非営利性

 営利を目的動機としないことを特徴とする非利己的行動を示す。営利が「ない」(不)のではなく、営利で「ない」(非)のである。英語圏では通常、非営利性をnonprofitというが、むろん、nonprofitはunprofitable(不採算)ではないから、利益がないという意味ではない。実は、このnonprofitは正しくはnot-forprofi(t 利益目的で経営されないこと)であることを理解し合意したうえで使われる。非営利組織の本質である「ボランタリーな非利己主義」を特徴とする集団の活動を指して用いられる。つまり、非営利性とは行為の結果の剰余としての利益(期間計算の利益ではない)の有無を問わず、その本質は行為主体の目的動機が営利でないことであり、さらに厳密にいえば、非営利性とは利益を目的としないことというより、組織の事業や経営を利己利益でしない「非利己主義」の行為であることを意味する。そこで、共益目的の組織は非営利組織であるとはいえず、本当の非営利組織は公益目的の組織だけである。ただし、この公益目的の非営利組織が利益(剰余)をあげることに何らの制約もない。なぜなら、その利益は利己心から個人に分配されず組織のなかに蓄積され、将来の組織存続のために投資として使いきる「コスト」であるからである。従って、利益の創出と蓄積は非営利性とは矛盾しない。ただ、公益認定基準としての収支相償の原則はそれが操作されるおそれがあることは別として、基本的には長期循環的に非営利性を担保する原則である。また、非営利を目的動機とする非営利組織は、利益は生むがそれが目的でないことを担保するために、法によって利益を個人に配分することを禁じる「利益非分配制約」に服して活動する組織として各種の規制と優遇措置を受けて非営利性の維持を求められているのである。留意すべきは、共益性の組織も非営利性があることからみても、逆に、公益性があっても利己主義で成り立つ公益事業のような組織もあるように、非営利性が直ちに公益性とは結びつかないことである。そもそも、公益性が利他的行動を促すことはあっても、目的動機が非利己的であるからといって、その非利己的な行動が必然的に公益性を内包しているわけではない。公益性には供給される財・サービスに集合財や価値財の性格があり、あるいは何らかの直接のプラス外部性のある性格をもつ公共性(publicness)があって、この種の財・サービスの供給行動のなかに、その行動の成果として社会一般に有益な利益を与えるものがなければならない。なお、公益性を「不特定多数の者の利益」とする場合、自由民主主義と国家管理主義では判断基準が違い公益の意味が異なるので、共益組織も「営利目的」ではないと判断されて非営利セクターに含まれることがあるが、日本の公益法人の場合、不特定多数の者とはもちろん「国」ではなく、「多くの一般の人」をいう。そして、利益とは「一般に利害関係がある。」(public interests)(みんなが得する。)、あるいは厳密には「一般が受ける恩恵がある。」(public benefit)(よいことをして福利に繋がる便益を供する。)という意味である。つまり、公益性とはある財・サービスの供給において多くの一般の人たちが享受する恩恵があることを指す。
(堀田和宏)