ボトムライン

bottom line
 一般的には、ある活動から生じる利益か損失、ある活動の最終結果、最終の結論か最終の責任など「本当は何が問題か」について使われる言葉である。企業の世界では顧客満足やコミュニティ関係も重要で、バランスド・スコアカードが唱えるような多様な目標の均衡が必要であるとされているが、企業のボトムラインといえば、それはあくまで財務上の可及的な最終利益であり、短期的には損益計算書の最終線である現実の最終損益を指している。このようなボトムラインが唯一で明確であり、すべての事業活動はこのボトムラインに収斂するので、確たる詳細な目標を設定し、企業の活動と業績が容易に監視され測定される。非営利組織では、ボトムラインの概念はより複雑である。資金提供者、受益者、経営者、従業員、ボランティア、その他のステークホルダーの利害を集合する市場価格メカニズムがなく、コストと利益、供給と需要、目標と現実の結果などを合わせる市場価格メカニズムが働かないので、複数のボトムラインが存在する。そのために、複数の業績評価方法が必要であり、非営利組織に特異な経営管理の活動が求められる。
 ただ、非営利組織には少なくとも2つのボトムラインが混在する。非営利組織は基本的には非経済的なミッションを掲げて公益性のある財・サービスを有効に供給するために存在する。従って、第1のボトムラインはそのミッションを達成する事業や活動の有効性(財・サービスの効果・社会的作用)である。しかし、公益性のあるミッションを達成すると同時に、支払うべき勘定があり収益をあげて事業を継続する資金が必要である以上、財務上の計慮を外すことはできない。ミッション有効性と財務の効率性の2つのボトムラインが求められることから、意思決定のなかにあいまい性を持ち込むことになり、一貫性のない政策を展開することになる。さらに、昨今の資金提供者の求めるものがミッションの有効性とともにその有効性をどのようにしてあげたか―財務上の効率性に傾斜している。そうなれば、ミッション達成と同時に資金の効率利用が非営利組織の事業と活動に関する観察可能で定量的に測定されるべきボトムラインとなる。また今日、主として国の財政困難と企業活動の停滞に伴う財政援助や寄付行為の減退を契機にして、非営利組織の問題も独自の資金調達はいかにあるべきか、経営実体として維持存続を図るためには企業と同じ意味のボトムラインをどのように確保すべきなのか、そのための効率性を求める経営管理は非営利組織のミッションである財・サービスの有効性の達成とどのように整合させるべきなのかに集中する。ますます非営利組織のボトムラインは複数にならざるをえない。
(堀田和宏)