法人格

 「法」が権利義務の主体となりうることを認めた人格のことである。権利義務を有するものとして広義に解釈すれば、「自然人」と「法人」があるが、社会一般的な解釈(狭義)では自然人以外の権利能力を有する「法人」を指す。法人は自然人と異なり、民法等その目的に沿った法律の規定によらなければ法人として成立しない。従って、法人は法律の規定によってのみ法人の設立が認められるという制度を採用している。法人の設立は、法律の定める一定の要件を具備した場合にその設立が認められる。この場合、法人の種類またはその性質に応じて、①法人を設立するために特別の法律の制度を必要とする特許主義(日本銀行など)、②法律の定める要件を具備し、主務官庁の認可(裁量権なし)を受けることにより設立される許可主義(学校法人・宗教法人など)、③法律の定める要件を備えれば当然に法人の設立を認める準則主義(一般法人法・会社法などの法人)、④法人の設立を強制する強制主義(弁護士会)、がある。法人の種類は、以下のように分類される。①公法人:公法に準拠して設立され、公の事務を行う(地方公共団体・独立行政法人など)。②私法人:私法に準拠して設立され、私的な事務を行うものをいう。私法人はさらにつぎのように分類される。③非営利法人:事業による利益の分配を目的としない法人をいう。④営利法人:営利を目的とする法人で、法人の構成員に対して事業による利益の分配を目的とする法人をいう。 なお、準則主義によって容易にその法律に基づいて設立された法人が、法人格がまったく形骸にすぎない場合、またはその行為が法律の適用を回避するために濫用される場合は、法人格がないものと同様であり、法人格を否認すべきとの意見もある。
(戸塚光博)