マイクロファイナンス

 金融サービスを受けられない貧困層に、小口の融資、預金、保険といったサービスを提供することによって、経済的自立を支援し、貧困からの脱出を目指す取り組みである。金融サービスは経済活動を行ううえで欠かせないものであり、当初は貧困者に自活のための経済活動の元手となる少額資金を無担保で貸し付けるマイクロクレジットからスタートしたが、借りた資金による零細自営業で売り上げた代金の入金口座や、事業を行ううえでの送金・決済口座が求められるほか、各種リスクに備えた保険も必要となる。貧困層の経済的自立を本格的に支援するためには、融資(マイクロクレジット)だけでなく預金・送金・保険といった他の金融サービスの提供も必要であることが認識されるにつれ、おもに開発途上国で貧困層に提供される少額金融サービスの総称として、マイクロファイナンスという用語がより広義の概念として普及するようになった。従来の開発支援は、慈善活動として無償で与えられることが多く受益者は援助漬けに陥りやすい一方、マイクロファイナンスは市場アプローチに基づいて、貧しい人々が自らの手で収益活動を行う機会を与え、自助努力を通してえられた成果によって貧困から脱出することを目標としている。ボランティア活動が人材や資金不足の問題から持続可能な活動になりにくいのに対し、マイクロファイナンスは、貧困削減や金融アクセスの提供を行うだけでなく利潤も追求するので、活動の持続可能性の高さが特徴となる。他方で、マイクロファイナンスへの注目度が世界的に高まり、多くのマイクロファイナンス機関が設立され商業化の動きもすすむなかで、貧困層における過剰債務の回避や顧客への説明責任などを求める「顧客保護原則」が重視されてきている。なお、近年、貧困層が必要とする金融サービスを利用できる状況を「金融包摂(Financial Inclusion)」と呼び、その実現に向け、政府機関や国際機関、民間団体等でさまざまな取り組みも行われるようになってきている。
(越智信仁)