3号財産(資産取得資金)・旧4号財産(特定費用準備資金)のうち公益目的事業に係る部分 | 公益目的事業の将来のために積み立てる資金 | 豊臣秀吉 |
| 4号財産 | 資産取得資金 | 旧3号財産(資産取得資金)の残り | 法人活動保有財産を取得・改良するための資金 | 蜂須賀小六 |
| 5号財産 | 特定費用準備資金 | 旧4号財産(特定費用準備資金)の残り | 公益目的事業以外の将来の活動のための資金 | 徳川家康 |
| 6号財産 | 指定寄附資金 | 旧6号財産(交付者の定めた使途に充てるために保有する資金) | 寄附者が使途を定めた資金(果実を除く) | 豊臣秀長 |
表で目を引くのは3号財産から5号財産です。旧3号財産の資産取得資金は新4号財産、旧4号財産の特定費用準備資金は新5号財産になり、名称が1つずつずれました。番号だけで話すと取り違えるため、本文では「3号財産(公益充実資金)」のように番号と名称を併記します。
もう1つの変化は判定の考え方です。改正前は、認定後に寄附で取得した財産は、法人が公益目的に使うと定めた場合などを除いて公益目的保有財産になりませんでした。改正後は取得の時期ではなく財産の性質に着目して区分します(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤注)。旧5号財産(交付者の定めに従って使用している現物の財産)が規則から消えたのもこの整理の一環で、使途に応じて1号財産か2号財産に振り分けます。
1号財産から5号財産までを順に読む
1号財産 公益目的保有財産
1号財産(公益目的保有財産)は、織田信長としました。 信長は安土に城を築き、天下布武の本拠として使い続けました。本来の務めのために築き、使い続ける財産、それが1号財産です。城を売って蓄えに変えてしまえば、もう本領ではない。
条文に戻ります。1号財産は、継続して公益目的事業の用に供する公益目的事業財産です(公益認定法施行規則第36条第3項第1号)。公益目的事業財産は、公益目的事業のために受け入れた寄附金や補助金、事業収入などから成る財産で、公益目的事業に使用しなければなりません(公益認定法第18条)。そのうち事業に使い続けるもの、たとえば事業に使う建物や土地、取り崩さずに運用して果実を事業財源に充てる基本財産が1号財産に当たります。
寄附者が「この財産の運用益を〇〇事業に充ててほしい」と定めた財産も、元本を継続して事業のために使うものなので、通常は1号財産に整理します(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤①)。6号財産ではありません。「年貢を事業に充てよ」と定めのついた財産が、信長の領地に加わる形です。この判定は6号財産の節であらためて取り上げます。
注意したいのは、運用目的の金融資産から生じた果実です。元本は1号財産に該当しても、果実は継続して使用する性質の財産ではないため、1号財産には該当しません。果実の扱いは6号財産だけの論点ではないということです。
2号財産 法人活動保有財産
2号財産(法人活動保有財産)は、寧々としました。 寧々は秀吉が戦に出ている間の城と家中を預かり、のちに大名となる少年たちを育てたと伝えられます。前線ではないが、無ければ本領の務めが回らない屋敷や道具。それが2号財産です。
2号財産は、公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務や活動の用に継続して使用する財産です(公益認定法施行規則第36条第3項第2号)。収益事業等の設備、法人運営に使う事務所や什器がここに入ります。収益事業等を行わない法人でも、法人運営に継続して使う財産があれば2号財産の対象です。
「継続して使用する」の考え方は1号財産と同じで、複数年度にわたって保有し続けることが想定される固定資産が基本的な姿です。旧5号財産のうち、交付者の定めに従って法人運営や収益事業等に使い続けている現物は、ここに振り分けます。
3号財産 公益充実資金
