福祉サービス第三者評価制度

 社福法78は「社会福祉事業の経営者は、自己評価の実施等によって自らの提供する福祉サービスの質の向上に努めなければならない。」と自己評価について努力義務を規定している。「福祉サービス第三者評価事業」は、事業者が事業運営における問題点を具体的に把握し、サービスの質の向上に結びつけることができるよう、当事者(事業者および利用者)以外の公正・中立な第三者機関が専門的かつ客観的な立場から事業所の運営管理や提供するサービスを評価する事業である。利用者の適切なサービス選択のために評価結果を公表することを目的として実施されている。受審は任意ではあるが、事業者の積極的な受審が望まれる。なお、社会的養護施設(児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設)は平成24(2012)年度から3年に1度の受審が義務化された。行政監査は、法令が定める最低基準を満たしているか否かについて定期的に所轄の行政庁が確認するものに対して、第三者評価は現状の福祉サービスの質の向上を意図していることから事業所の優劣をつけるものではない点で異なっている。評価は、当事者以外の公正・中立な第三者機関(評価機関)で、法人格をもっていること、福祉サービスを提供していないことなどが要件となっており、都道府県が認証した評価機関によって実施される。また、評価調査者は評価機関に属し、都道府県が行う研修を修了していることが必要である。なお、社会的養護関係施設については、全国社会福祉協議会の認証を受けた評価機関が評価を行うことになっている。評価項目は、サービス提供に関する基本方針や、事業者の経営理念など、すべてのサービスに共通する項目(共通評価項目)と、サービスの種別によって異なる個別評価項目に分かれており、具体的なサービス場面を評価する内容になっている。こうした第三者による評価を通して、事業者のサービスの質の向上に向けた積極的な取り組みが期待されている。しかし、「福祉サービス第三者評価」の受審費用は事業者の自己負担となることから、社会的養護関係施設以外の事業者の受審が低いことが課題となっている。
(小口将典)