非分配制約の場合、「非営利」は「営利を追求しない(not-for-profit)」ことを意味する。ここには、前者の非営利組織に加えて、協同組合、共済組織、互助組織、社会的企業、コミュニティビジネスなどさまざまな組織が入る。いずれも社会的課題の解決を目指すものであり、ボランタリーに加えて自助や共助が重視されることから、ヨーロッパではその特徴を捉えて、「社会的経済」、「連帯経済」と呼ばれることがある。非営利セクターが大きな位置を占める分野は、医療、福祉、教育、科学研究、文化・芸術・スポーツといった公共サービス分野、さらに、環境、国際開発支援・交流、貧困対策、障碍者や長期失業者への雇用確保、災害復興支援、地域おこし、政策提言・人権擁護(アドボカシー)といった社会活動分野がある。これらの分野で大きな位置を占めるのは、こうした分野が、市場での利潤追求活動では達成しえないこと(市場の失敗)に加えて、政府もまた財政危機や信頼の喪失によって課題に応えきれていない(政府の失敗)という現実があるからである。非営利セクター諸組織は、民間である特徴を生かし、創意的で柔軟、先進的な活動で、ニーズに即した公共サービス提供、課題解決への取り組みを展開している。財源には、寄付、政府の助成金、サービス提供による事業収入等があり、それぞれの収入源による場合、これらの混合による場合がある。もっぱら政府補助金に頼る場合には、民間としての自立性に問題が生じる。逆にもっぱらサービス販売収入による場合には企業との競合など社会的課題解決の課題が薄らぐ可能性もある。全体として、病院や一部の学校法人を除き、規模は小さく、安定的な成長が最大の課題である。地球温暖化など環境危機が深まり、貧困など社会的断絶が深刻化している現代にあって、非営利セクターの役割はますます重要になっている。
(川口清史)