倫理

 一般に「人倫のみち」や「人が行うべき正しい道」などと表現される。「倫」という文字は元来「なかま」や「人々のまとまり」という意味をもち、また「理」は事柄の道理や真理を指す文字である。そのため、倫理とは「人間が社会という人間関係のなかで、いかにして筋道を立てて生きるか。」という意味が込められた言葉である。いい換えるならば、倫理とは人々がまとまりをえるときの秩序や規範であり、「人間が社会に帰属し、それらの人間関係のなかでとるべき正しい道」や「人間が社会生活を送るうえで求められる規範」のことである。本来的に法規範のように罰則や制裁により個人の行動を統制するものではなく、またその制定手続きにおいて政府の関与は必要ない。「自律的」かつ「非制度的」な性質のものである。非営利組織の目的は、社会一般の利益の達成である。そのため、組織はそれらの目的を具体的に達成するために活動領域を定め、何を達成しようとしているのかそのミッションを掲げる。そして、それらのミッションに共感する人々が集まり、あるいはそれらの人々による支援によって組織は成立する。その意味で、非営利組織における倫理とは、そのステークホルダーである関係者はもちろんのこと、社会一般から求められる規範のことである。倫理を維持するためには、それらの規範(無私や公正、誠実、清廉、公平・中立、秘密保持、配慮、丁寧さ、透明・開放、能力開発等の価値)を意識しつつ、主体的に考え、判断する姿勢が求められる。また、それらを実現するためには、組織における倫理マネジメントが不可欠である。まず組織員間に共有する行動規範を定め、それらの内容等を研修や教育などの組織員間のコミュニケーションを図る機会を通して内面化させる。そして、日常活動における自己あるいは組織の行動を顧み評価しながら、自らの組織行動の改善を図っていくことで非営利組織の倫理を確保・維持することが可能となる。
(井寺美穂)