リーダーシップ

 組織目標や集団目標を達成するために、リーダーがフォロワーに影響を及ぼす活動であると定義される。このリーダーシップは、営利企業にかぎらず、公組織、非営利組織、学校、スポーツ組織等、あらゆる組織や集団においてみられる現象であり、管理論や組織論においてもっとも多く研究されてきたテーマである。1940年代までは、資質理論と呼ばれるアプローチが一般的であった。資質理論は、リーダー個人がもつ資質の分析に焦点を当て、優れたリーダーはどのような資質(年齢、身長、性別、知能、決断力、雄弁さ、社交性など)をもっているかを明らかにしようとした。しかし、この資質理論からは、①優れたリーダーとそうでないリーダー、②優れたリーダーと一般の人々、を区別する普遍的な特徴は析出されなかった。1950年代に入ると、リーダーシップ・スタイルの研究が行われるようになった。このリーダーシップ・スタイルの研究は、優れたリーダーはどのような行動をとるのかを明らかにしようとした。たとえば、アメリカのオハイオ州立大の研究、Likert, R.( リッカート)を中心とするミシガン大学の研究、Blake, R. R. and Mouton, J. S.(ブレイクとムートン)のマネジリアル・グリッドの研究、日本の集団力学研究所の研究などがある。これらのリーダーシップ・スタイルの研究は、いずれもリーダーの行動は操作的に「タスク」と「人間」の2次元で捉えられ、双方の次元が高いリーダーは高い集団成果をあげていることを発見した。しかしこれらの研究では、状況要因は考慮されていなかった。1970年代に入ると、最適なリーダーシップ・スタイルは、さまざまな状況要因に規定されるという研究が行われるようになった。これらの状況要因は研究ごとに異なっていた。たとえば、Fiedler, F. E.( フィードラー)のリーダーシップのコンティンジェンシー理論の場合は、①リーダーの欲求構造、②状況好意性であり、Hersey, P. and Blanchard, K.H. (ハーシーとブランチャード)のSL理論の場合は、フォロアーの成熟度であり、House,R.(ハウス)の目標―経路理論の場合は、①仕事環境特性、②フォロワーの特性、③フォロワーの認知であった。これらの研究はいずれも、不確実性やあいまい性の高い状況にはタスク志向のリーダーシップ・スタイルが最適であることを示唆している。以上紹介してきた研究は、いずれも主として第一線監督者を中心とする集団レベルのリーダーシップ理論であった。他方、Selznick, P. (セルズニック)は、組織全体に強い影響を及ぼす経営者や上級管理者の組織レベルのリーダーシップ理論である「制度的リーダーシップ」を提示した。制度的リーダーシップとは、組織に独自の価値を注入する活動であり、①組織の使命と役割の設定、②目的の制度的体現、③制度の一貫性の防衛、④内部葛藤の処理、の4つの機能からなっている。
(小島廣光)