非効率性

 営利組織における効率性は、ある目的を達成するための到達度として測定される。たとえば、総資産利益率(ROA:Return on Assets)は、保有する資産がどの程度利益に転嫁できているかを測定する指標である。総資産に対する利益の割合が大きくなればなるほど、保有資産を効率的に運用できていると判断できる。逆に、ROAが低ければ低いほど、資産の有効活用ができていない、すなわち非効率であると判断される。いわば、効率性はいかに無駄を排除できているかをあらわす言葉であり、非効率と判断される状態は排除可能な無駄が存するといえる。ところで、非営利組織の効率性を判断することは難しい。なぜならほとんどの非営利組織はモノではなくサービスを提供しているからである。このことは営利組織のサービス業においても同様であるが、営利組織のサービス業の場合には、より少ない資産やコストでより多くの利益を獲得するという前提で事業が遂行されていることから、同じようにサービスを提供するといっても、営利組織と非営利組織とでは異なる。しかもサービス内容の到達度を測定することは困難である。たとえば、学校法人であれば教育というサービス、社会福祉法人であれば保育や介護などのサービスを提供する。概念的に到達度の測定尺度としてサービスの提供割合を捉えることはできるが、それを数値目標として客観的に定めることが難しい。同様に、サービス提供単価(学納金や保育料・介護料)は定められるが、その金額が提供するサービスに見合っているかを判断することも困難である。もちろん、手厚いサービスの提供を目指せば、従業者(教員や保育士・介護士)を増やして対応することになる。このことは、結果として人件費の増大に繋がる可能性がある。人件費が増大してもサービスの質的・量的向上を目指すことは決して悪いことではないが、効率的であるかどうかの観点からみれば、目的が達成できたかどうかを客観的に測定することができない以上、その到達度の良否を判断することはできない。このことから非営利組織における非効率性の測定が課題になる。
 上述のように、非営利組織における非効率性は、営利組織における効率の尺度を単純に適用できない問題が内在していることから生じる。非営利組織は、利益非分配による事業の継続を基本にするのであるから、数値的側面では、非効率か否かではなく収支均衡しているかどうかの観点から事業の成否を考えることが妥当である。最近、この問題を解消するために、事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムを測定する社会的インパクト評価が開発されている。これが非営利組織の非効率性に内在する問題を解決できる糸口になる可能性がある。
(大原昌明)