予算準拠主義

 収入および支出は、予算(書)に基づいて行わなければならないとする主義を指す。昭和52(1977)年および昭和60(1985)年の公益法人会計基準はその一般原則において予算準拠主義を掲げていたが、平成16(2004)年基準では収支計算書を会計基準の対象外としたことから予算準拠主義に関する文言は削除された。NPO会計基準も同様の経緯をたどり、平成15(2003)年に予算準拠主義に関する文言が削除された。しかし、会計基準から予算準拠主義が消えたことは、会計以外の領域で予算準拠主義の意義が消滅したことまで意味しない。予算準拠主義では、予算編成が「完全」であれば、予算のとおりに収入および支出を行うことが正しいこととなる。従って、予算の事前統制機能が適切に働くことが期待できる。しかし、予算は執行年度における環境変化をあらかじめ織り込めるほどには完全でないのが普通である。そもそも「完全」な予算は望むべくもないという意味でも完全ではない。従って、予算どおりの執行がかえって不適切になる場合もある。そこで環境変化等に対しては、予算の細目間の流用、予備費の使用、予算の補正といった対応が考えられる。しかし、こうした対応が無節操に行われると予算の統制機能が失われることになる。従って予算の編成にあたっては事業計画を精緻化して予算化することが何より大切となる。また、事後的に科目間流用が安易に行われないこと、予備費を計画外の自由資金とする発想に陥らせないこと、事業計画の不完全さを補うため実際収支額に向けて補正することなど、本来的な対応でない対応を防ぐ必要がある。
(柴 健次)