ボランティアリング

 ボランティアの精神、ボランティアの実践を掘り下げるならば、ボランティアの歴史や属性を理解しなければならない。もともとボランティア(volunteer)はvoluntasというラテン語から派生していて、願う、求める、自由意思、義勇兵等の意味を含んでいる。現在、ボランティアの属性には自主・無償・連帯等のキーワードが含まれる。義勇兵が自らの信念のために命を懸けて戦うというとするならば、ボランティアも自らの信念に合致する働きを、自主的に、無償で貢献しようとする存在である。現代社会、特に経済大国といわれる国々では、市場主義による経済発展を実現してきた反面、競争による経済格差、教育格差をはじめ、さまざまな社会環境の劣化も生み出している。人々が利害をもって行動し、経済的欲求の動機が大きくなり、社会は合理や効率が判断の基準となる様相を呈している。経済・政治・文化・共同という社会を構成する4要素が、支え合いながらかつ緊張感をもってかかわり合う状況が調和をもたらすとされている。しかるに現実は経済が突出した影響力をもっている社会に傾いている。このような状況にあって、価値(社会はどうあるべきか、人間はどうあるべきか)を担う文化要素、人間の繋がりを担う共同要素が弱められている現実が認められる。ボランティアは、このような社会矛盾のなかにあって、信念や理想の実現にかかわり、人間の親密な繋がりを担う、合理・効率と一線を画する存在である。経済的利害はマイナスであるにもかかわらず、自主的に貢献し現代社会の矛盾にチャレンジする存在である。ボランティアは具体的に貢献する非営利組織を超えて、社会を変革していく存在となっている。それは自国内にとどまらず、貧困や健康、圧政に悩む人々のために国家を跨る働きにも拡大している。現実には「ボランティアは格好いい。」「望ましい雇用に繋がるコネになるかもしれない。」といった動機も無しとはいえないけれども、ボランティアが有する大切な役割に注目し、大切に育てていくことが社会の質を高めていくことに注目するべきである。
(島田 恒)