臨床指標の要件は、①臨床の質指標としての代表性が高いこと、②標準的な成績が目安として併せて提示できること、③施設間比較ができること、④データ収集が比較的容易であること、⑤改善への努力が反映されやすいこと、⑥卓越した事例(ベストプラクティス)を示せることとされる。臨床指標活用の例として、トヨタ記念病院では、平成17(2005)年より臨床指標への取り組みを開始し、現在では以下のような臨床指標(合計126指標)を用いて医療の質を評価している。①病院全体に関する指標:平均在院日数、病床稼働率、2週間以内の入院サマリー(入院中の経過や治療内容を簡潔にまとめたもの)完成率、クリニカルパス(標準的な医療のスケジュールを書式化したもの)など。②疾患に関する指標:急性心筋梗塞の平均在院日数、糖尿病のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)改善率、患者の紹介および逆紹介件数、肺炎の平均在院日数と初期治療成功率など。③がん診療に関する指標:がん5年生存率、消化器がんの術後在院日数、乳がんの乳房温存手術の割合など。④産科医療に関する指標:妊婦搬送の受け入れ件数と拒否件数など。⑤医療スタッフの指標:入院2日以内のリハビリ依頼率、転院・転所患者への医療ソーシャルワーカーの介入率など。⑥患者満足度に関する指標:知人にすすめたい割合、外来患者待ち時間1時間以上の割合など。
(井上祐介)