ボランティア労働の金銭的価値の見積もり

 ボランティアによる業務は、雇用契約を前提とした「労働」とは異なるが、ボランティア時間(労働)の金銭的価値を見積もって、それを公表することは、企業と異なる評価基準を使用する非営利組織本来の姿として、その意義は大きい。活動計算書や事業報告書などにボランティア時間を金銭額で評価、計上し、サービス提供の実績を示している例がNPO法人で散見される。金銭的価値の見積もりには、以下の2つのいずれかが用いられることが多い。①機会費用法(時給計算法):ボランティアをすることにより、市場で労働できないことにより失った賃金(逸失利益)で評価する方法(経済企画庁経済研究所国民経済計算部1997)。時給額×従事時間で計算される。特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター(N-Pocket)は、ボランティアの時間を記録し、これに時給1,000円を乗じた「ボランティア受入評価益」を収益に、同額を「ボランティア評価費用」として事業費へ計上した活動計算書を作成、公表している。平成30(2018) 年3 月期のN-Pocketの年間経常収入約5,700万円では、ボランティア受入評価費用は約220万円であった。②代替費用法(外注費計算法):家計が行う無償労働を、市場で類似のサービスの生産に従事している専門職種の賃金で評価する機会費用法(経済企画庁経済研究所国民経済計算部1997)。アメリカFASB財務会計審議会(米)FAS No. 116は、この代替費用法を採用している。FASでは、受けたサービスが、非財務的資産を創設するかもしくはその価値を高めるか、または、特殊の技能を必要とするものに限定しており、特殊の技能とは、会計士、建築家、大工、医師、電気技術者、法律家、看護師、などの専門技能者、技術者が提供するものにかぎり、それ以外のサービスの寄付は認識しない。
(早坂 毅)