3号財産(公益充実資金)は、豊臣秀吉としました。 秀吉は大坂に天下の城を築くと掲げ、諸国から石と人を集めたことで知られます。将来の事業を掲げて蓄える資金が3号財産です。ただしこの大名には掟がある。何のためにいくら蓄えたかを国中に公表し、蓄えは上限を超えてはならず、掲げた目的以外に使うなら特別の手続を踏む。
3号財産の公益充実資金は改正で新設された区分です。改正前は、公益目的事業に係る資産取得資金と特定費用準備資金を別々に積み立てていましたが、この2つが統合されました。根拠は中期的収支均衡を定める公益認定法第14条と、要件を定める公益認定法施行規則第23条第1項です。
公益充実資金として認められるには、公益目的事業に係る将来の特定の活動の実施、または将来の特定の公益目的保有財産の取得・改良に充てる資金として積み立てること、活動ごとの内容と実施時期、積立限度額とその算定根拠、当期の積立額と取崩額などを事業年度終了後に速やかに公表していること、目的外に取り崩す場合の特別の手続を定めていること、期末の額が積立限度額以下であること、財産目録や貸借対照表などで他の資金と区分して表示していることの5つをすべて満たす必要があります。旗印を掲げ、国中に公表するという掟は、この要件のことです。
3号財産は、6号財産を読むときにも登場します。指定寄附資金から生じた果実を控除対象財産にしたいとき、その受け皿になるのが公益充実資金だからです。
4号財産 資産取得資金と5号財産 特定費用準備資金
4号財産(資産取得資金)は、蜂須賀小六としました。 小六は川並衆を率いて、墨俣に砦を築く秀吉を助けたと伝えられます。建てる砦が決まっているからこそ、材木を先に集めておける。そのための蓄えが4号財産です。
4号財産の資産取得資金は、法人活動保有財産の取得または改良に充てるために保有する資金で、その取得に要する支出の最低額に達するまでの部分に限られます(公益認定法施行規則第36条第3項第4号)。公益目的保有財産の取得のための積立ては3号財産(公益充実資金)に移ったため、対象が法人活動側に限定されました。
5号財産(特定費用準備資金)は、徳川家康としました。 家康は時期を見定めて周到に備える人物として語られます。決まった出陣、すなわち公益目的事業以外の特定の活動のために、時期と規模を見定めて蓄える資金が5号財産です。出陣の当ても無く蓄えるだけでは、この大名の領地にはならない。
5号財産の特定費用準備資金は、将来の特定の活動の実施のために特別に支出する費用に充てる資金で、公益目的事業に係るものは除かれます(公益認定法施行規則第31条第1項)。積立限度額に達するまでの部分が控除対象です(公益認定法施行規則第36条第3項第5号)。
旧制度で「3号財産の資産取得資金」「4号財産の特定費用準備資金」と呼んでいたものが、いまは4号財産と5号財産です。旧制度の号番号で作られた社内の規程やチェック表が残っていれば、名称のずれを確認しておく必要があります。
6号財産 指定寄附資金――質問の最も多い区分
6号財産(指定寄附資金)は、豊臣秀長としました。 秀長は兄から但馬や大和の領国を預かり、指図どおりに治めた律儀者として伝えられます。秀吉から「この戦に使え」と預けられた軍資金を守る大名が6号財産です。預かり物には3つの掟がある。第1に、預けた側の指図どおりに使うこと。第2に、預かり物が生んだ年貢は預かり物ではないこと。第3に、預かったまま眠らせないこと。ここでの見立ては、秀長自身の金銀の使途を示すものではありません。財産をどれだけ持っているかだけでなく、誰が何のために使途を定めたのかを確かめることが、この区分を考える出発点です。3つの掟は、そのまま条文と運用の要件に対応しています。
6号財産の定義と3つの要件
6号財産の指定寄附資金は、寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に充てるために保有している資金です。施行規則は、この定義に「当該資金から生じた果実を除く」という括弧書きを付けています(公益認定法施行規則第36条第3項第6号)。
条文から読み取れる要件は3つです。第1に「資金」であること。ガイドラインは、金銭や預金のほか有価証券などの金融資産を含むとしています。寄附で受けた建物や土地を、その使途に従ってそのまま使い続けるなら、資金ではなく1号財産か2号財産の問題です。第2に、交付者の定めた使途に充てるために保有していること。公益目的事業のための寄附なら「公益目的事業に充てるため」と分かれば足り、法人運営のための寄附なら管理費のためといった指定が必要です。第3に、果実を含まないこと。
