病院会計準則(旧・新)、医療法人会計基準

 病院会計準則(旧)は、昭和40(1965)年10月に病院の経営成績と財務状態を適正に把握し、病院経営の改善向上に資することを目的として、厚生省医務局長通知により制定された。その後、病院経営の実情の変化や企業会計原則の改正(昭和49[1974]年、昭和57[1982]年)を受け、財務諸表体系や勘定科目等を全面改正したのが昭和58(1983)年8月22日付医発第824号である。なお、病院会計準則(旧)は当初、広義の公的病院や大規模私的病院を中心に普及したが、昭和60(1985)年および平成4(1992)年の医療法改正に伴い、中小規模の私的病院へも普及した。昭和58年の大改訂以来、平成16(2004)年8月19日(医政発第0819001号)に21年ぶりに改訂されたのが病院会計準則(新)である。病院会計準則(新)では、従来と比べ、貸借対照表が重視される動向を踏まえた体系に見直され、キャッシュ・フロー計算書を新規追加する等の財務諸表体系の見直しが行われた。その他、退職給付会計、リース会計、研究開発費会計、税効果会計(重要性がある場合)が導入された。病院会計準則(新)は開設主体の異なる病院の財政状態および運営状況を体系的・統一的に捉えるための施設会計であり、かつ管理会計である。
 一方、病院施設単位の病院会計準則はあるものの、医療法人の会計処理の基準は従来存在しなかった。日本にある各種法人のなかで、いまだ会計基準が整備されていないのは医療法人だけであるとの批判を受けるなか、また、法人会計基準がないことから財務管理そのものへの信頼性に疑義が生じるおそれがあること等の問題を背景として、四病院団体協議会会計基準策定小委員会作成の「医療法人会計基準に関する検討報告書」が平成26(2014)年2月26日に公表された。これは、医政発0319第8号平成26年3月19日厚生労働省医政局長通知により、「当該報告書に基づく医療法人会計基準は、医療法(昭和23年法律第205)第50条の2に規定する一般に公正妥当と認められる会計慣行の1つとして認められる。」とされた。なお、医療法人会計基準は、生業的規模の一人医師医療法人についてまで適用することを想定しているものではない。医療法人会計基準では、民間非営利法人の会計基準であることを意識し、企業の投資情報を重視した国際会計基準の動向から影響を受けないことを前提としている。そのため、投資情報を重視する方向で改定されている企業会計の手法に関しては、他の民間非営利法人の会計基準で取り入れている範囲(退職給付会計、市場価格のある保有有価証券の原則時価評価、リース会計、税効果会計、関連当事者との取引の注記)に限定している。一方、他の非営利法人の会計基準と異なる点は、損益情報に係る計算書類名を他の民間非営利法人では収支計算書など、損益計算書以外の用語としているのに対し、医療法人会計基準では損益計算書としている点である。
(松原由美)