②中立的利他主義:利己と利他とがプラスサム的関係もありうることを前提に、利他主義であるか否かということと、自己犠牲とは中立的であるとする考え方である。純粋な利他主義であっても利己的な結果を生じることがありうるという立場である。この立場に立って、企業フィランソロピーに対しては「見識ある自己利益論」が主張された。企業の利己性と利他性のジレンマを止揚する考え方である。社会の利益は安定した社会をもたらし、社会の構成員たる企業にもその恩恵が均霑されるために社会的責任として企業のフィランソロピーが正当化されるという考え方である。この考え方は自国民の税金を使用した海外援助をするときの理由づけにも使われている。今では企業と社会の関係は「WIN-WINの関係」が強調されるようになった。「WINWINの関係」は、特に企業フィランソロピーにおいては広く受け入れられている。
(出口正之)