条文には現れないものの、ガイドラインは、指定寄附資金が控除対象財産として正当に位置付けられるには、相当の期間内に費消される見込みがあることを求めています。相当の期間は交付者の意思や使途の内容、財産の規模によって変わり一律には定められませんが、取得後10年を目安として、長期に使われず理由も明らかでない場合には、行政庁が報告徴収により説明を求めることがあり得るとされています(公益認定等ガイドライン第5章)。法令の文言ではなく行政庁の運用上の目安ですが、実務ではこの10年が意識されます。預かったまま眠らせない、という3つ目の掟がこれです。
なぜ6号財産を改めたのか――寄附資金を事業で生かすため
6号財産の改正の背景には、寄附を原資とする果実が、公益目的事業に使われないまま積み上がってしまうという懸念がありました。『制度趣旨からわかる!令和6年公益法人会計基準 完全ガイド』は、旧制度でも果実を6号財産に含めるには一定の期間内に費消するという制限があったものの、使途の制約がいつ解除されるかが明確でないなどの課題があったことを説明しています(同書第4章、110〜111頁。内閣府「公益法人会計基準の検討経過」も参照)。
そこで、寄附として受け入れた財産と、受入れ後の運用で生じた果実を区別し、果実を6号財産から除くことにしました。会計上も、指定純資産を原資とする果実を一般純資産の収益に計上する整理につながっています。将来の公益目的事業に使う果実は、公益充実資金の要件を満たして積み立てることができます。使う目的や時期、必要額を明らかにし、事業の実施につなげることが、この見直しの意義です。
同書は、指定寄附資金の受入年度別残高や使用見込みの注記にも、寄附資金の死蔵を防ぐ狙いがあると説明しています(同書第4章、112〜113頁)。いつ受け入れた資金がどれだけ残り、今後いつ何に使うのかを示すことで、費消を促します。果実の区分の見直しと開示の充実は、寄附者の意思を事業として実現していくための仕組みとして、併せて捉えると分かりやすくなります。
1号財産か6号財産か――元本を費消するかで分ける
寄附者の使途指定がある財産をどちらに置くかは、寄附で受けた財産そのものを使い切るかどうかで分けます(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤)。信長の領地に置くか、秀長の預かり物にするかの分かれ目です。
| 寄附者の定め | 区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 元本は取り崩さず、運用益を〇〇事業の財源に充てる | 1号財産(公益目的保有財産) | 元本を継続して公益目的事業のために使うことになる |
| 元本を取り崩して〇〇事業の財源に充てる | 6号財産(指定寄附資金) | 残っている元本は、定めた使途に充てるために保有している資金に当たる |
| 運用しつつ、果実と併せて元本も取り崩し、最終的に全て費消する | 6号財産(指定寄附資金) | 財産自体を費消することが前提になっている |
運用益充当型を1号財産にする整理は、改正前の「認定後に取得した財産は原則として公益目的保有財産にならない」という取扱いから変わった点です。運用益充当型であっても、寄附者が「必要に応じて公益目的事業に充てるために取り崩すことができる」と定めて指定純資産として受け入れた財産は、公益目的保有財産として扱い、指定寄附資金と同様の情報開示を行うことがガイドラインで示されています。
内閣府のFAQも、実際には多種多様な事例があり、この考え方が直接当てはまらない場合には個々の事例に即して判断すると断っています。判断に迷う財産は、寄附者の定めの文言を手元に置いて、元本を使い切る前提かどうかから確認するのが近道です。
果実の扱い――何もしなければ使途不特定財産に入る
