非営利組織モデル会計基準

 日本公認会計士協会非営利組織会計検討会による報告「非営利組織における財務報告の検討〜財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案〜」(令和元[2019]年7月18日公表)において提案された非営利組織のための包括的な会計基準のモデルである。非営利組織は、財務諸表作成のための基準として、非営利組織の形態ごとに会計基準を備えている。これらは、たとえば公益法人の制度の設計のもとに必要な財務数値を算定し、情報として入手するために設定された公益法人会計基準がある。このほか、おもな非営利組織としては、社会福祉法人、学校法人、医療法人、特定非営利活動法人といった各非営利組織が、それぞれの制度において必要な情報をえることを目的とした会計基準を備えている。それぞれの会計基準により作成された財務情報は、公益性の有無や政府からの補助金等の使用の確認等のために利用されている。ただし同種事業を異なる非営利組織で実施した場合の事業活動の成果が異なる会計基準により作成された財務諸表に反映されるため、代表的な資源提供者や債権者等の財務情報の利用者、特に洗練されていない利用者にとっては、情報の比較可能性が担保できない可能性がある。そのため、組織形態によらない共通的な基準が必要と考えられてきた。このような社会的な必要性のもとに、非営利組織モデル会計基準が提案された。このモデル会計基準は、いずれの組織形態をとるとしても適用できるものとして広く包括的な会計基準のモデルでありかつ分かりやすく、情報利用者が利用可能であることをもっとも意識したものとなっている。なお、モデル会計基準と合わせて非営利組織における財務報告の基礎概念についても提案がなされており、そこでは、企業会計における基礎概念とモデル会計基準の基盤となる考え方が説明されている。
(松前江里子)