評議員

 一般財団法人、学校法人、社会福祉法人などにおいて法人の業務を公正に行うための重要な機関の構成員である。一般法人法によれば、一般財団法人では理事、監事および評議員を必置としている。評議員から構成される評議員会において重要な決議を行うとともに、執行機関である理事会に対する牽制機能を果たす。評議員は他の役員と同様に法人と委任関係にあるため、善管注意義務を負い、違反すると損害賠償責任が問われる。評議員の選任方法は定款に定める必要があり、評議員会において実施するか、評議員、監事および外部の有識者で構成する評議員選定委員会による実施も定着している。一般法人法173〜196では、評議員に関しておおむね以下のように規定している。
 評議員は法人や子法人の理事、監事、使用人を兼ねることができず、3人以上でなければならない(一般法人法173Ⅱ、Ⅲ)。任期は原則として4年であるが、6年までの延長が認められている(同法174Ⅰ)。すべての評議員によって評議員会が組織される(同法178Ⅰ)。評議員会では、一般法人法で定める事項と定款で定める事項を決議できる(同法178Ⅱ)。前者の事項としては、役員の選任および解任、定款の変更、計算書類、合併契約および事業の全部譲渡の承認などがある。評議員会の決議を必要とする事項については、理事会など他の機関で決議できるものと定款に定めても効力を有しない(同法178Ⅲ)。評議員会には、毎事業年度終了後の一定の時期までに開催しなければならない定時評議員会と必要に応じて開催できる臨時評議員会がある(同法179Ⅰ、Ⅱ)。評議員会は理事が招集するため、評議員は理事に対して評議員会の目的である事項および招集の理由を示して、評議員会の招集を請求することができる(同法180Ⅰ)。評議員会を招集する場合には理事会の決議により、日時、場所、目的などを定めなければならない(同法181Ⅰ)。他方、評議員全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく評議員会を開催できる(同法183)。評議員会の決議は、決議に加わることができる評議員の過半数が、その過半数をもって行う(同法189Ⅰ)。ただし、監事の解任や定款の変更など重要性が高い事項については、その3分の2以上の多数をもって行う(同法189Ⅱ)。理事および監事は、評議員から特定の事項について説明を求められた場合には、必要な説明を行わなければならない(同法190)。他方、理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合、当該提案につき評議員(当該提案の議決に加わることができるものにかぎる。)の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の決議があったものとみなす(同法194Ⅰ)。報告事項についても理事が評議員全員に通知した場合において、当該事項を評議員会に報告を要しないことにつき評議員全員が同意の意思表示をしたときは、当該事項の評議員会への報告があったものとみなす(同法195)。さらに、評議員の報酬等の額については定款に定めなければならない(同法196)。各法人において評議員の果たす役割は同一でないが、学校法人では理事数の2倍を超える評議員数、社会福祉法人では理事数を超える評議員数を必要としている。また、学校法人では理事との兼任が認められている。
(長岡 正)