フリーライダー

 ある組織に対してコストを負担することなく便益を享受する人のことである。フリーライダーから生じる問題はフリーライダー問題と呼ばれ、経済学の発想である。フリーライダー問題の一部の側面は、エージェント問題とも関係する。営利企業においては、少額の株式しか保有していない株主がモニタリングを他人任せにしてしまう現象がフリーライダー問題に該当する。非営利組織の寄付者は配当を受けることができないため、モニタリングを実施するインセンティブが少額の株式しか保有していない株主より弱く、フリーライダー問題の発生の余地は非営利法人の方が大きいかもしれない。 営利企業について英語圏では、M&A(Merger and Acquisition)に際して経営者の技能の欠落により買収されるべき営利企業における株主のフリーライダー問題があり、買収を図る側の経済的な利益を失わせることで望ましい買収を妨げてしまうことが指摘されている。非営利法人においてもM&Aがあるが、当事者となる非営利法人のどちらにも配当可能な経済的な利益はないため、望ましいM&Aは一方の非営利組織の利害関係者のフリーライダー問題によって営利企業よりも容易に妨げられるかもしれない。非営利組織の受益者もフリーライダーとなりえ、受益者が非営利組織に対してコストを負担することなく便益を享受することもある。非営利組織は政府機関と異なり徴税を行うことができないため、このフリーライダー問題を解消することができない。この現象は、非営利の失敗あるいはボランタリーの失敗と呼ばれる。経済学においては、デモによる便益の実現がデモに参加しなかった人々にも及ぶことが指摘されている。この現象が起こりやすい非営利組織として、アドボカシー活動を行う団体をあげることができるであろう。また近年注目が高まっている環境保護の問題については、環境保護団体においてもこの現象が起こりやすいかもしれない。
(水谷文宣)