(中嶋貴子)
非分配の拘束
非営利組織と営利組織(for-profit organization)の相違点は、その活動目的によって説明される。営利組織の目的が、市場における利潤の最大化であることに対し、非営利組織は、利潤の最大化を追求せず、組織が経済活動によってえた利益や余剰金を組織の利害関係者に配分しないことを利潤の非分配制約といい、利潤が非分配の制約下に置かれることから、非分配の拘束とも呼ばれる。ただし、非営利組織といっても、その活動分野や組織形態は多様に存在するため、どのような組織を非営利組織と定義するかを一義的に定義することは難しい。非営利組織の学術的な定義については、アメリカ、ジョンズ・ホプキンス大学のSalamon, L. M. (サラモン)教授らによる国際比較プロジェクトによって示された定義が広く用いられている。定義では、複数の条件を満たすものを非営利組織と称するが、その1つに利潤の非分配制約(non-distributionconstraint)がある。経済学では、非営利組織が「市場の失敗(market failure)」と「政府の失敗(government frail-er)」を補完するものとしてその存在が説明される。また、生産者と消費者の間に情報の偏りがある「情報の非対称性(information asymmetry)」が存在するとき、生産者が消費者を騙して利益をえようとする可能性を排除できない。このような市場において、消費者は生産者と契約を結ぼうとしない「契約の失敗(contract failure)」が生じる。利潤の非分配制約の下にある非営利組織は、利潤の最大化を目的とする営利組織よりも、生産者は消費者から信頼をえやすいため、非営利組織が営利組織である企業より市場において選択される確率が高く、市場競争において優位になるとされる。