非関連事業

 本来事業やその関連事業として区別されないまったく別の形態の事業を指す。具体的には、保健・医療・福祉を本来事業とする組織による食料品の製造販売やレストランの経営などが該当する。NPO法人や公益法人は「公益目的事業」を本来事業とし、NPO法人については「特定非営利活動」として保健・医療・福祉、社会教育、まちづくり等をはじめ20項目の事業が掲げられている。非関連事業はこれらの活動や事業とは関連しない分野への進出を意味し、複数の事業の組み合わせを通した資源の有効活用を目的としている。このような経営多角化の背景には、かねてより指摘されてきた非営利法人の収益の確保という課題がある。組織や事業の存続には安定的な収入の確保が欠かせないが、非営利法人の収入規模は総じて小さく、一方、収入規模が相対的に大きな組織であっても資金繰りや人材育成、組織のマネジメントなど活動の質を高めることが求められている。非関連事業への進出は活動資金の獲得とミッションの達成を両立するための戦略とも捉えることができる。しかし、このような「集成型多角化」は「水平型多角化」・「垂直型多角化」・「集中型多角化」に比べ、収益の拡大や経営リスクの分散が期待できるものの、追加的コストの発生やそれによる損失の拡大に繋がるリスクがあり、組織のミッションが不明瞭になるという問題をかかえている。
(小熊 仁)