老人病院

 1970年代中頃から老人の入院が大多数を占める病院について、概念的に「老人病院」と呼ばれていたが、昭和57(1982)年制定の老人保健法(昭和57年法律第80号)に基づく厚生省告示によって、特例許可病院等に係る包括化が行われ、制度化された。制度下で届出により認められた病院は、特例許可老人病院と呼ばれ、一般病院よりも配置基準が緩和されるが、診療報酬も少なくなる仕組みである。一方、特例許可を受けないで70歳以上の老人を常時60%以上入院させている病院は、特例許可外老人病院と呼ばれ、特例許可老人病院よりさらに低い診療報酬とした。その後、昭和63(1988)年には、付添看護を行っていない介護力を充実した老人病院に対する評価として介護力強化病院を創設、平成2(1990)年には、特例許可老人病院における介護力の強化に対し、病院の選択により入院医療管理料をとることが認められた。さらに平成5(1993)年には、入院医療について介護力を強化し、療養環境の充実した療養型病床群の評価を設定し、区分が細分化された。一般病床においても、高齢者に対する患者区分が行なわれ、平成10(1998)年には、老人長期入院医療管理料を設定、介護保険が導入された平成12(2000)年には、老人一般病棟入院基本料および老人一般病棟入院医療管理料(平成22[2010]年廃止)、老人特定入院基本料となった。老人特定入院基本料については、平成20(2008)年には後期高齢者特定入院基本料、平成22年には特定一般入院料と変遷し、現在に至る。その後、平成15(2003)年の医療法改正により、一般病床のうち、慢性期に係る入院医療として療養病床が区分されることとなり、平成15年までに老人病院は廃止され、その役割は療養病床に引き継がれている。
(上村知宏)