非営利制度(米)

 アメリカでは、非営利法人(nonprofit corporation)に適用される統一的な連邦法は存在しておらず、各州の州法としての非営利法人法において規定がなされている。アメリカ法曹協会(AmericanBar Association)が作成したモデル非営利法人法(model nonprofit corporation act)の一部または全部を参考にする形で、各州が非営利法人法を制定している。しかし多くの州において、モデル非営利法人法の全面的な採用には至っておらず、各州の非営利法人制度は独自色が強く、統一的なものとはなっていない。たとえば、ニューヨーク州は非営利法人を、「共益」、「公益」、「事業類似」および「その他」の4つに類型化しているのに対し、カリフォルニア州は「公益」、「共益」および「宗教」の3つに類型化している。法人法制は各州により異なっているが、非営利法人の法的構造は「分配禁止規制(non-distribution constraint)」を中心に理解されている。非営利法人の設立等は各州の州法に規定され、法人格取得は比較的容易であるが、日本とは異なり、非営利法人に係る課税制度については法人格の取得とは連動していない。非営利法人が免税(非課税)の課税上の特別措置を受けるためには、内国歳入庁(IRS)に対して申請手続きを行い、認可を受ける必要がある。連邦法である内国歳入法は、非営利法人の課税上の特別措置に係る統一的な取り扱いを定め、501から530に免税組織(exempt organizations) に係る課税関係を規定している。501(c)には29種類の免税組織が列挙されており、501(c)⑶は宗教・慈善・教育等の活動を行う法人、共同募金、基金、財団を規定しており、慈善組織と呼ばれ、日本の宗教法人、社会福祉法人、学校法人、公益法人等が該当する。なお、免税組織の非関連事業から生じる所得(unrelatedbusiness income)については、通常の税率による課税が行われる。毎会計年度終了後5か月目の15日までに、免税組織はForm990等の年次申告書を課税庁に提出しなければならない。また、提出された申告書は公衆の閲覧に供されることとなっている。
(尾上選哉)