(越智信仁)
マイクロクレジット
貧困者に自活のための経済活動の元手となる少額資金を無担保で貸し付ける活動を指し、マイクロファイナンスのサービスの1つである。2006年に、マイクロクレジットのビジネスモデルを確立したグラミン銀行のYunus, M. (ユヌス)博士がノーベル平和賞を受賞したことで、世界的に大きな注目を集め、マイクロクレジットという用語が一般に広く知られるようになった。グラミン銀行の事業は、世界でも有数の最貧国であるバングラデシュの農村部の低所得者層に、現地の金融機関が提供するよりは低利で少額の貸付金を提供することによって、貧しい農民に貧困から脱する道を拓いたが、今では世界各地でグラミン銀行と同様の取り組みが数多く行われるに至っている。グラミン銀行の当初スキームにおいては、貧困層である借り手の信用リスクが高いなかにあって、グループのなかで順番に融資を受けられる「グループ貸付け」のもとで、グループ内での「連帯責任制」がとられ、自らの返済に向けた心理的プレッシャーや仲間の返済に向けた相互協力・監視を引き出すことにより、高い返済率を維持していたとされる。しかし、近年では、グループ貸付けの有効性に疑問を呈する研究もみられるほか、こうした方式では、借り手であるグループのメンバーから返済が難しい人物と思われてしまったより貧しい人々は、マイクロクレジットにアクセスできなくなることもあり、「個人融資制」も採用されるようになってきている。この間、アメリカのNGOであるリザルツ教育基金本部が運営するプロジェクト「マイクロクレジット・サミット・キャンペーン」では、世界の最貧困層、特に女性がマイクロクレジットを利用できることを目標に、毎年、世界各地で大規模な会合を開催している。リザルツは、飢餓と貧困の根絶を目指すアドボカシー活動等に取り組むNGOとして1980年に設立されたが、1997年にはじめて開催されたマイクロクレジット・サミットには137か国から2,900人以上の関係者が参集し、世界の最貧困家庭の生計向上を目指す「マイクロクレジット・サミット・キャンペーン」の実施が決定され、現在に至っている。