1号財産や6号財産から生じる運用益は、寄附により受け入れた財産そのものではないため、1号財産にも6号財産にも該当せず、一般純資産に計上されます(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤)。控除対象財産に入らない以上、他の手当てをしなければ使途不特定財産額に加わります。指定寄附資金の残高が大きい法人ほど、毎年の利息や配当が使途不特定財産額を押し上げていく構造です。
預かり物が生んだ年貢は預かり物ではない、という2つ目の掟がこれです。年貢は自分の蔵に入るが、使い道を決めなければ、どの領地にも属さない蓄えに数えられてしまう。
果実を控除対象財産にしたい場合は、3号財産(公益充実資金)として積み立てることが考えられます。果実について寄附者の使途指定があるなら、それに沿った公益充実資金の目的設定が必要です。公益充実資金の要件である積立限度額と公表を満たすことが前提になります。
改正前に受け入れた財産から生じた果実には経過的な取扱いがあります。施行前に、寄附者からの使途指定があり相当の期間内に費消される見込みがあるものとして旧6号財産に区分していた果実は、引き続き指定寄附資金に区分できますが、相当の期間内に費消する必要があります(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑤、公益認定等ガイドライン第5章)。ただし、「相当の期間内に費消することが見込まれる」という制約は2019年3月25日施行の規則改正で設けられたものなので、それより前に旧6号財産に区分していた果実には、この制約は及びません(内閣府FAQ 問Ⅳ-6-⑲)。これは法令の附則ではなくFAQとガイドラインの整理なので、区分を続ける根拠として当時の整理を記録に残しておくことが望まれます。
備置き・閲覧と注記
指定寄附資金には、一定の事項について備置きと閲覧等の措置が講じられていることが求められます(公益認定法施行規則第36条第5項)。預かり証文を城に備え、求めに応じて見せるということです。記載事項は、財産が広く一般に募集されたものかどうかで異なります。広く募集した場合はその旨と募集の期間、受け入れた財産の額の合計額、募集の方法、使途として定めた内容などです。個別の寄附の場合は、交付者が個人か法人その他の団体かの別、受け入れた日、受け入れた財産の額の合計額、交付者の定めた使途の内容などです。いずれも金銭以外の財産があればその内容を加えますが、その額が重要でないものは除かれます。
この事項を記載した書類は、事業年度経過後3か月以内に作成して備え置く書類の1つです(公益認定法施行規則第46条第1項第11号)。ただし、計算書類等にこれらの事項が記載されている場合や、該当するものがない場合には、作成を要しません(公益認定法施行規則第46条第3項)。
令和6年公益法人会計基準を適用する法人では、指定純資産のうち指定寄附資金について、受入年度別の残高と使用見込みを注記します(令和6年公益法人会計基準第137項)。受入から5年を超えて残っている指定寄附資金は、今後の支出見込みを書くことになります(内閣府FAQ 問Ⅳ-6-⑲)。受入年度別の残高が不明な場合は、先入先出法など合理的な仮定を置いて計算します。控除対象財産の全体は「使途拘束資産(控除対象財産)の内訳と増減額及び残高」として注記します(令和6年公益法人会計基準第32項)。
平成20年公益法人会計基準を使い続ける法人は、貸借対照表では基本財産または特定資産として表示し、財産目録で該当する資産ごとに控除対象財産の区分を記載します(公益認定等ガイドライン第5章)。会計監査人を置く法人には開示が一部異なる点がありますが、ここでは扱いません。
使途が読めない寄附と事業廃止後の残高
預けた主が没して指図が読めなくなったときは、当時の書付や周囲の証言から主の意思を推し量る。FAQの考え方は、そのままこの作法です。
過去の寄附で指定が十分に明確でない場合は、寄附契約書だけでなく、募集要項や当時の理事会の議事録など、寄附者の意思が確認できる文書で使途を確認します。文書が見つからない、寄附者が亡くなっているといった場合でも、関係者に意思を聴いて使途を明確にできるとき、あるいは法人の寄附金規程によって寄附者の意思の範囲内で目的別に配分できるときは、使途に制約がかけられているとみなして差し支えないとされ、これまでの取扱いから意思を合理的に推定できる場合は理事会での確認等をもって代替できると考えられています(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑥)。
