ワーカーズ・コレクティブ

 雇用・非雇用の関係がなく、誰もが平等な関係のもとで働くことを目的とした協同組合である。そのため、組合員は事業への出資、労働、運営をすべて担うことが原則となっている。その事業は地域の課題を解決するための運動という側面もある。日本では、昭和57(1982)年に神奈川県横浜市で生活クラブ組合員が「にんじん」を結成したのが最初である。生活クラブは生活者の立場で、生産者と相談しながらより良い商品やサービスをつくり出して共同購入する仕組みとして始まる。にんじんは、個別配送への切り替え、店舗販売に対応する必要から、店舗業態を業務委託した事業であった。その設立趣意書には、「働く人の復興」を明記し、賃金も労働時間も労働条件も雇い主の意のままに働かされる社会をけん制する批判精神が込められていた。いい換えれば、一定の分配金をえながら、自己実現のための無償労働にも参画し、それが地域の力にもなっているという働き方を創出しようとした。全国組織ワーカーズ・コレクティブネットワーク・ジャパン(WNJ:Worker’sCollective Network Japan)は平成7(1995)年に設立された。その目的は、「ワーカーズ・コレクティブの拡大を支援するとともにそのネットワーク化を図り、ワーカーズ・コレクティブの社会的認知を高め、法制化へ向けて活動すること」である。なお、団体数は、正会員の団体が328団体で7,980人が働いている(平成29[2017]年時点)。8割ほどが関東地方で活動している団体である。正会員の団体の半数は法人格をもつが、活動にふさわしい法律根拠がないという課題を抱えている。また、2号会員・賛助会員を含めると424団体、非会員まで含めると全国では500団体1万人ほどが働いている。メンバーの性別は90%以上が女性で、60代以上の割合が46%と高い点にも特徴がある(WNJ基礎調査の集計結果2017年)。登録団体を業種別にみると、業種は多岐に及んでいることが分かる。居宅での家事援助・介護106団体、生協事務委託64団体、託児・保育・学童保育・塾58団体、仕出し弁当・配食・惣菜・レストラン53団体、私設での家事援助・介護・デイサービス45団体、居宅介護支援事業所35団体、居場所・たまり場32団体、施設での食事づくり・配食32団体、移動サービス25団体、編集・企画・教室・事務事業・印刷・経営支援19団体、パン・焼き菓子10団体、リサイクル・石鹸製造6団体、住宅関連・清掃・管理6団体、健康指導・鍼灸・薬局5団体、衣類リフォーム・採寸4団体、製品や食品製造・販売4団体、その他45団体である(WNJ前掲資料)。
(角谷嘉則)