理事

 理事会を構成する構成員である。すべての理事によって理事会が組織され、理事会において非営利組織の各種業務執行の決定が決議される。理事は理事会の構成員にすぎないので、理事であるというだけで業務執行の権限および代表権が与えられるわけではない。ただし、これは法人の機関設計によって異なる。一般に代表権限は理事会の決議によって選定された代表理事に付与され、代表理事は非営利組織の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することとなる。法律で定められた理事会の決議事項を除いて、日常的な業務執行の意思決定は代表理事が行うのが通常である(代表理事のほか、業務を執行する理事を選定することもできる。)。業務執行理事は委譲された業務権限の範囲内において業務を執行する。ところで、組織によっては、代表理事の名称を用いずに、職制として理事長や会長を置いているところも多い。代表理事という名称を使っていなかったとしても、代表理事以外の理事に理事長その他法人を代表する権限を有するものと認められる名称が付されている場合には、当該理事がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負うこととなる。非営利組織には各種の形態があるが、ここでは代表的な非営利組織として、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人の理事について示しておく。一般社団法人にあっては、理事会は任意機関であるので(理事会を設置しないこともできる。)、その場合は、定款に定めがある場合を除き、理事が一般社団法人の業務を執行する業務執行機関となる。また、理事は一般社団法人を代表する者であり、理事が2人以上ある場合には、各自が一般社団法人を代表する。つまり、すべての理事が対外的な代表権を有する者となる。なお、理事会を設置しない一般社団法人では、1人または2人以上の理事を置かなければならない。ただし、ほかに代表理事その他一般社団法人を代表する者を定めた場合は、その者が法人を代表する権限を有し、他の理事は代表権を失う。一般社団法人で理事会を設置する場合は、3人以上の理事を置かなければならない。このとき、理事は理事会の構成員となり、理事会を設置しない一般社団法人のように、理事というだけで業務執行の権限および代表権が与えられるわけではない。理事会が設置された場合は、理事のなかから代表理事を選定しなければならないので、代表理事が一般社団法人の業務執行権限および代表権を有する者となる。一般財団法人、公益社団・財団法人の理事は、上記の理事会を設置する一般社団法人と同じである。
 理事の解任、任期については、一般社団法人、公益社団法人の理事は社員総会の決議によって選任され、いつでも社員総会の決議で解任することができる。一方、一般財団法人、公益財団法人の理事は評議員会の決議によって選任されるが、評議員会の決議によって理事を解任する場合は、法律で定められた解任の要件を満たす必要がある。また、理事の任期(理事の交代)は、一般社団法人、公益社団法人では、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされるが、定款または社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げるものではない。一般財団法人、公益財団法人であれば前文の「定時社員総会」を「評議員会」に、「定款又は社員総会の決議」を「定款」と読み替えて適用される。
(梅津亮子)