まちづくり

 大型店の出店規制と中小小売業の保護・育成を目的として「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律(大店法)」が昭和49(1974)年に制定されたが、日米構造協議での議論を経て、同法は平成12(2000)年に廃止された。こうした動きと並行して、平成10(1998)年に「中心市街地における市街地の整備改善と商業等の活性化の一体的推進に関する法律」(平成10年法律第92号)と「改正都市計画法」(昭和43年法律第100号)が、平成12年には「大規模小売店舗立地法」(平成10年法律第91号)が制定された。いわゆる「まちづくり三法」の制定である。平成14(2002)年の改正都市計画法により「都市計画の提案制度」が設けられ、行政にのみ認められていた都市計画の決定・変更の発議が地権者やNPO等にも認められるようになった。また、国土交通省は、平成19(2007)年度に「まちづくり計画策定担い手支援事業」を創設し、平成24(2012)年度までの5年間実施した。同事業は、都市計画の提案を促進し、市街地の整備改善に役立てることを目的としている。対象地域は、「密集市街地」、「中心市街地活性化法による認定基本計画区域」、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律による歴史的風致維持向上計画の重点区域」等、「国として整備改善を進めるべき市街地」とされた。地権者組織などの地域におけるまちづくりの担い手を対象者として公募し、地区計画等の都市計画の素案作成に必要な経費を補助するものである。平成20(2008)年、国土交通省社会資本整備審議会より「新しい時代に対応した都市計画はいかにあるべきか(第一次答申)」、「人口減少等社会における市街地の再編に対応した建築物整備のあり方について」という2つの答申が提出された。これらの答申のなかで、望ましい都市構造を実現するためには「都市構造改革」を行うことが必要とされ、そのための手法として「広域的都市機能の適正立地のための都市計画制度」や「都市機能の集約のための誘導支援方策」が提唱された。前者の手法については、「土地利用と基盤施設の整合性の確保」や「都市機能の適正配置」とともに「都市計画の提案制度」(上述)の活用等が示された。また、後者については、選択された地域に対する関連施策の「選択と集中」や、「中心市街地再生の担い手」としての「地権者、地元組織等を巻き込む仕組み」の必要性、さらには、「まちづくりの一環として公共交通ネットワーク整備等の都市交通施策を推進すること」の必要性等が明示されている。平成27(2015)年に社会資本整備審議会が答申した「新たな時代の都市マネジメントはいかにあるべきか(中間とりまとめ)」において、人口減少、高齢化、甚大化する災害等に対応し、「都市全体から、地域・街区、個々の施設に至る広狭さまざまな都市空間について、それぞれのレベルで幅広い関係者の総力を結集して整備、管理運営等を行い、効率的・効果的に都市機能を高めていく」ため、「都市マネジメント」が提唱され、行政が「地域を運営する主体との協働」によって推進するという方向性が打ち出された。この「地域を運営する主体」の1つに「まちづくり協議会」がある。同協議会は、さまざまな地域課題の解決にあたる諸主体(町内会、NPO、企業等)のネットワークやプラットホームを形成する場である。自治基本条例やまちづくり条例にまちづくり協議会を位置づけ、活動拠点として「まちづくりセンター」を設置している市町村もみられる。
(伊佐 淳)