不特定多数の者の利益

 法人の活動によりもたらされる利益が社会全体の利益となり、利益の受け手である受益者が特定の者に限定されておらず、受益の機会が一般に開放されている利益をいう。公益認定法2④の公益目的事業の意義を説明する用語として「学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」として使用されている。また、特活法2Ⅰにおいても、「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする。」とされており、公益認定および特定非営利活動法人の特定非営利活動の重要な基盤となる考え方となっている。このことからも不特定多数の者の利益という概念は、非営利性の観点からは、おおむね公益性という概念として捉えることができる。不特定多数の者の利益の対象については、受益機会の場所といった地理的範囲および、受益者の対象範囲が問題となる。公益認定法および特活法の例示によれば、地理的範囲については、地域や町、それに海外の地域などが例示され、対象者の範囲については、子ども、児童、青少年、男女、障害者、生活困窮者、高齢者、勤労意欲のある者、勤労者などが例示されている。このことから、国民や一般消費者、国土、国際といった広い概念のみを不特定多数の者としているわけではなく、ある地域や、ある集団を対象としていても、社会通念に照らして社会全体の利益として考えられる利益を不特定かつ多数の者の利益として捉えている。特定の個人、団体および組織の利益を図ることや、営利を目的として活動を行う者に対する寄付その他の特別の利益の提供を行うことは、非営利性の観点からは、不特定かつ多数の者の利益としては認められない。しかしながら、例外的に受益先が不特定かつ多数の者の利益を提供することが自明である場合の、公益法人に対して公益目的事業のために特別の利益を提供することは認められている。法人の活動による利益の提供は、受益者である不特定かつ多数の者に対する直接的受益機会を設ける必要があるとされる。実際に事業を行う者に対する財政支援を目的とする助成団体である通過財団―受け入れた寄付金を活動している他の組織に助成する組織―の間接的な助成事業については、助成先が不特定かつ多数の者の利益となる活動を行っていると認められる場合には、当該通過団体は社会全体の利益に資する活動を行っていると考えることができる。たとえば、通過財団の助成先が不特定かつ多数の者の利益に資する活動を行っている団体のみであれば、閉鎖型制度といい、助成先が営利活動を行っている組織を含む場合には、開放型制度とする分類もある。
(榮田悟志)