使途に指定された事業が廃止され、寄附者の意向も確認できない場合、そのままでは資金が相当の期間内に費消される見込みを失い、使途不特定財産になります。FAQは、寄附者の合理的な意思を法的に性格付けたうえで、機関決定を経て、令和6年会計基準では「やむを得ない事情による振替」として指定純資産から一般純資産へ振り替え、平成20年会計基準では使途の指定の解除として一般正味財産増減の部へ振り替え、相当額を公益充実資金に積み立てることもできるという一例を示しています(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑦)。法的な性格付けには解除条件付贈与など3つの整理が示されていますが、ここでは深入りしません。今後新たに使途指定寄附を受けるときは、指定された使途に使えなくなった場合の取扱いを寄附者と事前に取り決めておくことが推奨されています。
なお、公益目的事業と法人運営の両方に充ててきた使途指定寄附は、寄附者の意思を確認または合理的に推定したうえで、公益目的事業に係る部分と法人運営に係る部分に分け、それぞれを指定寄附資金として整理する必要があります(内閣府FAQ 問Ⅳ-3-⑧)。
施行後の決算で6区分を見直す手順
6人の大名の領地に収まった財産は控除対象財産として差し引かれ、残った蓄えが使途不特定財産額です。どの領地に置くかが決まっていない財産があれば、まずどの大名に預けるのかを決める。それが控除対象財産の整理という作業の正体です。初めて迎える決算では、次の順に確認すると漏れが少なくなります。
- 使途指定のある寄附の棚卸し。 寄附者の定めの文言を確認し、元本を使い切る前提なら6号財産(指定寄附資金)、運用益を充てる前提なら1号財産(公益目的保有財産)に置きます。指定が読めないものは、募集要項や議事録で意思を確認します。文書が無ければ寄附者本人や関係者への確認、寄附金規程による配分を検討し、これまでの取扱いから意思を合理的に推定できる場合に限って理事会での確認を記録に残します。
- 旧5号財産の振り分け。 交付者の定めに従って使っている現物は、使途に応じて1号財産か2号財産(法人活動保有財産)に振り分けます。
- 果実の再区分。 1号財産・6号財産から生じた利息や配当が控除対象財産に混じっていないかを確かめ、控除対象としたいものは3号財産(公益充実資金)への積立てを判断します。施行前から旧6号財産に区分していた果実は、その整理を記録に残したうえで区分を続けます。2019年3月25日以降に区分したものは相当の期間内に費消する必要があり、それより前に区分したものにはこの制約が及ばないので、区分した時期も併せて記録します。
- 旧資金の公益充実資金への移行と公表。 公益目的事業に係る資産取得資金と特定費用準備資金は3号財産に統合されたので、活動ごとの内容と実施時期、積立限度額と算定根拠、積立額と取崩額を公表する準備を整えます。
- 備置き書類と注記の突合。 指定寄附資金の備置き事項が計算書類等に記載されていれば書類の作成は省けます(公益認定法施行規則第46条第3項)。令和6年会計基準を適用する法人は受入年度別残高と使用見込みの注記を、平成20年会計基準を使い続ける法人は財産目録の区分記載を確認します。
控除対象財産の整理でお困りの際は
控除対象財産の6区分は、名前を付け替えれば済むものではなく、寄附者の意思の確認、果実の行き先の判断、公表と備置きの準備が伴います。とりわけ6号財産(指定寄附資金)は、寄附を受けたときの記録がどれだけ残っているかで整理の手間が大きく変わります。
寄附者の使途指定をどう読むか、果実を公益充実資金に積み立てるべきか、注記と備置き書類をどう揃えるかでお困りのことがあれば、全国公益法人協会の支援サービス「シェアコモン200」でご相談いただけます。法務や会計の専門家が、貴法人の寄附の実情に合わせた区分の組み立てを、年間利用料の範囲で何度でもサポートいたします。