民際交流

 市民や民間団体による国境を越えた交流を指す。官による交流と異なり、政治、宗教などを超えた交流、支援、協力、協働が可能である。草の根、人対人、非政府の交流による利点として、相手国の民衆により信頼される傾向がある点があげられる。なぜなら、このような取り組みでは政府の関与が弱いため、政治的なアジェンダの設定や統制が弱いからである。そのため、たとえば現状に対して建設的な批判を行う相手国の市民に、より開かれた対話を促進する傾向がある。また、相手国において社会的に疎外されている市民に光を当て、支援や協働を行い、国境を越えた社会的包摂を推進することも可能である。民際交流における主要な課題は、活動資金を確保し維持すること、また、ビザ/パスポート、アクセス、セキュリティ、法人化、税制優遇等の面から、公的機関からの一定の理解と協力をえることが必要になることにある。国内の実態として、民際交流の活動は、教育、人材育成、人権、環境、文化、福祉、医療、農業、フェアトレード、貧困・飢餓、紛争、災害支援など多岐にわたる。特定非営利活動法人(NPO法人)のうち、国際交流を行っている団体は、10,485団体(令和2[2020]年3月12日時点、内閣府ホームページ)ある。一方、国際協力を行うNGOのネットワーク団体である国際協力NGOセンター(JANIC)によれば、日本の国際協力NGOは400以上あり、世界100か国以上で活躍している。民際交流団体の例としては、「国境なき医師団」、「アムネスティ」、「ワールド・ビジョン・ジャパン」、「クロスフィールズ」などがある。たとえば、昭和48(1973)年に創立された「アジア学院」は、アジア、アフリカ、太平洋諸国の農村地域から、地域に根差した活動を行う草の根の農村指導者を学生として招き、国籍、宗教、民族、習慣、価値観等の違いを認めつつ、公正で平和な社会実現のために、実践的な農業の学びを栃木県において提供している。
(島岡未来子)