ボランティア・マネジメント

 ボランティア・コーディネーション(VC)の一部であり、ボランティアを受け入れる側のコーディネートを深く掘り下げようとした理論と実践である。従来、VCは、ボランティアの「仲介」を想定した理論を出発点とし、ボランティアの「受け入れ」や「送り出し」の理論と実務を補足していた(桜井政成[2007])。ところが、阪神・淡路大震災を契機として特活法が成立し、ボランティア活動が多様化し、受入れ団体も拡大した結果、マネジメントが求められたという。アメリカも同様の歴史がある(妻鹿ふみ子[1999])。 日本NPOセンターでは、「NPOにおけるボランティア・マネジメントは、組織の目標達成のためにボランティアおよびボランティア活動のもつ利点(もち味)を最大限に活かそうとする取り組み」としている。ボランティアとは、「利他性」、「無償性」、「継続性」、「公共性」などの要素も含むが、ラテン語の「volo」、「voluntas」を起源とするように「自発性」が核となる人の概念である。そのため、ボランティアは管理する/されるイメージが似つかわしくない。だが、ボランティアは、組織において自分の存在意義を認められ、主体的に組織の目標達成に参加できるかどうかを求めている。そのため、ボランティアの立場に立ちつつ、その利点を最大に生かす工夫が、NPOの職員にとって必要不可欠な技能となっている。ボランティア・マネジメントのプロセスは、つぎのとおりである。①ボランティア募集の前にボランティア導入の方針を明確化し、組織内で合意形成する。組織内でどのようなニーズがあるのかを明らかにし、その原因や背景を分析する。そのうえでボランティアプログラムを立案する。②ボランティアを募集する際にボランティアプログラムを立案し、その後に募集する。原則として説明会を行い、ボランティア希望者を受け付け、必要に応じて面接する。活動部門や内容を決定し、オリエンテーションを行う。専門性のあるボランティアの場合は、研修を実施する。③活動が経過したら、活動を続けて支援してもらえるよう、活動の意義・成果を表し、評価や改善点を振り返る。④活動が終了したらボランティアに感謝の意をあらわす。以上のように、内容はVCと類似する。大阪ボランティア協会では、マネジメントにおいてつぎの点を意識している。①徹底的に情報公開、そして、共有すること、②はじめから最後まで「参加」の設計をすること(募集、オリエンテーション、歓送迎会、研修、実践、報告、評価)、③ボランティアが主役になる環境づくり、④知的好奇心に応える機会づくりをすること、⑤意識的なコミュニケーションである。
 その他、災害ボランティアセンターでは、ボランティア活動への配慮として受け付け、活動調整、オリエンテーションに加え、安全や健康の管理も含んでいる。
(角谷嘉則)