理事会

 非営利組織がミッションを実現するという受託責任を果たすための最高の経営機関である。組織の最高レベルの決定を担当し、経営執行部門と重なり合い、協力して事業を推進し、人材活用を実践して目的を達成していく責任を有している。行政における国会、企業における取締役会に対応する機関であるということができる。一般に非営利組織における理事会が受託し決定すべきおもな事項は、①ミッションを明確に定め組織に浸透させること、②中長期の達成目標を定め、それを実現するための戦略的決定を行うこと、③成果を実現するための諸資源を調達すること(具体的には、経営執行責任者の選任・支援、予算案の決定等)、④成果を評価し、関係者に対する説明責任(アカウンタビリティ)を果たすこと、などである。これらを基準に各非営利組織ではそれぞれの特性を活かした理事会の責任と権限が定められなければならない。理事会権限に制限を付したり、チェックしたりするためには、一般財団法人においては評議員会や監事の存在、一般社団法人においては社員総会等の存在が機能することが想定されている。ミッション実現という最終的受託責任を果たすため、まず実践的に欠かせない事項は経営執行部門との協働である。そのためには、ミッションを確認し共有すること、相互に情報提供、隔てのない意見交換を行い、相互の責任がより良く実践できるよう支援し合うことが不可欠である。そのためには、組織上の相互関係のみならず、理事と経営執行者との非公式な信頼関係が重要である。また、経営執行幹部が理事を兼務したり、中小規模の非営利組織においては、理事が執行のための委員会メンバーとなったり、相互の交流と協働が密に行われることが情報の共有ばかりでなく、信頼の醸成、決定と執行との一体性を維持することに繋がる。このように理事会は組織の質と成果を決定づける最高機関であるから、それを構成する理事の意識・能力も問われることになる。理事は有償であろうと無償であろうと、その最大の誘因は、自らも賛同する組織のミッション実現に対する貢献への満足のはずである。自らの貢献が、社会を変革し人間を変革して、目指すものを実現していくよろこびでなければならない。名誉職や名前貸しの存在であってはならないのは当然である。従って、理事同士、経営執行者、社員・会員、ボランティア、資金提供者等との間で相互に刺激的な成長を可能にし、人間として、仲間としての交流を育むリーダーシップが期待される。ミッションを身に帯びて意思決定と行動に及び、自身の啓発を怠らず、一個の人間としての尊敬をえる努力が要請される。非営利組織は、独自の価値観に基づくミッションを掲げ、それを成果に結実するべく、社会や人間に貢献すべき民間の組織である。企業のような営利目的ではなく、行政のような形式・一律を旨とする組織ではない。自由に、新しい社会の実現に貢献しようとする自己目的、自主経営を特徴とする組織である。それが有効に機能するための最高経営機関として理事会は責任ある役割を課せられている。
(島田 恒)