その間にわが国の非営利組織の世界も急速に拡大深化して、政府と企業と並んで1つのセクターとして定着し有力な成長産業となり、これに関する法律や規制や形態の諸制度と、非営利活動の知識と技術の質量と複雑性が増大してきている。時宜を得て本辞典は、これらに対する理解と啓発を広めるべく、各種組合を含む非営利に関する「一般および学術的・専門的な用語として使われているもの」の説明、加えて「学究の用いる基本的な諸概念や諸理論」の簡潔な解明、さらには「非営利に固有な制度・機関・法制」の解説をできるだけ網羅しようとしている。その場合、会員執筆者にはできるだけ自己の独自の見解を抑えるようお願いして、主観を排した辞書的客観性を心がけた解説をしている。
時代はいつの間にかデジタル時代で、一般に「紙媒体」から「電子媒体」に移行して、活字文化の衰退論のなかで辞典無用論も聞こえてくるものの、辞典はある事項を探して解説を得るという「引く」ものであると同時に、それよりも備え置くことで全体を俯瞰し把握する「読む」ものである点にこそ価値があるゆえに、辞典は永遠であると信じている。本辞典が非営利に従事する人たちや非営利を研究する人たちの座右に置かれ役立つことを願っている。
ただ、どんな辞典でもすべてが記されているということはない。事実、本辞典も一部の国を除いてグローバルな範囲に及んだ用語や制度の解説はしていない。鋭意努めたものの不完全を免れないなかで、さらに非営利の世界の現象もつねに拡大深化しているので、本辞典が将来の学究や実務研究者の修正・追加・批判をいただきながら継承して版を重ねられるよう「ネクストワン」を切に期待したい。
この辞典の刊行に際しては、全国公益法人協会が創立50周年記念事業の一環として、編集資金から編集企画・編集作業ならびに編集事務まで、終始多大なご協力とご支援をしていただいた。宮内章理事長はじめ、編集企画に参加いただいた桑波田直人専務理事、煩雑な編集作業の労を煩わせた三宅惠子さんと奥村純子さんの誠意あふれるお力添えを賜ったことを記して、ここに改めて厚く御礼を申し上げる。
令和4年1月 編集代表 堀田和宏