募金

 文字どおりの意味としては、寄付を集めることであり、本来はファンドレイジングと同義である。募金の専門家として、日本には民間団体である日本ファンドレイジング協会の認定する認定ファンドレイザーがいる。西洋においては公益性のある営利企業が募金を実施することもある。日本においては民間の非営利法人ではない政府系の団体が募金と称する資金調達を実施することもあるが、通常は営利企業や政府機関とは異なる民間非営利組織ならではの経済活動である。関連用語として、募金キャンペーンや募金セールスがある。募金キャンペーンとは、募金のための運動のことである。国・地域によっては毎年度大規模に行われている。歴史的には日本には、仏教における勧進という募金キャンペーンと類似した運動があった。歌舞伎の「勧進帳」は、実際には勧進目的の旅をしているわけではない弁慶達の物語であるが、タイトルは勧進における道具に由来する。現代日本ではキリスト教の救世軍による社会鍋を募金キャンペーンの事例としてあげることができる。社会鍋は俳句においては季語となっている。そしてやはり現代日本にも、政府系の団体が募金キャンペーンと類した側面のある運動を実施する事例が見受けられ、それが本当に募金であるかは強制力の有無による。募金セールスとは、強引な募金のことである。イギリスでは募金セールスがある寄付者を自殺に追い込んだ疑惑もある。強制力が一応は排除されているのであればこの用語自体に矛盾はないといえなくもない。強制力があればそもそも募金という形容詞をつけるこの用語自体に矛盾がある。実態は家計からの徴収であるものを町内会費の名目で収集して政府系の団体に渡す、という行動は違法という裁判例がある。今日において募金セールスは、国によってはガバナンス・コードで制約されている。古代ローマにおいても財務官でもあったキケローが、誰かから搾取することで慈善を実施することには反対しており、キケローの思想からすれば慈善目的の募金セールスは認められないことになる。
(水谷文宣)