非営利放送

 非営利組織が運営するコミュニティ放送である。税が主財源であり国家権力の支配下に置かれる国営放送とは異なり、イギリスのBBC(British Broadcasting Corporation)や日本のNHKなどのように受信料をおもな財源として放送コストを国民が負担する非営利の公共放送がある。政府から独立し、公共の福祉・文化に寄与し、営利を目的としない点で、広告料を財源とした営利を目的とする商業放送とは一線を画す。しかし公共放送における公共性はときに表現の制約をもたらすことにもなる。一方で商業放送はより広い表現の自由を求めようとするが、聴取率・視聴率におもねり、広告主の発言力が強くなりがちである。大衆への迎合や、大資本の操作を受けないためにも、放送の非営利性を重視する傾向は地域のラジオにもあらわれ、京都で平成13(2001)年に創設された京都コミュニティ放送のようにNPO(特定非営利活動法人)の運営するコミュニティ放送が数多く出現し、寄付、会費、助成金などで運営されている。令和2(2020)年11月末現在、NPOのコミュニティ放送局数は全体で331局のうち約1割を占める。しかし、もともと財源がかぎられ、地域経済に支えられている非営利放送は経営基盤が盤石とはいえない。一方、世界中のコミュニティラジオはすべて非営利であり、商業放送とは明確に区別されている。その公共性ゆえに、地域の民主主義や課題解決、福祉・医療・教育・災害時の緊急放送などが番組内容の中心を占める。いずれも経営は豊かではないが、運営のためにボランティアが参加し、近隣住民がもち寄った農作物が報酬となるようなケースもみられる。またフランスでは営利放送の広告費に税金をかけ、差別と闘っているか、環境問題を重視しているか、若者の職業技術訓練になっているか、など7つの要件を満たす非営利放送にその税を配分している。放送の公共性とは何か、それをいかに持続させるか、その課題を検討する住民の姿勢が非営利放送の行方を決定する。
(松浦さと子)