プリンシパル

principal
 プリンシパルとは委託者のことであり、エージェントとは受託者のことである。プリンシパルの語源はラテン語のprincepsである。元首という意味でprincepsという単語は日本で知られているが、むしろprincepsの一義的な意味は何らかの流れのもとという位置づけにいる人である。何らかの流れのもとにいるのであれば、非営利組織の所有者であることはprincepsの要件を満たすうえで必須ではない。寄付における資金の流れのもとにいるのは寄付者であり、寄付者がprincepsである。プリンシパルとエージェントとの関係はプリンシパル=エージェント関係と呼ばれ、ファイナンス論の発想である。英語圏の論文においては、寄付者を委託者とし非営利組織の経営者を受託者とする理解が普及している。ただし、日本においては非営利組織にプリンシパルやエージェントといった発想を持ち込むことに疑念をもったファイナンス論の研究者も見受けられる。エージェントはプリンシパルの意図に従わずに暴走する可能性があり、この問題はエージェント問題あるいはエージェンシー問題と呼ばれる。エージェント問題から生じるコストは、エージェンシー・コストと呼ばれる。経営者の暴走の可能性は所有と経営の分離に由来する。営利企業においては日本ですら少なくとも名目的にはその企業への最終的な支配権は株主がもっているため、経営者の暴走に対応する余地がある。一方で非営利組織においては寄付者がその組織を所有するという発想がなく、それと関係して必ずしもその組織への最終的な支配権をもたないため、経営者の暴走に対応する余地がかぎられる。
 非営利組織におけるエージェンシー問題のみでなく、営利企業のエージェンシー問題が非営利組織に関係してくることもある。営利企業によるすべての株主の同意をえ難い慈善活動への寄付は、営利企業のエージェンシー問題の1つとして英語圏では指摘されている。エージェンシー問題への対応の典型は、モニタリングである。会計監査はモニタリングの1つとして日本においても知られている。英語圏においては、アナリストや融資を行う銀行もモニタリングを行うと指摘されている。
(水谷文宣)