副業

 「本業以外で収入をえる仕事」と定義されるが、従来は農林漁業者の兼業や、アルバイトの掛け持ちなど、所得を補塡するための副次的な働き方を指してきた。平成28(2016)年9月、政府に「働き方改革実現会議」(内閣総理大臣の私的諮問機関)が発足し、副業・兼業の推進は、労働供給対策、働き方改革の一環として、また企業・個人レベルでは創業・新事業創出、社会レベルでは都市と地方の人材交流による地域活性化等にも繋がる可能性が広く期待されるようになった。平成29(2017)年3月、経済産業省の研究会提言で「公務員が率先して兼業・副業を解禁すべき」とされ、同年4月、地方自治体で神戸市が初めて副業に関する規程を独自に設け、7月に生駒市が公共性ある組織での副業基準を明確化し、職員の地域活動への積極的参加を促進するなど地方公務員の副業解禁へ先鞭をつけた。平成29年3月、働き方改革実現会議は「働き方改革実行計画」を決定し、「5 柔軟な働き方がしやすい環境整備」のなかで、テレワークとともに「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」とし、「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業を普及促進」するものとした。平成30(2018)年7月、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)(平成30年法律第71号)が成立し、平成31(2019)年4月から順次施行された。法施行に先立ち、同年3月、内閣官房内閣人事局参事官から各府省等に対し「『職員の兼業の許可について』に定める許可基準に関する事項について」が通知され、営利企業以外の団体(非営利団体)について、許可基準が明確化され、非営利法人や非営利団体への国家公務員の兼業が認められた。これを受けて同年度からは、一般社団法人や認定NPO法人等が中央省庁の国家公務員兼業者の受け入れを開始した。新型コロナウイルスによる感染拡大防止のため広がったテレワークとともに、非営利団体等での副業を含む複線的な働き方は、「新しい生活様式」としても発展する可能性がある。
(初谷 勇)