ただ、非営利組織には少なくとも2つのボトムラインが混在する。非営利組織は基本的には非経済的なミッションを掲げて公益性のある財・サービスを有効に供給するために存在する。従って、第1のボトムラインはそのミッションを達成する事業や活動の有効性(財・サービスの効果・社会的作用)である。しかし、公益性のあるミッションを達成すると同時に、支払うべき勘定があり収益をあげて事業を継続する資金が必要である以上、財務上の計慮を外すことはできない。ミッション有効性と財務の効率性の2つのボトムラインが求められることから、意思決定のなかにあいまい性を持ち込むことになり、一貫性のない政策を展開することになる。さらに、昨今の資金提供者の求めるものがミッションの有効性とともにその有効性をどのようにしてあげたか―財務上の効率性に傾斜している。そうなれば、ミッション達成と同時に資金の効率利用が非営利組織の事業と活動に関する観察可能で定量的に測定されるべきボトムラインとなる。また今日、主として国の財政困難と企業活動の停滞に伴う財政援助や寄付行為の減退を契機にして、非営利組織の問題も独自の資金調達はいかにあるべきか、経営実体として維持存続を図るためには企業と同じ意味のボトムラインをどのように確保すべきなのか、そのための効率性を求める経営管理は非営利組織のミッションである財・サービスの有効性の達成とどのように整合させるべきなのかに集中する。ますます非営利組織のボトムラインは複数にならざるをえない。
(堀田和宏)