フリーマン報告書(米)

 Freeman R.J.(フリーマン)を委員長とした委員会により作成された報告書である。フリーマン委員会は、1966年のASOBAT(AStatement of Basic Accounting Theory)で提起された意思決定有用性アプローチに基づいて非営利組織会計の再検討を行うためにアメリカ会計学会が組織した委員会である。本委員会は1966年から1974年にかけて、3次にわたって組織され、その成果はつぎのとおりである。第1次報告書は、ASOBATを理論的基礎として、営利組織と非営利組織の類似点と相違点の整理、当時の実務の紹介と問題点の検討、改善の勧告がなされる。おもな論点は、基金会計、予算会計、会計基準、固定資産と減価償却、負債、原価計算、報告である。本報告書は、非営利組織と営利組織の類似点を強調し、非営利組織を継続事業と捉え、発生主義会計を導入し、原価に基づくデータを基礎として予算の作成・執行・評価を行うべきであるとしている。第2次報告書は、非営利組織の活動を事業型活動と行政型活動に分類し、非営利組織に固有の活動である行政型活動を検討対象とする。非営利組織会計の役割と範囲、財務管理と会計責任情報などが検討され、財務データと準拠性データだけでなく、経済性、効率性および有効性に関するデータを含み、非会計データを会計データに結び付け、ミクロ・マクロ両レベルで利用者の情報ニーズを満たす「統一情報システム」が提起される。第3次報告書では、意思決定有用性アプローチにとって不可欠な財務報告利用者の情報ニーズが整理され、それに基づいて、測定問題と実体(entity)問題が検討されている。非営利組織会計の概念研究は、その後FASBに引き継がれ、FASBによる非営利組織の会計概念研究の最初の研究報告書であるアンソニー報告書が作成されていくこととなる。
(池田享誉)