病床規制

 厚生労働省は、全国の医療機関における病床数を基準病床数制度(医療法7の2)で規制している。当該制度で病院・診療所の病床数について、各都道府県が地域で必要とする「基準病床数」を全国統一の算定式により算定し、「既存病床数」が「基準病床数」を超える地域(病床過剰地域)では、病院開設・増床を許可しない(同法30の4Ⅱ⑰)。しかし、特定の病床等に係る特例も設けている(同法30の4Ⅳ、Ⅸ)。病床数規制は、第1次医療法改正前までは公的医療機関のみが対象となっていたが、その規制は、「その他の病床」の必要病床数=(一定の地域に含まれる各市町村別人口)×(各市町村の区分・病床種別に応じて厚生大臣が定める数値)としていた。しかし、第1次医療法改正(昭和60[1985]年)では医療計画制度が創設され、「その他の病床」の必要病床数=([性別・年齢階級別人口]×[性別・年齢階級別入院受療率]+[流入入院患者数]-[流出入院患者数])÷病床利用率+流出超過加算となる。さらに、第4次医療法改正(平成12[2000]年)では、「その他の病床」は「一般病床」と「療養病床」に区分され、「一般病床+療養病床」の基準病床数=([性別・年齢階級別人口]×[性別・年齢階級別入院受療率]+[流入入院患者数]-[流出入院患者数])÷[病床利用率]×[平均在院日数推移率]+流出超過加算となった。第5次医療法改正(平成18[2006]年)では、以下の算定式に基づき基準病床数を設定している。
 ①「一般病床の基準病床数」=([性別・年齢階級別人口]×[性別・年齢階級別一般病床退院率]×[平均在院日数×0.9]+[流入入院患者数]-[流出入院患者数])÷病床利用率
 ただし、県外流出患者数>県内流入患者数の場合には、(流出患者数-流入患者数)×1/3を限度として基準病床数を加算する。
 ②療養病床の基準病床数=([性別・年齢階級別人口]×[性別・年齢階級別長期療養入院・入所需要率]-[介護施設対応可能数]+[流入入院患者数]-[流出入院患者数])÷病床利用率
 ③一般病床と療養病床の合計数に流出超過加算を加える。
(厚生労働省:「基準病床について」平成28年)
 以上のように医療法改正において、基準病床数算定の見直しが行われ病床数の規制は変化している。
(森美智代)